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東北一周自転車旅(9)宮城県仙台市〜石巻市

東北一周自転車旅
第9ステージ
宮城県仙台市〜宮城県石巻市(51km)

朝は8時頃から9時半まで原稿。なんとか昨日の日記を書き終え、急いで出発の準備。

10時にチェックアウトし、国分町の駐輪場から自転車を持ってくる。ホテル前で荷物を取り付け、出発した。

仙台と言えば「ずんだ餅」が有名だけど、昨日食べに行く余裕がなかったため、今朝絶対にどこかで食べたいと思っていた。前夜に近隣のお店をチェックしたら、ホテルから2kmほど先に「熊野餅店」という口コミ評価の高いお店があった。仙台駅のビル内にもいくつか店舗はあったが、自転車を停めずらいし、できればもっと街中にある「ザ・和菓子屋さん」みたいな老舗で食べたい。それで「熊野餅店」へ行こうと決めた。

今朝、Twitterで何度かやりとりしたことのある方からDMが届いた。

「昨日ずんだ餅が食べたいとおっしゃっていたので、友人が勤めている仙台のお餅のお店を紹介します」

見た瞬間、「いや〜、ご親切にありがたいですが、残念ながらもう行くお店は決めてしまっているんです」と心の中で思った。

そして返信を打とうとしていると、ご友人が勤めているという店名が送られてきた。

「熊野餅屋」

嘘でしょ!??? 仙台市内にずんだ餅のお店いっぱいあるよ? そんな偶然ある??

これは何かあると感じて、ワクワクしながらお店に行ってみると、ちょうど配達から店に戻ってきた女性が「中村さん」と声をかけてくださった。

「今朝いらっしゃるかもと伺っていました。嬉しいです〜。以前から中村さんのことはTwitterで見かけて存じ上げていました」
「なんと・・・! 仙台を離れる前にどうしてもずんだ餅が食べたくて」
「せっかくですので、ご馳走させてください。ずんだ餅と、他に食べたいものがあればぜひそれも」

なんと奇跡的なことだろう。訪ねた和菓子屋の店員さんがぼくのことを知っている方で、しかもご馳走してくださるなんて。

ずんだ餅、くるみ餅、おはぎ、ごまおはぎ、おこわいなりをプレゼントしてくださった。早速横の駐車場でいただく。お餅が柔らかく、ずんだは豆の味がしっかりしている。おいしい。5つすべて食べ、最高の朝ごはんになった。ケリーさん、感謝です!

今日は国道45号線で塩釜、多賀城を通って松島へ向かう。

日本屈指の漁港がある塩釜は、仲卸市場が有名だ。ぼくは過去に2度来たことがあり、いろんなお店から好きな刺身を少しずつ買ってきて、セルフで海鮮丼を作った記憶がある。なので今回は立ち寄らない。

さらに走ると多賀城に着いた。駅の近くにスタバの店員さんや地元の方におすすめしてもらっていた「喜久水庵」があったので立ち寄り、名物のずんだ生クリーム大福「喜久福」を食べた。アイスのように冷えていて、うまい。

ずんだシェイクもおいしいそうだったが、少し前にずんだ餅を食べたばかりだったのでサッパリとしたお茶が飲みたくなり、アイスの抹茶入玄米茶を購入。今日も暑いから冷たいものが飲みたくなる。

また、「東北随一の文化交流拠点」を目指す多賀城市において、その整備の中心として2016年3月にリニューアルしたのが、TSUTAYA図書館として有名な「多賀城市立図書館」である。本好きにはたまらない素敵な空間だった。

やがて右手に海が広がり、松島らしい景色になってきた。やはり松島といえば牡蠣。松島五大堂の前にある「げんぞう」という人気の屋台で、カキフライ(400円)と焼き牡蠣(250円)を注文。身が大きくてうまかった。

その近くからは多くの人々が遊覧船に乗って観光に出かけていたけど、「船は別にいいかな」と素通りしようと考えていた。そしたら、カキフライを食べているときに作家の千葉望さんから「遊覧船乗ってね!海から見ると全然違いますよ!」と言われたので、「やっぱり見ておくか」と気持ちが変わり、15時からの便に乗ることにした。遊覧船は50分間のコースで、料金は1000円。

確かに、海側の道路から眺めていたのはこの辺りの景観のごく一部に過ぎず、船で訪ねると全然違った。大小様々な島が左右に点在し、観光ガイドを兼ねた船内アナウンスが覚え切れないほどそれぞれの島の名前を教えてくれる。「松島」という島があるわけではなく、松島湾に浮かぶ260あまりの島々と辺り一帯の景観のことを松島と呼ぶそうだ。だからすごく範囲が広くて、やはり見ておいて損はなかった。

これで宮島(広島県)、天橋立(京都府)、松島(宮城県)をすべて見たから「日本三景」を制覇した。

16時に出発。石巻まではラスト26km。車通りの少ない海側の道をひたすら走る。途中、仙台と石巻を結ぶJR仙石線が横を通った。カラフルな車両だった。

石巻市に入ると、どこかで聞き覚えのある、切り裂くような音が上空で聞こえた。それは訓練飛行を行うブルーインパルスだった。ブルーインパルスはこの近くにある航空自衛隊松島基地に拠点を置いているため、頻繁に飛んでいるそうだ。1時間で3回くらい見かけた。旋回する様子も見えたし、ラッキーだった。

17時半、ゴールの石巻駅に到着。石巻は漫画家・石ノ森章太郎の第二の故郷とされているため、仮面ライダーをはじめ彼のキャラクターが街の様々なところに展示されている。石巻駅も素敵だった。

今夜は駅からすぐの「旅館いしのまき」に宿泊。お風呂に入り、洗濯をしてから、「駒寿し」というお寿司屋さんへ行った。

旅の4日目、いわきの湯本で刺身定食を食べた際、その量に驚き「東北が本気を出してきた」と投稿したら、友人の宮崎遼くんから、「こんなのまだまだ本気じゃないすよ!笑 仙台、石巻に行く予定あればご飯屋さんお伝えするので言ってください!」と言われてしまった。

それで「石巻に行く予定です」と返したら、この「駒寿し」をおすすめしてくれた。彼は以前、石巻の病院に勤務していた際、週1でこのお店に仲間と通っていたそうだ。

店に入ると、親方と女将さんだけがいて、他に客はいなかった。「宮崎遼くんにおすすめしてもらって」と話すと、「宮崎〜? 名前言われてもなあ。どんな顔? 写真ある?」と言われたので、SNSで見つけた彼の顔写真を見せると、「あ〜、わかった!ヒゲ生やしてな!猫舌の先生だ。よく来たよこの人は〜」と嬉しそうにしていた。

せっかくなので、「極上にぎり」4000円を注文。親方が手際よく握り、女将さんはサービスで小鉢を4つ出してくれた。寿司も実においしかった。とくにアナゴや中トロが絶品だった。

食べ始めた頃、宮崎くんからビデオ電話がかかってきたので、親方と女将さんを映しながら会話した。二人はスマホでのビデオ通話が初めてだったらしく「こんな便利なことができるのかあ」と驚いていたが、久しぶりに宮崎くんの様子を見られて喜んでいた。

二人はお話好きで、いろんな話を聞かせてくれた。

震災があったときのこと。店の崩壊は免れたそうだが、「この高さまで浸水したんだよ」と柱に印がついていた。店の裏手に住居があり、二人はおばあちゃんとともに2階に避難していた。1階は浸水していたが、食糧を2階に持ち込んで、数日はしのげる体制にしていた。4日目に自衛隊のボートで助けてもらい、避難所へ行った。でも避難所の方が食べ物がなかったという。こういう実体験を聞けて貴重だった。

震災後しばらくしてお店の営業を再開し、ボランティアで石巻に来てくれる人たちのためにちらし寿司を800円と破格の値段で出したり、赤字覚悟で頑張っていたそう。

「親方、明日は休みなんだから、余ってるネタ出しちゃいな。中村くん、体力使うんだから」
「よーし、腹いっぱい食わせてやるからな」

そして追加でイカ、タコ、すじこ、あじなどをいただいた。おいしかったなあ。本当にお腹いっぱいになった。

ぼくはただお寿司を食べながら楽しく話を聞いているだけなのだが、なぜか気に入られて縁談まで持ちかけられた。

21時になったので帰ろうとすると、女将さんが「店に入ってきたときから思ってたけど、中村くんは目力がすごい。何かを成し遂げそうな顔をしている」と褒めてくれた。親方も「いろんな人を見てきたけど、目がちげえ」と同調し、さらに30分以上も目や眉や頬など、パーツごとに褒めてくれた。最後には親方に「なんだか仏様みてえだ」と手を合わせられた。

「俺たちは店にいるだけだけど、あんたみたいな人が来てくれて嬉しいよ。いろんな人生があるんだなあ」
「ありがとうございます。本当にご馳走様でした。またいつか来ます」
「もう歳だから、『またいつか』なんて言わず、3年以内に来てくれな」
「わかりました(笑)」
「明日からも気をつけて頑張って」
「この先の道でなんかあったら車で行くから。緊急事態のときは電話してくれ」

またもや人とのご縁に恵まれ、石巻でも素晴らしい思い出ができた。

<今日のお金>
駐輪場代(2日分)120円
補給ドリンク 108円
喜久水庵 435円
カキフライ、焼き牡蠣 650円
遊覧船 1000円
コインランドリー 200円
宿代 4180円
お寿司 4000円

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