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東北一周自転車旅(16)岩手県宮古市〜久慈市
東北一周自転車旅
第16ステージ
岩手県宮古市〜岩手県久慈市(5km・鉄道移動)
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仙台から一週間休みなく走ってきたため、「そろそろ休息したいな〜」と思っていたら、雨が降った。これはもう、「天からのお告げ」と捉えるべきだろう。無理に逆らわないことだ。
今朝はホテルでバイキングの朝食。バイキングはいつも苦しくなるくらい食べてしまうので、あまり食べ過ぎないように注意した。その後サクッと朝風呂に入り、10時に宿を出発した。
今日は休息と移動と観光をすべて兼ねて、目的地の久慈まで三陸鉄道で行ってしまうことにした。宮古から久慈までの距離は約90kmで、電車だと1時間半くらい。
ぼくはNHKの朝ドラ「あまちゃん」が好きだったから、三陸鉄道にはいつか乗ってみたかった。けど、もともと乗る予定がなかっただけに、突然こんなチャンスが訪れて素直に嬉しかった。憧れの三陸鉄道だ。
念のため時刻表を調べると、やっぱり本数が少なかった。
10時40分発の次は、13時54分発、15時05分発となっている。今から駅まで5km走って輪行準備することを考えると、10時40分発はギリギリ過ぎる。だから13時54分発に乗ることに決めた。宮古駅近くのマクドナルドへ行き、コーヒーを飲みながら前日の日記を書くことにした。ホテルを出て最初は小雨で済んだが、マクドナルドに向かっている途中で大雨になった。
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12時過ぎに作業が終わり、宮古駅で切符を購入。久慈まで1890円だった。
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次にランチ。近くの「おかめ」というお店で、宮古名物の「瓶ドン」を食べた。宮古の旬の食材が牛乳瓶に入っていて、それを自分でご飯にかけて食べるというもの。
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現在宮古市内の10店舗で「瓶ドン」が提供されていて、瓶の内容はお店ごとに異なるようだ。言ってしまえば「海鮮丼」なのだが、ネタが瓶に入っていると、見た目も美しいし、インパクトが素晴らしい。若い子はついインスタに載せたくなるだろうし、これは良いアイデアだなと思った。ペロリと食べてしまったが、もちろん味もおいしかった。
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宮古駅に戻り、自転車を輪行袋に入れ、いよいよ三陸鉄道リアス線に乗車。1両のみだけど、お客さんは座席に対して4割くらいで、ゆったり座れた。
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ずっと美しい海を眺めながら走るのかなと勝手に想像していた。しかし、実際は違った。とにかくトンネルが多い。走り始めるとすぐトンネルに入り、出てもまたトンネル、というのが続く。リアス線全体で62ものトンネルがあるそうだ。基本的に海から少し離れた内陸部に線路が通っているので、外の景色も映えず、割と退屈な時間が続いた。残念だが、リアス式海岸の地形的にそうせざるを得なかったのだろう。また、あまり海に近いと津波にやられてしまうから、というのもあるみたいだ。実際、これだけ海から離れていても、震災時には津波で一部の線路が流されてしまい、復旧まで数年を要した。
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途中の田老駅から、突然たくさんの乗客(30人前後の中高年)が乗ってきて、一気に満席になった。身につけているバッジから、トラピックス(阪急交通社)のツアー客だとわかった。
隣に座った女性に「どんなツアーなんですか?」と尋ねた。4泊5日で岩手、青森、秋田を巡るツアーで、スタートは花巻空港から。宮古、久慈、八戸、青森、下北半島、恐山、津軽半島、白神山地などを巡り、最後は秋田県の大潟に泊まって秋田空港から帰るという。その方は宮崎からご夫妻でツアーに参加しているそうだ。
「昔、自転車旅で宮崎を訪れた際、ものすごい高さのあるかき氷を食べました」
「あら、『百姓うどん』のかき氷ね。私たちすぐ近くのところに住んでいるのよ」
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ツアー客が乗ってきたことで、ぼくはこの先の景観に少し希望が持てた。旅行会社が、あえて宮古から久慈ではなく、わざわざ途中の田老から久慈の区間で鉄道に乗せたということは、前半よりも後半の区間の方がより景色が良いということだろう。ツアーの企画者の立場からすれば、そういう意図があるはずだった。
案の定、途中の大沢橋梁と安家川橋梁からは、美しい海の景色が広がった。列車は橋の上でわずかに一時停止し、乗客に撮影する余裕を与えてくれた。大沢橋梁は、あまちゃんのロケ地にもなった場所だと後からわかった。主人公のアキや母・春子が上京する際、夏ばっぱが大漁旗を振って見送ったシーンはここで撮影された。
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15時半頃、久慈駅に到着。北上する間に、雨は止んでいた。
駅や駅前広場では、あまちゃんのヒロイン、アキちゃんやユイちゃんたちがお出迎え。ファンにはたまらない街だ。
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作中で「北三陸観光協会」の入ったビルとして登場した駅前デパートも健在だった。
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自転車を組み立ててから、予約していた「つたや旅館」にチェックイン。部屋のある2階を歩くと床がギシギシと音を立てて軋む古い木造建築だけど、親しみのわく旅館だった。
荷物を置いて、「久慈市情報交流センター YOMUNOSU」へ。ここの1階にはあまちゃんの展示がある。先日近所の図書館で、小説のように読めるあまちゃんの「完全シナリオ集」を見つけたので、今度読みたいなと思っている。
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商店街を歩いていると、ちらほらとシャッターにイラストが描かれている。これはあまちゃんファンの漫画家たちが描いた作品を、地元の高校生たちがシャッターに描いたアートで、約20店舗分あるそうだ。お店が開いているときには見られないから、夜の散策もおすすめだ。
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夕食は、Googleマップで見つけた「蛇の目寿司」さんへ。おいしいお寿司をリーズナブルに食べられる店として、地元の方にも人気のようだ。気さくな大将がいろいろ話しかけてくれたおかげで、カウンターの隣に座っていたお二人とも打ち解けて会話を楽しめた。
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「前にも自転車で旅をしているっていう人が久慈に来たなあ」
「そうですか」
「名前なんだったかな、その人も物書きで、本を2冊出してるって言ってたけど」
「え、本を2冊。もしかして、坂本達さんですか?」
「いや、そんな名前じゃなかったな」
「じゃあ、石田ゆうすけさん?」
「それだ!」
「へー!ぼくは彼の本を大学時代に読んで、それにも影響を受けているんです」
石田ゆうすけさんの著書『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』は、おそらく多くの方を海外自転車旅に駆り立てたであろう名著だ。この本の中に、「アメリカのモニュメントバレーの景色があまりに美しくて、1泊のつもりが3〜4日も滞在してしまった。なかなか出発できなかった」というエピソードが出てくる。そのカッコつけない素直な描写が、なぜだか今でも強く印象に残っている。モニュメントバレーとはそれほどまでに美しい場所なのか、と惹き込まれるものがあった。
旅のエッセイ本は世の中にたくさんあるけど、「自転車旅」をテーマにした、読み物としてもおもしろい本は、さほど多くない。だからぼくも、ここに食い込みたいと思っている。いつか出るぼくの本によって、多くの若者を自転車旅に駆り立てられたら嬉しい。たとえ旅に出なくても、純粋に読み物としておもしろいものを書きたい。
「特上にぎり」は2500円。単品でしめ鯖と玉子を頼み、計2900円だった。久慈名物のウニも食べられて満足。「
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さらにその後、原稿を書くため「NANAMARUNI COFFEE」というカフェを訪れた。店に入った瞬間、内装の素晴らしさに度肝を抜かれた。なんという美しい空間だろう。
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いつもはブレンドコーヒーしか頼まないのだけど、口コミでスイーツもおいしいと書いてあったので、手頃な大きさのスコーン(チョコ)をひとつ頼んだ。
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そしたら、あまりのおいしさに衝撃を受けた。こんなにおいしいスコーンは食べたことがない。そのままでもおいしいし、クリームといちごジャムをつけるとさらに味わいが増す。
感激してしまい、3種類あったうちの残りのスコーンも頼んでしまった。プレーンとアールグレイも見事においしかった。
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閉店時間の20時までいて、お会計の際、思わず店長さんに「なんでこんなにスコーンがおいしいんですか?」と聞いてしまった。
店長の嵯峨さん、もともとはコーヒーが好きでこのお店を始めたのであって、甘いものはそんなに好きじゃなかったそう。だからお菓子を出すならコーヒーに合うもの、甘さ控えめのものを出したいと思っていたそうで、スコーンが最初のフードメニューだったから随分研究したとのこと。そうじゃなきゃこんなおいしくならないよねえ。
お店の素敵な内装については、彼がアパレル業界で働いていたことや、建築が好きなこととも関係しているそう。それは納得。総合的な調和を感じる空間だから。嵯峨さん、素敵なセンスを持った方だ。
「あとぼく、日本の古い家具が好きなんですよ」
「え、これ日本の家具だったんですか」
「そうです、桐たんすとか」
「不思議とドライフラワーにも合いますね」
「こういう家具も、もともと西洋から入ってきた文化だから」
「だからマッチするんですかねえ」
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久慈に行ったらぜひ「NANAMARUNI COFFEE」さんを訪ねてみてほしい。「クロッフル」という、クロワッサン生地をワッフルメーカーで焼いた外サクサク、中モチモチのスイーツも人気のようだ。
明日も雨予報。しかも今日よりもだいぶ強いみたい。八戸のホテルを予約してしまっているのだけど、どうしよう。明日の朝に考えよう。
<今日のお金>
マクドナルド 130円
ランチ 1650円
三陸鉄道 1890円
宿 5115円
お寿司 2900円
コーヒーとスコーン 1000円
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