市内RPG 44 天狗との修行
ぼくら、レベル11の、勇者、戦士、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。子郡市役所で勇者登録をして、魔王討伐のために、子郡市内をうろうろしている。
1か月後に開かれる「小原合戦記念武道大会」では、優勝者に賞金10000円と退魔の剣が与えられることを知って、参加することを決めたのだ。
僧侶のカナは、早速修行してくれる人を探してくれたのだが、その人は、なんと「天狗」らしい。しかも、修行の場は、子郡市の端「花盾山」。
カナは、僧侶の空飛ぶ呪文「トベルー」で先に行ってしまった。勇者のぼくと、戦士ヤス、魔法使いヒラは、二師鉄電車と徒歩で、ようやく花盾山に着いた。
花盾山は標高130mで頂上まで50分もあれば行くことができる。
僧侶カナは麓のお城山公園の入り口で手を振っていた。
「遅いーーーー」
自分だけ呪文で飛んできたくせに。こっちは、駅から5キロも歩いて、足が棒のようになっているんだ。
「カナ、お前はいいよな」戦士ヤスがかみついた。
「自分だけ飛んできて」
「仕方ないでしょ。僧侶なんだから」
言い合いになりそうなところに、魔法使いヒラが割って入った。
「天狗はいたの?」
「いたわ」
「いた?」
「いた?」
「いた?」
「貸しボートのところにいるわ」
ぼくらは、カナを置いて、池へと急いだ。お城山公園には、池があって、ボートを貸してくれるのだ。
チケット売り場に「天狗」はいた。
緑のジャージに赤ら顔。鼻はふつうより大きめ。ハードバンクホークスの帽子。鼻ひげとあごひげは白い。小柄。下駄。
ぼくらはがっかりした。ふつうの人だ。天狗の要素は、赤ら顔とひげと下駄くらい。高い鼻はマストなのに、、、少し大きいくらいだなんて。
カナが追いついてやって来た。
「こちら、わたしのおじいちゃんのお兄さん。おじいちゃんは少林寺拳法の師範でしょ。そのおじいちゃんよりも、すごく強いんだって。わたしの友達を、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「天狗」にとりあえず、あいさつをした。
「おう、話は聞いとるよ。頑張りなさいね。」
「この人、本当に強いの?」
魔法使いヒラが小さな声でささやいた。
「わしは、ボートで負けたことがないんじゃ。それに少林寺拳法の腕も一流じゃよ。将棋も老人会では、1番じゃぞ。若かりし頃は、学校で1番モてたし。何をやっても負け知らずじゃよ。わっはっはっはっはーーー」
「ほら、『天狗』でしょ」
カナが片目をつむりながら、ヒラに言った。
「それでは、実力を見てみるかな。ボートに乗りなさい」
そう言われて、ボートに乗った。
1人1台、4台のボート。
「池を回っておいで。5周したら、休憩ね」
ぼくらは、ボートを漕いだ。カナ以外は、みんな初めてで、、、。全然前に進まない。そして、腕が疲れる。足が痺れる。
そう言えばここまで歩いてきたんだったな。ふうーーーー。
1日目は、ボートを漕ぎまくって終わった。ボートで周回し、休憩するを繰り返した。
夕方には、動けなくなった。
午後5時。
「ボートを貸せるのは、5時までだから。明日は8時からね。キャンプもできるけど、、、、台所は好きに使っていいから」
「天狗」はそう言うと、自家用車で帰っていった。
「どうする?」
「わたし、お風呂入りたいから、帰る。トベルーーーー」
あっ、ずるい。そう思ったときには、もうカナは飛び去っていた。
ふらふらだ。帰り道も暗くて、不安だ。
台所を漁って、カップ麺やら食パンやらを食べた。
ボートを漕ぐのは、少しうまくなったかな。重くなった腕と足にはもう力は入らない。横になれれば、どこでもいいや。、、、お休みなさい。
前回まではこちら。
おひまならこちらもどうぞ。