「読んで良かった」と心から思えた30冊(小説・エッセイ多め)
先日、ライターコンサル生の杉山真太郎さんに星野道夫『旅をする木』を勧めたところ、とても気に入ってくださったようで、こんなLINEをいただいた。
中村さん、おすすめの本を聞きたくてLINEしました。
古賀史健さんの『書く人の教科書』の中にあった「最初からそこにあったとしか思えない文章がいい文章」という文章の基準がすごい自分の中で残っています。を読んでいると、本当にはじめからそのまま文章が存在しているように自然で、すっと自分の中に入ってきてくれて、それのおかげか想像力も働いてくれるような気がします。これが、いい文章なのかと思いながら読んでいます。でも、『旅をする木』もあと少しで終わってしまうので、名残惜しいです。
それで、中村さんがいい文章だなって思う本や、すごいなって思う本を教えていただきたいです。小説でもエッセイでも、形式は何でもいいです。むしろ全部読みたいくらいです。とりあえず、最近話題になっている小松成美さんの本は買いました。『中田英寿 鼓動』は早く読みたいです。
とても嬉しかったので、これまで読んできた本を思い出しながら、彼におすすめしたい本をピックアップした。
それと同時にこのnoteでも、ぼくがこれまでの人生で、心から読んで良かったと思えた本たち、そして駆け出しライターの方にはぜひとも読んでいただきたい「文章術以外の」本たちを30冊、ご紹介しようと思う。
まだまだ読めていない名著は無数にあるのと、個人的な好みもあり、偏ったセレクトになっているのは承知のうえだが、読んでいない本は載せたくないので、お許しいただきたい。その代わり、(個人的には)確実におもしろいと思えた本たちである。
駆け出しのライターにとって、文章術関係の本も、もちろん多いに参考にはなるだろう。しかし、ぼくは優れた作家やライターが書いた、「作品そのもの」を読むことが肝要と考えている。何よりも、そういう本たちは、人生を豊かにしてくれる。読み終えたときに、「この本に出会えて良かった」と、しばらく余韻に浸りたくなるような、そういう時間は素晴らしいものだ。
すぐ役に立つ知識やノウハウは書かれていないかもしれない。しかし、作品の中に息づく、余白や余韻をこそ感じてほしい。「つまりこういうことね」と安易に答えを求めず、「今はまだ理解できないこと」や「よくわからないこと」も含めて、まるっと自分の中に吸収してみてほしい。そこから生まれる何か、時間をかけて醸成されていく何かが、きっとあるような気がする。
ぜひ、課題とは考えずに、趣味感覚で、気になった本を手に取ってみていただきたい。
セレクトは小説やエッセイが多め。長さ別に「ライト」「ミドル」「長編」と割り振っているのでご参考までに(あくまで長さの区分けであり、長さはライトでも内容は至極ディープな本もある)。「長編」は数巻あったりで幾分か読むのに時間を要すが、その分、充足感や学びも大きいはずだ。
小説(歴史小説・SF含む)
(ライト)
よしもとばなな『すばらしい日々』
コメント:昨年、読みながら涙しました。ばななさん、なんてすごい方なんだ
(ライト)
村上春樹『風の歌を聴け』
コメント:村上春樹30歳、衝撃のデビュー作
(長編)
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
コメント:初めて読んだ村上作品。読み進める手が止まらない
(長編)
村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
コメント:2つの世界の物語。続きが気になって仕方がない
(ミドル)
カズオ・イシグロ『日の名残り』
コメント:美しい文章で衝撃を受けました。じんわりと心に沁みる作品
(ミドル)
ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』
コメント:美しい自然描写と上質なミステリー、両方楽しめる傑作
(長編)
宮城谷昌光『楽毅』
コメント:「人が見事に生きるとは、どういうことか」キングダム好きな方におすすめ。
(ミドル)
司馬遼太郎『燃えよ剣』
コメント:初めて読んだ司馬作品。新撰組、とにかくカッコいい!2021年10月15日に映画が公開!
(長編)
司馬遼太郎『峠』
コメント:「知られざる英雄」長岡藩士・河井継之助の生涯。こちらも2022年に待望の映画化
(長編)
司馬遼太郎『世に棲む日日』
コメント:吉田松陰の生き方・考え方に感化されました
(長編)
司馬遼太郎『項羽と劉邦』
コメント:ぼくが最も好きな司馬作品。リーダーについて考えさせられます。こちらもキングダム好きな方はぜひ
(長編)
塩野七生『ギリシア人の物語』
コメント:とにかく重厚。しかしこんなにおもしろい本には滅多に出会えない!
(長編)
劉慈欣『三体』
コメント:人生でいちばんおもしろかった作品。作者は天才だ
(ミドル)
ジョージ・オーウェル『一九八四年』
コメント:一度は読むべき古典的名著
(長編)
沢木耕太郎『深夜特急』
コメント:多くの日本人を旅に駆り立てた名著。特に1巻のマカオ編は中毒的なおもしろさ
エッセイ・自伝・ノンフィクション
(ライト)
片桐はいり『わたしのマトカ』
コメント:なんでこんなに文章がうまいのと驚きました。エッセイのお手本
(ライト)
星野道夫『旅をする木』
コメント:ぼくのバイブル。星野さんは偉大な人だった
(ライト)
星野道夫『長い旅の途上』
コメント:『旅をする木』が気に入ったら、こちらもぜひ
(ライト)
レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』
コメント:小さなお子さんのいる方に勧めたい、カーソンの遺作。自然の尊さを教えてくれる。後半の解説エッセイも良いです
(ミドル)
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』
コメント:難しいテーマをこんなに面白いドラマにした筆力に脱帽。高校生の時に読んで、将来は数学者になりたいと思いました(あれ)
(ミドル)
小松成美『中田英寿 鼓動』
コメント:あらゆるシーンに「小松さんの存在」を感じる驚異の作品。200人以上の関係者に取材したという、スポーツノンフィクションの金字塔
(ライト)
植村直己『青春を山に賭けて』
コメント:ぼくに大きな影響を与えた植村直己。その半生を描く自伝的エッセイ。彼は文章もうまかった
(ライト)
山口文憲『香港世界』
コメント:ひと昔前の、旅情たっぷりな香港。文章がうますぎるエッセイ
(ライト)
ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』
コメント:「あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない」
(ライト)
小澤征爾『ボクの音楽武者修行』
コメント:指揮者「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。ぼくはとても影響を受けました。偉大
(ライト)
『走ることについて語るときに僕の語ること』
コメント:村上春樹はエッセイも素晴らしい。文体のリズムが勉強になります
(ライト)
高野秀行『ワセダ三畳青春記』
コメント:とにかく笑える作品。高野ワールドの入り口にぜひ
ビジネス書・社会学
(ライト)
荒木博行『藁を手に旅に出よう “伝説の人事部長”による「働き方」の教室』
コメント:斬新なアプローチの名著。就活生や、20〜30代の会社員に特におすすめしたい。新入社員の頃に読みたかった
(ライト)
平野啓一郎『私とは何か――「個人」から「分人」へ』
コメント:小説家が書いた本だけに読みやすい。「分人」という概念は発見だった
(ミドル)
長沼伸一郎『現代経済学の直観的方法』
コメント:「文章の天才に出会ってしまった」と今年一番衝撃を受けた本。内容も抜群におもしろい。ビジネス書大賞2020特別賞
これからもどんどん素敵な作品に出会っていくと思うので、また折にふれてご紹介していきたい。