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好きと言えなくなってきた月曜日を曇天が迎える。

10月初旬の午前5時。
目覚めた時に布団から出ていた脚がすっかり冷え切っていて、「あ。秋来た」と思ったのだがクーラーを切り忘れていただけだった。
基礎体温を測ると35.5度。
いつもよりガクッと1度も下がったそれを、そりゃそうだと思いながら記録を残す。
備考に「クーラーで体が冷えた」と書くことも忘れない。

清々しい起床はとうの昔に忘れ去られて、最近は時々頭痛がする。
薬箱を漁り、少し前に処方されたカロナールを引っ張り出す。
2錠、口に含んで水で流し込む。
即効性なんか無いのに頭痛が取れてきた気がする、と思う。

朝の情報番組で天気を確認すると、曇天だった。
カバンの中に折り畳み傘を突っ込む。

いつものように食事をして、化粧をして、髪を整えた。
湿気のせいでいつもより癖毛が広がってふわふわと肩で跳ねる。
耳に飾りをつけて「似合ってるねぇ」と自分を褒めた。
あまり顔は笑えてない。
カバンを手に取り、家を出た。

完全週休二日制の会社に勤めて4年。
今年に入って月曜日との関係性がぎくしゃくしている。
自分でも理由が思いつかない。なんでこんなに月曜日を好きに思えなくなってきているんだろう。
吐いてしまいたい息を堪えて上を向く。

雲はとても地上に近かった。

歩く度にパンプスが軽快な音を鳴らす。
なんだかアンバランスで居心地が悪かった。
軽快な音に心が置いていかれないように、私は少しだけ微笑む。

「今週も頑張ろうね。今日も頑張れるね。」
「うんうん、頑張れる。」

心の中で繰り返す会話。


そんな私と月曜日。
いつ、仲直りのきっかけはやってくるんだろうね。


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3年前。
26歳だった私は、出勤しようと手にかけた玄関の扉を開けられなくなったことがある。

仕事が合っていないとか、人間関係が良好ではないとか、そういったことではなく、ただ自分が弱かっただけだ。

上司に恵まれていたと思う。
的確なアドバイスやミスの指摘で、尊敬ばかり感じていた。
得意なことや結果に繋がったことは褒めてもらえて嬉しかったし、何よりやる気が満ちた。
「もっと頑張りたい」「応えたい」「成長したい」
その気持ちで臨んていた。

それがプツン、と切れてしまった時、本当に足が動かなくなるのかと絶望した。
入社4年目の冬に私は、上司が何を求めているのか分からなくなってしまったのだ。

結果として、「一旦、その上司と距離を置こう」という事で他部署へ臨時異動となった。
上司からは直接謝罪があったが、私は上司を責める気持ちは一切無かった。むしろ申し訳なさばかりで涙が出た。
お互いにずっと謝罪の言葉を述べていたのを今でも覚えている。
幸いなことに行けないと感じる日は数日会ったものの、数週間で出勤が困難なものではなくなっていた。
ただ、配置が元の部署に戻ることは無かった。

その翌年、私は寿退社で会社を去ることとなり、上司のもとで一緒に仕事をする機会は結局なかったが、在籍中はアドバイスをもらいに行ったり、仕事を振ってもらったりと適度な距離で関わりがあった。
気にかけてもらえることは素直に嬉しかった。

現在、その上司とは年に1度会うか会わないかの交流がある。
関係は決して悪くはないが、付き合い方はかなり浅い方だ。

きっと、当時の仕事の距離感はズレていたんだろう。
上司は指導に熱が入り、私は頑張り方が誤っていた。
ただそれだけなのだが、ただそれだけとは言えない状況と化してしまった。
メンタルの問題は当人ですら気付くのが遅れるので怖いものだと改めて思う。

あれから私は毎日寝る前に「無理してないかい?」と自分に問う時間を設けている。
最近は友人に一行日記帳をもらったのでそこに書き出すことで感情の把握をしている。
案外、悪くない。

そしてもう一つ。真面目になり過ぎない。
それもまた大事なことだなーと思う。
こうしよう、と思ったことの5~8割ができていれば合格点でしょうと。
時々、ご褒美にスイーツなんか食べたりして、笑っているようにしている。

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