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【オトナになることのうた】GLIM SPANKY その1●「大人になったら」…世の中がわかるのかい?
ここんとこは家庭内の予定、自分が行くライヴ、そしてインタビュー取材とが見事にかみ合って、毎日何だかんだスケジュールがみっちり気味。非常にうまいこと入り組んでます。こちらの都合に対応してくれたみなさんに感謝。
おかげで、1週間で10人もの人々にインタビューすることに。その中に、たとえばスカパラ全員に集合してもらって話を聞けば取材は1本、相手は9人になるわけですが。今回の一連で集合インタビューは1本だけ(4人)です(ちなみにスカパラとの仕事はございませぬ/笑)。だから合計で7本の取材に立ち向かっているところです。ありがとうございます。
この中で、珍しいことに午前中からのインタビューが3つ組まれてます。まあ僕の希望もありましたけど。インタビュー取材もたいがいは午後からで、音楽業界の朝は遅めなんですね。そういえば昔、朝6時に移動車(バン)の中でインタビューしたこともあったな。
でも朝まで制作をするアーティストもいるし、ライヴ関係の方々は朝早くから暗い時間までずっと動いていることが多いですよね。本当にお疲れさまです。仕事によっては海外とのやり取りもあるし、それに現代ではニュースの配信やSNSでの発表もあるから、何かと24時間体制になりがちだろうし。
どちらのみなさまも、ご自愛くださいませ。
これを読んでくれているあなたも。
えっと、ライヴは、今週は浅井健一、怒髪天、トム・ヨークと観ました。どれも強烈。
こうしたベテランが続いたあと、Sundae May Clubを初見。若い子たちにも頑張ってほしい。
そんな中、今回はGLIM SPANKYについて書きます。
本日11月27日、ベストアルバムがリリースされました。
「大人になったら」は問いかける。大人になるってどういうこと?
GLIM SPANKYは、長野県出身の男女によるロック・ユニット。しかも骨太、かつ、繊細。オールドスタイルなようで、モダンな感覚もしっかりと兼ね備えている、非常に優れたアーティストである。
たとえば今回のベストアルバムの『All the Greatest Dudes』というタイトル。
この言葉を聞いて、おっ!と思うロック・ファンはたくさんいるはず。モット・ザ・フープルの代表曲「すべての若き野郎ども(All The Young Dudes)」を思い浮かべるしかないからだ。
「すべての若き野郎ども」を書いたのはあのデヴィッド・ボウイ。彼自身のレパートリーでもあった、グラム・ロックの名曲である。
こんなふうに、空気のように、もう当たり前のようにロックの感覚を体得しているGLIM SPANKY。新しい曲もカッコいい。
僕はグリムのライヴを、とくにメジャーデビュー直後はよく観ていて、インタビュー取材をしたことも2度ほどある。
今年の夏には、8年ぶり?くらいの取材でふたりに会った。ほんとにひさしぶりだったのだが、インタビュー後の写真撮影の合間に、ヴォーカルの松尾レミは以前に僕と取材で話したことを思い出したと言ってくれた。レミさん、ありがとう。その場ではギタリストの亀本寛貴も、すごくクールなミュージシャンとしてのたたずまいを見せてくれた。
今回取り上げるのは、このグリムの楽曲「大人になったら」。
そう、当【オトナになることのうた】にとってはド真ん中と言えるテーマ性を持つ歌である。
「大人になったら」は、それこそグリムは初期の頃からライヴで唄っていたし、初めてフジロックに出演した際のGREEN STAGEでパフォーマンスしていた光景も覚えている。
「大人になったら」に関しては、2015年のリリース当時に、松尾レミによるセルフライナーノーツが公開されている。
読んでもらえれば、この歌への理解が深まるはずだ。
この曲は2013年、私が大学3年生の時に産まれた。
地元のある友達は、大企業に就職内定したとのことで、ひたすら年収の自慢話、
東京のある友達は、絵本作家を目指したり、芸術家になりたいけれど親に反対されたりと、
みんながそれぞれ人生の岐路にいた。わたしは、音楽でやろうと決めていた。
ある夜、下北沢でライブがあり、終電も逃し始発待ちをしていた時のこと。
隣には同じく、ライブ帰りであろうギターを背負った汚いお兄さんが居た。
自分よりも相当年上だろうその汚いお兄さんの瞳の奥はとても美しく、
まわりの若者よりも希望に満ちあふれていた。この瞳を見た時に、
世間に揉まれても汚い社会を知っても歳を取っても、
好きなモノは好きで綺麗なものは綺麗と思える人でありたい、と思った。
ここまでが前半である。中断して申し訳ない。
この言葉たちからは、当時の松尾のひたむきな姿が浮かび上がってくる。
彼女のパフォーマンスはデビューの頃から堂々としたもので、そのまっすぐさは迷いのない生き方を感じさせてくれた。そして今のステージでの姿はもはや貫禄と言えるほどのオーラを放っており、その歌で聴く者の心をグイグイと引き込んでいく。
ただ、こうした場所に至るはるか前から、松尾は夢を本当に一途に追いかけ、懸命に生きてきたのだろう。
大人になってもあの頃の瞳の輝きを
「大人になったら」についての松尾レミのセルフライナーノーツ。引き続き、その後半を引用する。
「音楽なんてくだらない事やっても無駄だから辞めちまえ。どうせ叶わない夢なんだから。」と、私に言った奴が居る。
あいつはきっと、ステージから見えるお客さんの、心を剥き出しにした表情や、力む拳を見た事がない。
真面目に会社勤めをしているサラリーマンが、夜中はライブハウスで暴れていることなんて知らない。
そして絵本出版が決まった友達のことも、始発を待つあのお兄さんが実は有名なプロミュージシャンだという事も知らない。
それなのに、あたかもこの世の全てが解っている様な口を叩いた。わたしは悔しかった。
でも、絶対にあいつも昔は輝く瞳を持っていたはず。もしや、その輝きを、まだ心の中にそーっと隠し持っているかもしれない。
瞳が濁ったふりをしているのかもしれない。
そんな人たちがたくさんいると思うから、少しだけでもその輝きを取り戻せるような歌を、私は唄いたい。
大人になったら解ることって、何ですか?
大人になって見えなくなってしまったことって、ありますか?
大人になるってどういうことでしょうか?
私は、まだ解りません。
58歳のパパも、まだ解らないそうです。
本当に、その通りだ。
大人になるって、どういうことなんだろう?
僕もよくわからない。わかっていない。
ただ、たしかに叶わないものかもしれないけど、頑張っている若者の夢をつぶすような言い方をするのが大人になった者のやることだとは、まったく思わない。最低な奴だと言ってしまいたくなる。
ただ、それでも……その時にそんなひどい言葉を投げつけた<あいつ>に対してさえ、「もしや、その輝きを、まだ心の中にそーっと隠し持っているかもしれない」と気持ちを向ける松尾の考え方、生き方には、別の意味で心を揺さぶられる。
彼女は人を信じている。信じようとしているのだ。自分にそんなことを言った相手に対しても。
楽曲「大人になったら」の中には、ついつい本音をこぼしてるところもある。
とくに僕が感じ入ったのは、最初のほうに出てくる<ずっと子供でいたいよ>である。
そう。ずっと子供でいられたら、どんなにいいだろう。
しがらみや面倒くさいことのない世界で生きられたら、どんなに楽ちんだろうか。どんなに自由でいられるだろうか。
そして上手に世間を渡っていけたら、どんなにいいことか……。
いや。
そんなふうに思ってたら、もうひとつの考えが頭をもたげてきた。
そうした大変なものを背負って、それに立ち向かい、歯を食いしばってでも生きていくこと。時に落ち込み、時に悔しくても、それでも生きていくこと。
それが大人になることのひとつでもある。そんな気もする。
でもやっぱり、まだ、わからないけれども。
大人になったら何かがわかるのか?ということさえ。
<GLIM SPANKY その2 に続く>
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ひさびさに訪問。
半チャンラーメン700円、
グレイトの一語であります
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