白日は何処に在るかわからないが
白日は何処に在るかわからないが
高層ビルのベタ塗りされる細長い影が
私を押したおし
無彩色の舗道に塗りこめ
手前に在るのか彼方に在るのか
遠近のない単調な空に架かる
淫らな聲をあげてよじれる絶叫軌道の表と裏を
回りきれない快速電車が枠木からはみだし
画布のまま目のない信号の五叉路に
塗りのこしのある自動車が殺到し
かきかけの歩行者が轢かれ
はずれた車輪が積みあがる斜塔に
縞柄を千切り貼りされ
あらたに加えられる絡繰時計の
内齒車を嚙みしめる
齒数42壓力角20度に耐える
ピニオンが問う
ワタシ……ひとノカヲ……
デスか
……拒絶される実存
私もそうだとこたえる奥に
失くした貌のエレメントを索め
側溝を手さぐりする
金属人形が
カヲクだサい……
さイカヲくダ……
指にふれる冷ややかな軽銀成型貌に
いくつもの螺子下穴や
座繰穴
おなじだと
腕をいれる縦孔に底はなく
布地の裂け目は厚塗りして塞がれ
下絵の透ける背景に無数の消失點が漂動し
そこに在るものの輪郭線が攪乱される
酩酊する都市風景を
何度も描きなおす
平たい冥闇をながしつづける吐水口
黑い水鏡に反射する歪形な街が
ゆがみの臨界点をこえ
嘔きすてる垂線が
私を突き通り
螺旋状にまがり
網目となり灼きつく
異臭をはなつ私は
中心のない洪荒にまきつく
針金の楕円球
跳びのった黑猫にかたむく額絵から
剝れおち
部屋のすみへ
不規則に
ころげ
る
【22N03AN】「裏返しのタブロ」よりⅢ
*画像はStable Diffusionにて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。
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