星が透けて見える大きな身体 池澤夏樹


#国語がすき

国語がすきなので、国語の教員になったのかというと、実はそうでもなく。

本当は英語の教員になりたかったのだけど、国語の点数の方がよかったので国語の学科に進んでしまったという。英語は英作文が高校でさっぱりできなくて頓挫したのだった。

とはいえ、なってしまった以上、よくよく考えてみるとまあ、国語はすき(笑)

しかし、自分がどんな授業を受けていたのかはさっぱり思い出せないのだ。先生、ごめんなさい。ヤンキーがもりもりいて、毎回漢字テストのたびに自分の答案が回されていたことくらいしか思い出せない…。

というわけで、わたしは国語の教科書を何回も読んでいた。周回して読んでいた。気に入った話は特に何度も読んでは出典を探して市民図書館にまでいくほどであった。

その中でも群を抜いて好きだった話が、タイトルにしている、

「星が透けて見える大きな身体」である。ここからわたしの池澤夏樹先生好きがはじまった。
出典は「南の島のティオ」。

設定もお話の内容もすべてが魅力的で、あんなに視覚的に脳内にストーリーが描かれた話はなかった。もっと読みたい!その思いがわたしに足を運ばせた。市民図書館の、別館の書庫にあることを突き止め、自転車で何キロ走ったことか。本を手に取ったときのよろこびは忘れられない。図書館の本なので返さなくてはならないことが残念でならなかった。

大人になって、ネットで買い物ができるようになり、ようやく文庫を手に入れた。なかなか地方の書店には池澤夏樹先生の本はたくさんは置いてないのだ…。有名どころはあるけど…「スティルライフ」とか。

そうそう。星の王子さまを、いろいろな作家さんが翻訳した年。池澤夏樹先生のものも出て、当時大学生だったわたしはバイト代をもって速攻本屋に行った。何度も何度も読んだ。池澤夏樹先生の訳がやっぱり1番好きだ。今回の光村2年の教科書の比べ読みにも採用されていてすごくうれしかった。

星の王子さまの一節は、3年生を担任したときに最後に贈る言葉にも使わせていただいた。
君たちはみんな、わたしにとってのバラだ。って。
それが1番想いが伝わると思ったのだ。手をかけた分、責任がある。他のたくさんのバラとはちがう。
自分自身の言葉をうまく出力できないので、すでにある素晴らしい文言を使わせてもらうことが多い。そんなときのためにも、わたしは本を読むのかもしれない。

本筋とそれてしまったが、わたしがしっかり国語がすきになったのは「星が透けて見える大きな身体」との出会いがあったからだと思う。同世代に聞いても、覚えてない、という人が多くてさみしい。あんなにいいお話なかなかないのに〜!

その後、高校生になって、「羅生門」、「山月記」にしっかりはまり、「とんかつ」も好きだった。今年高1の娘(他の記事での姫)の教科書にも「とんかつ」が載っていて、うれしくなった。
姫の感想は、とんかつ食いたくなった。
だったのでがっかりだよ。

ちなみに、池澤夏樹先生の作品では、
もちろん日本文学全集の第1巻である「古事記」。
「すばらしい新世界」「キップをなくして」が特に好きだ。それから、娘さんとの共著である、「ぜんぶ本の話」は大変興味深く読んだ。なんて上品な親子なんだろう…!とガクブルした。

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