温野菜半額事件の全貌①/②
最近、久しぶりにモカと連絡を取り合うことがあった。
元気にやっているみたいで安心した。
彼と連絡を取り合った際に下らないことをいくつか思い出したので記していこうと思う。
今からこれを読むあなたに最高に意味のない時間をお届けすることになる。陳謝。
遡るは2年前、埼玉県の南の方でわっほいほいと歩いているのは僕とモカだ。
その頃の僕らは「テストが一つ終わるごとにアイスを一つ買おう」という約束を交わすなど、義務教育を終えているとは思えないほどの低脳具合で日々生きていた。
僕らはなぜか知らないが、いつの間にか仲が良かった。
僕の家にゴキブリが出た時も彼を呼んだ。
あの時は非常に助かった。感謝。
日々くだらない、本当にくだらない話で盛り上がっていた。
ラーメンに夢中になり、たまに授業をサボり、お互いの家に行っては安飯を食い、ゲームをし、話していた。
今日は彼にまつわる話を三つほどお送りしよう。
①温野菜半額クーポン券事件
僕らは、高揚するモカを前に「よくやった」と拍手を送った。
僕の隣にはとーいという友達がいた。よく3人でラーメンに行ったものだ。
本当にいい3人組だった。日々ずっこけていた。
彼の手にはあの超高級しゃぶしゃぶ店、温野菜の半額券が握り締められていた。
毎日意味の分からない味のするカップ麺や、腐りかけの野菜に火を通したものなどを胃に詰め込んでいた僕らには天の救済だった。
「お前は天才だ」
と、クラス対抗リレーのアンカーで他クラスを抜き一位になった者しか得られないような称賛を彼は浴びた。
僕らはいそいそと温野菜に向かった。
「初めてだ」
「嬉しい。半額ってすごいな」
「早く食べたい。」
みんな興奮からか思ったことをそのまま口にし、それこそが僕らの喜びを何よりも表していた。
いよいよ店に入る。
「さすがの店内だ」
「高級だ」
「いい匂いがする」
三バカは席に座り、店員さんに印籠のようにクーポン券を掲げた。
すると店員さんは動揺もせず、さらりとこう言った。
「あ、それサーロインの半額券ですね。使われますか?」
「、、、、、、、、、、えっっっっっっっっ?」
凍った。
しゃぶしゃぶ屋で、僕らは凍った。
このクーポン券はしゃぶしゃぶ食べ放題セットを半額にするものではなく、ただ追加で食えるバカたけー肉を半額にするというクーポン券だったのである。
悲しいというか、切ない気持ちよりも先に僕らは笑った。
そんなわけなかったのだ。
食べ放題が半額になるなんて、そんなうまい話なかったのだ。
でも勘違いでもしなきゃこんな店一生来ない!今日は忘れて肉を食おう!
僕らはモカを責めることなく、堂々と一番安いセットを頼み、肉を頬張った。
その時とった写真に映るとーいの顔がおもしろすぎて、息ができなくなるほど笑った。
店内は僕らしかいなかった。
苦しすぎて立ったり座ったりを繰り返し、救急車でも呼ぶか?ってほど笑った。
ありがとう、モカ、とーい、そして、温野菜。