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あるアイドルグループの終わり

 アイドル自らが自分にピリオドを打ったのは初めてではないだろうか。
 BTSの活動休止を受けて私はそう思った。これまでアイドルの進退は事務所側が握っていたし、その事務所は世相を見て判断してきた。それに「若さ」が重要視される世界で老いはプラスに作用しない。
 アイドルは自分の言葉を語らない。ファンのおかげ、皆さんのおかげ、徹頭徹尾低姿勢である。束の間の夢。BTSはBIGBANGが開いたK-POPのマーケティングを広げすぎ売れすぎてしまった。個人は完全に偶像化される。例えばテテがセリーヌのショーに出国する際、他の女性アイドルとチャーター機で一緒だったのではないかと憶測されたし、帰国時の出迎えに応対しなかったことは当然のように非難された。疲れて帰ってきたのに空港から車に乗り込むだけなのに。出迎える大勢のファンにサービスをしなかった。ファンサービスは当然のように要求され、応えるのが義務であった。勝手に応援しているのはこちら側なのに。例えば捏造だとしても女性アイドルとの2ショット写真が流出されれば、非難されるのはテテとその相手だった。違うといえばじゃあこれは何だ?と言われるしキリがない。相手はもちろん激しいバッシングにさらされる。アイドルは自分のものじゃない。なのにいつの間にかアイドルがアイドルの役目を果たさないと責められるようになってしまった。
「ボラヘ」
そう囁くテテ以外、許されないのだろうか。私達が応援しているのはもはやテテではなく、私達が作り出したテテになろうとしていた。むしろそうしたアイドルの方が多いのかもしれない。

 RMは活動休止に伴いこう言った。
「どういうわけか、ラップ・マシーンになり、音楽をリメイクし、グループのために英語を話すことが私の仕事になりました」 
確かにそうだった。RMは酷使されるロボットのようだった。ウリリーダーとして皆の先頭で笑っていなければいけなかった。彼が英語を話せるのは非常に便利だった。他のメンバーは話せなくたっていいよ、RMが喋れるんだから、むしろRMに多く注目が集まって良いではないか。そんな口にするのは憚られるような気持ちが私にもあった。RMもSUGAも音楽の才能はあるがアイドルとしての才能は他のメンバーに劣っていたし、メンバー別のグッズ売上数、個別のダンス映像の再生回数の低さがそれらを公然と晒していた。しかし彼ら自身がそれを語るのはタブーのはずだった。だから彼の発言は分かってはいたけれど語ることに驚いた。RMが英語を話せて助かったよ、これからも宜しくねと押し付けて、彼自身が率先して通訳兼メンバーのような立ち位置にいたいかなんて考えすらしなかった。彼は別にグラミー賞を目指すために英語を取得したわけではないし、IQが高いから取得できたに過ぎない。ビジネスのためではなかった。

 アイドルの終わりは聴衆側が決めることだった。
「BTS?もうおじさんだよね」「もう終わってるよ」
いつかそう言われるはずだった。彼らを捨てるのはこちら側のはずだった。彼らはアイドル史上珍しく自らその立場を降りた。再契約のニュースに心から喜べなかったのは、壊れる前に終わらせてほしかったからかもしれない。だって彼らにどんな未来があるのか想像つかない。歌って踊れるアイドルを止めてラップと歌だけする?じゃあそれは何歳まで?兵役には行くの行かないの?

 ジンは入隊することになった。本当はもっと早く入隊したかったと最近になって語られた。それは許されなかった。誰かがBTSのグラミー賞を狙い国が兵役免除を論じていたからだ。

 BTSは1つのピリオドを打つことで個人での発言を(少し)可能にした。他のアイドル達もこんな風になれれば良かったのに。あのSMAPでさえ後味悪く終わり、嵐も跡を濁しながら終わった。そしてキンプリも。彼らは明確に終わりBTSは終わりはしない。けれど形は変える必要があった。

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