【詩】 思春期
際限なく湧き出てくる
青くみずみずしい感情の
処理に困ったA君は
その意欲を
バスケットボールに向けることに決めました。
よく弾む茶色い球を
3年ほど追いかけ続け
爽やかな思い出を作りました。
際限なく湧き出てくる
赤く浮足だった感情の
処理に困ったB君は
その期待を
同じクラスの一つ前の席にいる
Dさんに向けることに決めました。
密かに膨らました想像は
やがて豊かな妄想になり
その構想から逸れないように気をつけて
彼はDさんと
並んで下校するようになりました。
際限なく湧き出てくる
黒く混沌とした感情の
処理に困ったC君は
その激情を
お母さんと、理科を担当している先生の
どちらに向けるか悩んだ末に
先生に向けることに決めました。
母に向けるには凶暴すぎる態度と
母に向けるには残酷すぎる視線を
母と同じくらいの年齢の女性教師に向けました。
家では母にすっかり甘えながら。
際限なく湧き出てくる
無色透明の感情の
処理に困ったDさんは
その不足を
同じクラスの一つ後ろの席にいる
B君に向けることに決めました。
彼の赤い感情を
少しばかり拝借して
自分の心に落としてみました。
しかし彼女は
それを飲み込んでしまうほど強烈に空虚で
どうやらB君では役不足。
並んで歩いた2ヶ月は
彼女の心の
僅かな滲みにすらなりませんでした。
昼空は青く
夕空は赤く
夜空は黒く
染まってゆくけど
空気はいつも透明で
そんな事実を信じることができなかった時期が
僕にもあった。
空気はいつも透明。
心だってそうだろう。
色づく時は眩しいほど鮮やかで
けど、いざ布団の中で取り出してみると
やけに空虚。
掴みどころのない
この「心」というものと
22年間、共に歩んできたけれど
その実態を暴く目処は
ほんの少しもたっていない。
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中学生の頃を思い出しながら書きました。
この詩に出てくるC君のモデルになったクラスメイトのことが、僕はメチャクチャ嫌いでした。
なんなら、今でも嫌いです。中学卒業してからも、記憶の中の教室でC君が理科の女性教員に悪態をつくたびに『お前ッ!!調子乗ってんじゃねぇ!!!』とキレ散らかしています。
他の教員には従順なC君が、なぜその教師にだけ悪態をつくのか。僕はずっと疑問でしたが、僕なりの答えがこの詩に書いてあります。
要するに『マザコン野郎』だったのではないだろうか。というのが今のところ最有力です。
C君のことを思い出しながら書いたのでイライラしてきました。
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