高知の旅(4)最終日、まさかのハプニング
旅の最終日。朝は晴れていたが、午後から雨が降る予報だった。8時にチェックアウトし、1時間半のドライブで「にこ淵」を訪ねた。ここは仁淀川の支流である枝川川(誤字ではない)にある淵で、幻想的な「仁淀ブルー」を見られる場所として近年話題のスポットになっている。
最近整備されたという急な階段を降りていくと、美しい滝壺の光景が広がった。透き通るようなブルー。水の音も心地良い。
最初は人もまばらだったが、途中から大型バス2〜3台分の団体客がぞろぞろと降りてきてあっという間に飽和状態に。狭い場所だから、GWはどうなることやら。
次に立ち寄ったのは、牧野富太郎(2日目に訪ねた牧野植物園の人)が生まれた街、佐川。酒蔵など古い家並みが少しだけ残っていた。
また、佐川の近くには樹齢800年の大楠があり、圧倒される大きさだった。
そこからさらに1時間のドライブ。最後にどうしても行きたかったのは、「久礼大正町市場」だ。カツオの一本釣りで知られる中土佐町久礼の中心部にある商店街で、約40メートルほどのアーケードは活気に満ちていた。
食べたかったカツオのハランボは串焼きで。うますぎた。
そして休憩所のおばちゃんに教えてもらった「山本鮮魚店」で、塩タタキ丼とウツボの刺身をいただく。最高の味だった。
さらに「西村甘泉堂」でところてんとあんドーナツを食べた。
お土産に「くれ天(じゃこ天)」と「カツオモナカ(ゆずあん)」も買った。
これで高知で叶えたいことは全て実現できた。思い残すことはない。あとは帰りの飛行機の時間まで、高知市内の蔦屋書店のスタバで休憩することにした。
しかし、ここから最大のハプニングが待ち受けていた。
レンタカーの返却時間は19時。高知空港の隣にあるレンタカー事業所まではここから約20分。ガソリンを入れても30分あれば着くから、18時30分に出発した。
「今回も良い旅だったな」
走りながら思い出に浸っていた。そんなとき、ふと気になった。
「そういえば帰りは何時の便だっけ? レンタカーの返却を19時にしたんだから、確か20時台だったよな」
信号を待ちながら、スマホをチェックした。
そして頭が真っ白になった。
「19時15分発」
ウソでしょ・・・?
終わった。。。
絶対間に合わない。19時にレンタカーを返して、19時15分発の飛行機なんて間に合うわけがない。
どうしてスタバで2時間ものんびりしていたんだろう? せめてあと15分でも早く出ていたら。駐車場では悠長に荷物の入れ替えをし、久礼で買ったじゃこ天まで食べていた。
後悔が募る。どうしてもっと早く飛行機の時間を確認しなかったんだろう?
「諦めちゃダメだ。信じよう」
「いや、でもこれは流石に無理だろう」
ポジティブな自分とネガティブな自分が戦っていた。様々な可能性が頭の中でグルグルした。羽田行きの飛行機は、19時15発が最終便。間に合わなかったら高知にもう一泊して、また明日の飛行機を取り直すしかない。あ〜、いくらかかるんだろう。。。
いずれにせよ、19時までにレンタカーを返さなくてはいけないのは変わらない。とにかく急ごう。運転に気をつけつつ、できる限り飛ばした。
本来はガソリンを満タンにしたうえで返却するのがルールだが、急いでいる場合は「ガソリン代+手数料」を払えばそのまま返却することも可能だ。なので一か八かに賭けて、ガソリンスタンドには寄らずレンタカー事業所に向かった。
幸いにも渋滞はなく、18時50分に到着した。飛行機の出発まであと25分。レンタカーのスタッフさんはぼくの帰りの便をわかっていたので、この状況を理解し入り口のところで立って待っててくれていた。急いで車をチェックし、「こちらでガソリン代の追加のご精算だけお願いいたします。送迎車は待機しておりますので」とスムーズに対応してくださった。追加の支払いをし、送迎車に乗り込むまで、わずか3分。
頼む、間に合ってくれ!
そして18時55分に空港に到着。飛行機の出発まであと20分。元添乗員の感覚からしたら、間に合わない時間だった。
しかし、送迎車を降りる直前、JALのカウンターで女性の職員さんが周囲を見回していたのが一瞬見えた。彼女もまた、諦めていなかったのだ。「いけるかもしれない!」と希望を感じ、カウンターへダッシュした。
「遅くなりすみません!19時15分発の羽田行きです。間に合いますか!?」
「中村さま、お待ちしておりました!」
ここからは超絶スムーズにチェックイン、手荷物の預けが終わった。
しかし、まだ保安検査場がある。あれは並ぶし、時間がかかる。大丈夫だろうか?
と思っていたら、カウンターの方が、2階で待機していたJALの職員さんに目配せをした。すると2階の方が頷き、「こちらへ」と裏ルートへと誘導してくれた。初めて見る保安検査場の裏ルート。並ばずにあっという間に手荷物検査が終わった。そしてその出口を出たら、羽田行きの出発ゲートの目の前で、ちょうど乗客の搭乗が始まったところだった。19時5分。間に合った・・・。
定刻通り19時15分にドアが閉まり、離陸した。
窓の外に映る高知の夜景を眺めながら、しばらく自分がここにいることが信じられなかった。ぼくは飛行機に間に合わなかった「もうひとりの自分」を想像した。空港で延泊する宿を予約し、バスやタクシーに乗ってとぼとぼとホテルへ向かう。辛い。
それを思うと、奇跡のようだった。バジェット・レンタカーとJALのスタッフさんたちのことを浮かべながら何度も感謝した。
そして反省をした。飛行機の時間は、必ず余裕を持って確認しておこう。思い込みは怖い。二度と繰り返さないように。
ただ、いつまでも思い出に残りそうな、実に旅らしいハプニングでもあった。
バジェット・レンタカー高知空港店のスタッフさん、そしてJALのスタッフさん、本当にありがとうございました!