見出し画像

✳︎堕天使 ニース✳︎(14)

✳︎心が温かくなる堕天使と少年の物語です✳︎

14ページ✳︎

。。。。。。。。。
「無茶を言うなよ!」
真剣な瞳で攻め寄って来られた小悪魔は、その場にいるのが気まずくなり逃げ腰になった。

「さっ、俺はそろそろ帰らないと!」

パタパタッ!と慌てて羽ばたかせた小悪魔の羽先を、ニースはガスっと握ったかと思うと、無理矢理閉じた。

「待て、待ってくれよ!ルイを助ける方法をどうしても探したいんだ!」
「無理だぞ!図書館に連れて行くなんて絶対に出来ないからな!」
「頼むよ!その図書館の場所を教えてくれるだけでいいんだ!」

小悪魔はガッシリと押さえられている羽に思いきり力を入れて逃げようとするが、放せるものかと必死にしがみ付き、力を増してくるニースの気迫に負けた小悪魔は、一旦抵抗を諦めた。

「行かねーから、羽を放せ」
小悪魔が言うと、ニースは少しだけ力加減を落とした。

「俺が信じられないんだったら、お前とは話が出来ないな!」
ふて腐れ気味の小悪魔に言われたニースは、ハッとして手を離し小悪魔にもう一度頼んだ。
「その図書館にあるような気がするんだ…、ルイを助ける方法が…」

まだ悪に染まりきっていない小悪魔の中で、ニースの想いに耳を貸すのはマズいと思いながらも、その頼みを聞いてあげたいと思う自分がいた。

悪魔への道を突き進むのか、ここで悪魔族のしきたりを破り、ニースと共に人間の子を助けるのか…。

小悪魔にとって、究極の選択だった。
悪魔族のする事は楽しい事ではなく嫌な事ばかりだった。だが、堕天使となり、一人寂しい思いをしている自分に声をかけてくれ、仲間として受け入れたのは人間ではなく悪魔族だった。

深刻な表情のままで、じっと黙ったままの小悪魔にニースは言った。
「なぁ、お前もルイに会ってみないか?」
ニースは、小悪魔もルイの事を知れば自分と同じ気持ちになるのではと思って、
「なっ!そうしろよ」
と、返事も待たずに小悪魔の手を取り、ググッと、と引っ張ってルイの部屋の窓先まで連れて行った。

「何をするんだ!放せってば!」

気を抜いていた小悪魔は、抵抗する間も無く窓際まで連れていかれ、ベッドに座り窓の外を眺めていたルイと目が合った。

突然窓際に現れたニースとニースに似た小悪魔に気が付ついたルイは、驚いて目を丸くしている。ニースは少しイタズラ気味な笑みで小悪魔の手を取ったまま窓をすり抜けて一緒に連れて入った。

病室で、一人になり心細さを感じていたルイは、嬉しそうにニースに聞いた。
「ニース、友達を連れて来たのかい?」

しっかりと繋いだ小悪魔の手をルイの所に差し出すと、「そんなところだなっ」と小悪魔の顔を見ておどけ笑いで答えると、ルイはいつもより高い声で、
「そっか、友達の堕天使さんはシッポが生えているんだね?僕の名前はルイ。君の名前は?」
と、丸くなった興味津々の瞳で小悪魔に顔を寄せてきた瞬間、小悪魔の心は緊張で強張る感覚が走った。

純粋無垢で特別な人間の子供が、時に天使になれると聞いた事がある。
天使になるのであろうルイの瞳に覗き込まれ、悪魔族の仲間になり、今までしてきたことと、愚かさを見透かされるような怖さと後ろめたさが全身に走ったて、身体が震えた。

緊張しているニースの友達の様子を見て、質問はやめてニッコリと笑いニースを見た。
「ニース、友達を連れて来てくれてありがとう」
そう言うと、台の上に置いてあったチョコを二人に渡した。

ニースはチョコを口に放り込むと、硬くなったままじっと立っている小悪魔の肩を揺さぶり、「美味いぞ!お前も食べてみろよ!」と、誘ったが、小悪魔は口を閉ざしたままニースを見た。

その様子を見ていたルイが、
「僕は少し眠るから、二人で遊んでおいでよ」
と気を回して、布団に入り手を振ると、ニースは小悪魔の顔をチラッと見て、口を歪めながら外に誘い、二人はさっきいた木の下まで黙ったまま降りて行った。

(14ページ)
。。。。。。。。。。。。。。

✳︎ここまでお読み頂きありがとうございます✳︎
堕天使ニースは、2014年頃に執筆をしたものです^^。
noteで読みやすいように、少しづつ校正を加えながら、
アップしていこうと思っています。

。。。。。。。。。。。
✳︎もし、読んで頂けているのなら、
スキ頂けると続きのアップに向けて励みになります^^✳︎
✳︎宜しくお願いします(*^^*)
。。。。。。。。。。。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?