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東北一周自転車旅(13)岩手県奥州市〜花巻市

東北一周自転車旅
第13ステージ
岩手県奥州市〜岩手県花巻市(62km)

今朝はホテルの部屋で8時から9時半頃まで原稿。それでも終わらないので、チェックアウトして水沢のスタバでドーナツとコーヒーを注文して11時半まで作業していた。

スタバで朝の作業。落ち着く

日記を書き終えて出発。北上盆地を北上していく(洒落ではない)。目指す花巻までは30kmほどで、険しい坂もないからいいのだけど、夕方バスで花巻南温泉郷へ行きたかったから、なるべく急ぐ。途中、コンビニでおにぎりをひとつ食べる。

岩手県を旅していると、北上川からは逃れられない

まず15kmほど走り、千葉望さんから教えてもらった北上川と和賀川の合流地点に到着。ここは桜の名所としても有名な「展勝地」という場所で、駐車場前では名物の「展勝地もち」が販売されていた。ここでは土日祝限定で、臼と杵でついた100%手づくりの展勝地もち(つきたて)を1つ100円で売っているそう。今日は日曜日、ラッキーだ。

つきたての「展勝地もち」を味見してみよう

きなこ、あずき、みたらしの3つを購入。つきたてのお餅はおいしかったし、元気が出た。

きなこは塩も入っているようだった

隣の公園では、全国陶器市が開催されていた。今年4月に訪ねた長崎県の波佐見焼のコーナーが特に人気のようだった。

再び出発しようとしたとき、ふと上を見上げて思わず声が出た。木と電柱の間のスペースに、「この世の終わり」と思うような壮大な蜘蛛の巣がびっしりと何十メートルにもわたって張り巡らされており、ある意味ではとても見応えがあった。ぼくは虫が苦手なのに、ドキドキしながらも怖いもの見たさに眺めてしまう。

観光名所よりも巨大な蜘蛛の巣に夢中

今日とにかく悩まされたのが、大量のトンボである。

「今年の東北は虫が多い」と何人かから聞いていたけど、それを聞くたびに「何の虫が多いんだろう?」と思っていた。全般的に虫が増えているのだろうか。

ぼくが自転車で旅しながら顕著に感じるのは、トンボの多さだった。しかし岩手に入ってからその数はさらにすごくなった気がする。

東北を走ったのは初めてだから、例年このくらいいるのか、それとも今年は異常に多いのか、判別がつかない。が、いずれにせよ大量にいる。みんなに見せたいが写真ではなかなか取れない。動き回っているし、小さいからぼくの深刻さは伝わらないだろう。

たとえば車を運転しているとき、15メートル先で歩道からいきなり子どもが車道に飛び出してきたら慌ててブレーキを踏むでしょう。ぼくとトンボにおいても、そのようなことが何度も発生しているのだ。

今まではトンボを見ても「かわいい生き物だ」ぐらいに感じていたのだけど、今やトンボがいる道を必死に避けようとしている。南相馬から自転車を漕いでいたときも結構トンボが多くて、走っていたら横から顎に突撃されたことがあった。顔にぶつかると結構痛いし、ビックリするから避けたい。どうやらあれがトラウマになっているかもしれない。

稲を干しているのかな

左右の田んぼの上空で飛び回っていてくれる分には全然構わないのだけど、彼らは突然車道に飛び出してくる。スピードも切り替わるし、方向転換もすぐするしで、飛行ルートが全然読めない。だからなるべくトンボを避けるために満足にスピードを出せず、タイムロスが発生する。

さらによく観察していてわかってきたのは、車道にはみ出てくるトンボのほとんどが、交尾中のとんぼであるということだ。2匹くっついたトンボは、飛行の制御が効かないのか、フラフラと危なっかしい飛び方をしている。車にはねられたのか、地面でうつ伏せになっているトンボもいる。でも不思議なのは、道で倒れているトンボはいつも1匹だけなのだ。2匹一緒に倒れたトンボは見なかった。犠牲になるのは、オスなのか、メスなのか。そんなことどうでもいいことを考えてしまうくらい、自転車旅は暇なのだ。

ともかく、なるべくトンボの少ない道を走るというのが、スピードアップのためにも大事なことになってきた。だから花巻へと向かう後半戦は、できるだけ畑の道を避けて、国道4号線のような大きな道路で行くことにした。 そうするとトンボの数もめっきり減る。

花巻駅近くに着いたのは14時過ぎだった。そして、ライター仲間のカミイマイさんに教えてもらった「マルカンビル大食堂」でランチにした。

花巻のマルカンビル

昭和レトロ漂う、花巻名物の素敵な食堂。食品サンプルを眺めているだけで懐かしい時代にタイムスリップしたかのよう。

ものすごい賑わいに驚いた
食品サンプルにワクワクする

花巻で高校時代を過ごした大谷翔平選手も食べたというナポリタンと、そしていちばんの名物であるアイスクリームを頼んだ。本当はナポリタンにトンカツが乗った「ナポリかつ」が代表メニューなのだけど、さっきおもちを食べたばっかりだったのでナポリタンだけにした。昔ながらの味。

ナポリタン(650円)とレモンスカッシュ(380円)

そして食後に出てきたアイスクリームは、そのサイズに度肝を抜かれた。なんという高さ、しかもたった260円。食べ応えがありメチャクチャおいしかった。また明日も食べたいくらい気に入った。このアイスクリームをお箸で食べるのがここでの常識なようだ。実際、みんなお箸で食べていた。

アイスクリーム(260円)

15時過ぎに、花巻駅前の「ホテルグランシェール花巻」にチェックイン。そしてすぐに荷物を軽くして、また出発。まずは大谷翔平選手と菊池雄星選手の母校、花巻東高校へ。

正門から見える校舎には大きな垂れ幕がかかっていた

裏手に回るとグラウンドが見えて、ちょうど練習試合をやっていた。

2選手のモニュメントもあった

花巻東高校から12kmダッシュして、向かった先は「花巻南温泉郷」。この旅行中、何人かからこの温泉をおすすめされた。石巻のお寿司屋さんの親方と女将さんも、「温泉はいつもここだね」と話していた。調べてみると日帰り入浴できる温泉旅館もいくつかあり、なかでも「大沢温泉 湯治屋」は宮沢賢治ゆかりの温泉でもあるようだった。

途中いくつかのアップダウンがあったけど、基本は平らで、車通りの少ない道。しかし車通りが少な過ぎて、夜になると真っ暗で危なそうな気がしたので、なるべく早く帰ってきたいなという感じだった。夕方16時過ぎに大沢温泉に着き、入浴料は700円を支払い施設の中へ。スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫さんもこよなく愛する温泉だそう。歴史を感じさせる渋い建物で、温泉に入る前からこの雰囲気だけでかなり満足。まっくろくろすけが出てきてもおかしくない。

大沢温泉 湯治屋

ここでは「大沢の湯」「薬師の湯」「かわべの湯」という3つの温泉に入ることができて、順番に全部入った。なかでも驚いたのは、大沢の湯。なんと混浴の露天風呂。東北には混浴の温泉が結構多いみたいだけど、いやいや、ここは風情がすごかった。扉を開けると、川に面して岩風呂があって、脱衣スペースがその横にあるだけ。これは女性にとってはハードルが高いよなあと思っていたら、案の定おじさんしかいなかった。みんな無言で温泉に浸かっているけど、多分それぞれが「なんだ、おっさんだけじゃんかよ」って思ってたと思う。すぐ近くの橋は普通に一般の人が通るのだけど、そこからは露天風呂が丸見えで、それもまた衝撃的で「すごいなあ」と裸で感心していた。東京では味わえない。これこそ旅である。

素晴らしい露天風呂だった

そして泉質が見事。スベスベになる。景色も良くて、ここはぼくも強くお勧めしたい温泉になった。「薬師の湯」や「かわべの湯」は男女別の温泉だから、ぜひとも多くの方に訪ねてほしい。

昔から人々が男女関係なくここで温泉を楽しんでいたんだなと想像すると、古き良き日本の良さを感じさせてくれる場所だった。

18時前になり暗くなってきたので、急いで自転車を漕いで帰った。ホテルまで約14kmの道のりをわずか30分で走れて、随分速く走れるようになったなとこの旅行中の成長を実感した。下半身の筋肉が太くなった。

帰り道、ホテルの近くの道を走っていたら、普通の道の壁が美しく光っていて、「銀河鉄道の夜」が現れた!

幻想的な道路の壁

このあまりの美しさには息を呑んだし、不意打ちもあってこの旅でいちばん感激してしまったかも。そのくらい幻想的で素晴らしいものだった。昼間通ったときは、なんか薄く描かれているなあと思ったのだけど、夜に光るとは思ってもいなかった。特殊な蛍光塗料を使っているそう。これはぜひ花巻へ行ったら見てほしい。

昼間の様子

夜は近くのファミレスで、友人の三上さんと再会。彼女はご結婚を機に岩手県奥州市に移住した。かつて不動産投資の会社で働きながら、小説を書いていた彼女。そのユニークさに惹かれて6年くらい前に(?)仲良くなったのでした。ぼくが2017年にアメリカを自転車で縦断した際の講演会に来てくれて、そこから親しくなった。

三上さんと再会

彼女は水沢に住んでいるから、本当はお昼に水沢でランチをするつもりだったのだけど、ちょっとタイミングが合わなくなってしまった。残念ながら会えないかもと諦めかけていたら、彼女が旦那さんと一緒に車で花巻まで来てくれて、短い時間だったけど無事夕食をともにしながら久しぶりの再会を楽しんだ。相変わらずいろんなことに興味を持って、活動的に生きてらっしゃった。さらに旦那さんもおもしろい方で、お医者さんでありながら、プロのマジシャンでもあるという異色の経歴の持ち主。色んな話を聞かせていただいて刺激を受けた。夕食もご馳走様でした!無事に会えて嬉しかったです!

さあ、明日は岩手県の遠野市へ向かいます。

<今日のお金>
スタバ658円
おにぎり135円
展勝地もち 300円
補給ドリンク 141円
ランチ 1290円
温泉 700円
補給ドリンク 108円
洗剤 100円
コインランドリー 400円
ホテル 5210円

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