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親を捨てたら、幸せになった。

 祐伎。一見、読み方が分からないと言われる私の名前。一発で名前を言い当てた人は、ほぼいない。「ゆき」やら「ゆえ」やら言われることが多いが、実は「ゆうき」と読む。

 「祐」は結構、馴染みのある漢字だが「伎」は見たことが無い、なんて言われることも多い。実際に漢字変換で探すと、スクロールをめちゃくちゃしないと出てこない。もう探すよりも「歌舞伎」って打ち込んで、前半の「歌舞」を消した方が早い。

 そんな名前を由来を親に聞いたところ「ゆうき」という呼び名は、母が「ゆーちゃんって呼びたい!」って言ったところから始まったそう。

 漢字は、私が生まれる前に、父が一生懸命「ゆ」から始まる名前と、漢字の組み合わせを考えてくれたそうだ。

「祐」は「(神様のしめすへんの部首をお借りした)神様の右手になって」「伎」は「(にんべんだから)人を支える」

 なんて仰々しい名前なんだろう、って思わなかった?私は聞いた時、めちゃくちゃ思った(笑)母も姉も名前に「子」がつくのに、私だけ「伎」だし。祐子になってもおかしくないのに。
 しかもこの仰々しい名前、昔は好きじゃなかった。男性と間違われることが多いし、携帯会社やその他の契約系の電話をすると、高確率で「祐伎様の奥様ですか?」って言われる。いや、本人。

 「祐伎」を授かった、私自身も好きじゃなかった。ーーーーいや、むしろ嫌いだった。

 この世は残酷で、不平等で、私ばっかり何でこんな目に合うの?って自分を否定して、他人を責めて生きてきた。

 夏は家で下着でうろついて、ダラダラ寝るような自分。
 心の中ではめちゃくちゃ文句言ってるのに、顔はにこにこ、愛想笑いを浮かべる自分。意見が言えない、相槌しか取れない自分。
 自分の彼氏は友達のことを好きだって分かっていても、知らんぷりして、正妻面をかます自分。
 資格をとって働いているけれど、どこかプロフェッショナルにはなれなくて、成長という文字が大嫌いで、怠慢で、そのくせ一丁前に人と比較して嫉妬するような自分。


 そんな自分は、親を捨てたら、幸せになった。


 1994.11.1。私は両親と一人の姉の元に産まれた。
 私は耳元やすぐ目の前で手を叩いても全く反応しないような子供で、視覚と聴覚障害を疑われていたらしい。成長するにつれて杞憂に終わったものの、今度は話さない。
 喃語はあったが、意味のある単語など、社会的に必要な言語的コミュニケーションが、四歳まで出来なかったそうだ。
 有難いことに、五体満足かつ何の障害も無く育った。しかし当時、ペーパードライバーだった母が心配して、色々な病院へ連れ回ったとか。今でこそ笑い話で、そのおかげで母の運転技術が格段に上がったため、物は言いようである。

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