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【完結】未来を紡ぐひみつきち #1~#7

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*邑長を継ぎたくないわがままリディオの成長記* 森にすむ四ツの異種族間の交流や格差を描いたファンタジーです。 翼をもつ黒烏(スマル)族の嗣子―リディオが異種の子たちとの友情を知…
友情もの、兄弟もの、青春感だったり、王さま感のある悪役さんが好きな方におすすめです。 1~5話まで…
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#ぶた

未来を紡ぐひみつきち #1

『むかしむかし、あるところに、モグラの四兄弟が棲んでおりました――』    *   *   * 「今日からここが俺たちのひみつきちだぜ!」  頭を葉くずだらけにして、ヤンが言った。  梢が揺れる。葉がさわさわと音を立てる。高く昇った陽がすじをつくり、あちこちに光の固まりを落としている。沢の水面が、光のつぶを浮かべたようにきらきらと輝いている。  枯れ枝にくくりつけられた古布が、ヤンの頭上で、はためいている。  クソだせぇ、とリディオは言った。  隣にいたゲンランが

未来を紡ぐひみつきち #2

 合議は、樹齢幾百歳(とせ)の大樹のある〈聖なる泉〉のほとりにて行われる。  樹には森を創った太陽ノ神が、泉には森を護る月ノ精がそれぞれ宿ると謂われており――一種の迷信であることは皆承知の上ではあるけれど――、ゆえにその一帯は、どの種の邑領(ゆうりょう)にも属さなかった。  リディオがヤンたちと駆けまわっていたのも、そういったところである。  その年は、太陽が高く昇るようになるにつれ、恵みの雨もよく降った。  むせかえるような緑と土の匂いにつつまれた、リディオにとっては三

未来を紡ぐひみつきち #3

 その後、リディオたちはすぐに泉を離れた。マグィは、合議の席についた父親の後ろに巌のごとく佇んで、互いが見えなくなるまでリディオを睨み続けていた。  木から木へ、ヤンが器用に跳び移る。  ゲンランがとことこと地面を走って追いかける。  リディオは彼らの後ろを翔んでいた。  濡れた枝と土のぬかるみに足をとられ、二人は何度も転がった。リディオが手を貸し身を起こして、また進む。  だれも、なにも言わなかった。  やがて視界がひらけたところで、ヤンが止まった。  美しい――沢

未来を紡ぐひみつきち #5

「あれは――」  遠目からでもわかる異種の容貌。レゼルが戸惑いの声をあげた。  他種族の邑に許可なく足を踏み入れるのは、暗黙の禁忌とされている。しかし弟は固まったまま――動かなかった。動けなかったのだろう。  そのあいだにもゲンランは臆することなく突進してきて、リディオの胴に、ぶつかるように飛びついた。受け止めきれず後ろに倒れそうになる。とっさに翼を広げて、バランスをとった。 「ゲンラン」  なぜここに、いったいなにが――同時に浮かんだ問いがせめぎ合って喉に詰まる。