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「ファミコンバカ」と呼ばれた5歳児は今でもゲームをしている (4)
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父が持ってきた銀色の大きな箱。
まだ字も読めない僕には、それが何かは分からなかった。
父はおもむろに箱を開け、中から白い塊を取り出した。
新しいものを箱から出すときの、あの発泡スチロールが擦れる音。
あの音がたまらなく好きだ。
父は豪快さとは裏腹に、とんでもなく几帳面な人だった。
テーブルの上のリモコンがまっすぐ置かれていないと気持ちが悪いらしく、常にリビングのテーブルの上には規則正しく物が配置されていた。
当然、箱から物を取り出すときも発泡スチロールが削れてしまうような取り出し方は絶対にしない。
すーっと滑るように真上に引き上げられていく本体。付属品。
それでも、寸分の狂いなく収まっているそれらが擦れてキュキュッ、と音を立てる。これが何なのかはわからないのに、たまらない高揚感だ。
ビニール袋に包まれた本体は白と赤茶色のボディで、子どもながらにめちゃくちゃカッコイイと感じた。あんなに洗練された形、色の物体を僕は見たことがなかった。
取り出された中から、何本かのケーブルが出ているものを袋から取り出し、説明書を見ながらテレビの後ろでゴソゴソ始める父。
なんかすごいことがはじまろうとしている・・・!
何かは分からないが、とんでもないことが起きようとしている気がして、
僕はワクワクを抑えきれずにテーブルに手をついたまま、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「よし、できたぞ。ユウ、よー見とけよ。」
父はもう一つの袋から小さ目の箱を取り出し、これまた丁寧に開け、赤く四角いものをあのカッコイイ機械にガチャン、と差し込んだ。
「えーっと、1チャンやな」
と言いながら父はテレビのチャンネルを変えた。
今ではもう見ることがなくなってしまった、「ザーーーーーッ」という砂嵐の画面。
パチン、と機械のスイッチを入れると、パッと画面が切り替わり、
軽快なBGMと、おそらく見覚えのあるロゴ。
そしてそのあと表示されたのは、あの夏の日、
ずっと眺めていた画面だった。
いつの間にか、おばあちゃんちからいなくなっていた、
熊さんとの思い出が、目の前のテレビに広がった。
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