①待ってもいいが待たせはしない
人を待たせるのが嫌いだ。
待たせている間、生きた心地がしないからだ。
個人の事情に問わず遅刻が悪とされてきた学校教育の賜物である。
解釈を傾ければすり込み教育に近い。ビバ優等生。
高校のある登校日、9時に到着しなければならないのに8時45分に起きたことがある。
起きた瞬間から頭の回転はロケットスタートをきった。
野球漫画であるあるの、ピッチャーがボールを投げてからバッターに届くまで膨大な文字数を使い考え、思い出し、力を込めて打つアレである。
起きて2秒経った頃には8時間の睡眠によって蓄えられた体力のほぼ全てを焦りで消費していた。
家から高校までは自転車で15分ほどである。坂道なのでゆっくりいけば20分かかる。
つまり起きた時点でマイナス計算なのだ。
目にも留まらぬ速さで着替えた。光速に近づき時間の流れが遅くなった。アインシュタインのおかげである。
あの日ほど自転車を早くこいだ日は、後にも先にも一度もない。
今思い返しても謎だが、当時私はなぜか7800円のギアなし自転車を乗っていた。
10000円のギアありを買えばよかった。
ニュートンのせいで上り坂がつらく、遅刻するくらいなら今すぐ家より低い土地にある高校に転校したいと思っていた。
もしドクかドラえもんがこの投稿を読んでいたら今すぐニュートンのところへ行ってリンゴが落ちる前に木を切り倒すか彼に平成のエロ本でも渡しておいてほしい。
転校初日に汗だくで知らない高校に乗り込み「今日から転校してきました」と言い放った時点で高校生活が終わる。
「7800円の汗だく遅刻ニュートン」というあだ名で3年間過ごすことになる。
物理の授業でバカにされてしまう。それだけは避けねば。
ということで転校案もやむなく却下され、道を急いだ。
私の焦りに拍車をかけていたのは担任と隣の席に座る女子の存在だった。