マーケティング戦略構築手法:How
概要
本稿では、Whoに対してWhatを「どのように行うか」現状を整理していく。
本稿においてはHowを「相手の感情に即した施策」と定義し、話を展開していく。
Howでは下記のフレームワークを活用する。
・7つの要素
・売上予測モデル
・バリューチェーン
・行動フローと感情
・反証を挟む
・50 Scamper Q
・ファンベース
・Life Force 8
7つの要素
既存事業の場合、自社と競合の現状数値。新規事業の場合は可能な限り競合の下記における数値を調査する。
認知率
配荷率
過去購入率/延べトライアル率
エボークトセットに入る率
1年間に購入する率
年間購入回数
平均購入金額
これらを把握することで、何が売上に寄与、ないし阻害している要素なのかを整理できる。
整理した要素を、後述する「売上予測モデル」と絡めていく。
数値は正確であればあるほどいいが、緻密なデータを揃えられるケースは難しいかつお金がかかるため、まずはざっくりと把握するだけでも効果がある。
例えば、何人かの友人にLINEで「このブランド知ってる?」と質問したり、「週に何回カフェにいく?」と購買頻度を聞くだけでも気づきがある。
まずは、誰かにLINEで聞いてみる、ググるだけでも7つの要素の概況はわかる。
最後に、これら「7つの要素」の全てをコントロールし、改善できるわけではない。
例えば、年間購入回数はコントロールできない。
冷蔵庫を毎月買い換えることはないし、買ったばかりの洗剤が残っているのに連日洗剤を買ったりはしない。
したがって、企業側が消費者の年間購入回数を増減させることは実質的に不可能だ。(冷蔵庫を毎月買い換える文化を作れれば話は別だが。)
下記にコントロール可否の表を記載しているが、各要素の詳細は「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」を参照して頂きたい。
売上予測モデル
7つの要素が整理できたら、下記のフレームワークに当て込んでいく。
━ 売上予測モデル ━
達成したい売上に対して、どのフェーズの数値を向上させないといけないのかを見分けられる。
例:年間購入者の全世帯に対する割合
=認知率x配荷率x過去購入率xエボークト・セット率x年間購入率
=75%x80%x60%x60%x60%
=13%
例:洗剤の年間の売上
=総世帯数x1年間に買う人x平均購入回数x平均購入金額
=49,973千x13%x1.3回x420円
=35億円
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認知が足りてないのか、初回購買が足りてないかなど、売上予測モデルにおける課題点を見つけられる。
バリューチェーン
バリューチェーンとは、企業が製品を設計、生産、販売、配送、サポートするために遂行する活動の集合である。
━ バリューチェーン ━
分析ステップ
1.まず業界のバリューチェーンを洗い出す
2.次に自社と業界のバリューチェーンを比較する
3.価格ドライバー、つまり差別化の鍵を現在または将来握る活動に着目する
4.コストドライバー、つまりコストに占める割合が高いか、高まっている活動に注目する
ポイント
・業界固有の主要な価値創造活動を洗い出すこと
・自社のバリューチェーンが他社と区別がつかない場合、ゼロサム競争に終始していることになる
・価値は顧客経験の提供から生まれることもあれば、アフターサービスから生まれることもある
・コストドライバーは、活動における一連の要因によってきまる
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バリューチェーンを把握の仕方は、商材や金額よるが実際に体験してみるのが手取り早い。
例えばカフェ事業をやる時。
競合のカフェを探し、サイトとSNSを確認し、実際にデートや会議で使い、ドリンクを買い、SNSをフォローしたり会員メンバーになり、実際にSNSで投稿し、他人に口コミしてみて、また行ってみる。
上記の体験から、研究開発から製造の部分がどうなってるのか調査。
7つの要素同様、まずはざっくりの把握で良いと考える。
施策を実施している内に、さらに細かいデータが必要になるため、その時調査会社やデジタルを活用したデータを取ればいい。
行動フローと感情
顧客が認知し、商材を共有するまでの各フェーズにおいて「現在、自分はどんな提案をしているのか?」また「提案の時に顧客はどんな感情か?」をマインドマップに書き出す。
カスタマージャーニーの各フェーズ毎に行っているHowを見直し、後述する反証、また50 Scamper Qを活用することでHowの継続、改善、撤廃の意思決定を行う。
この時、ポイントとなるのが「相手の感情」。
相手の気持ちになり、自分の提案で相手の感情がどう感じる、変化するのかを想像する。
なぜ「相手の感情」を想像するのかが重要かは、下記のラジオを参照して頂きたい。(16:40あたり)
反証を挟む
筆者の場合、ここで一度反証を行う。
各フレームワークで出した結果に対し「反証」における質問を行う。
その後50 Scamper Qを行うことで、さらに意外な発見がある。
50 Scamper Q
「Substitute 代替」「Combine 結合」「Adapt 適応」「Modify Magnify Minimize 修正、拡大、縮小」「Put to other uses 他の用途に置き換えられるか」「Eliminate 排除」「Rearrange 再創造」
これら7つの視点から、一連のマーケティング戦略に対して下記の質問を行う。
引用元:https://smartstorming.com/downloads/SmartStorming_50_SCAMPER_Questions.pdf
━ 50 Scamper Q ━
Substitute 代替
1.他の要素、素材に代替できるか?
2.他の人、場所、物事に代替できるか?
3.他の方法、プロセス、プロデュース方法に代替できるか?
4.他の部分、成分、テクノロジーに代替できるか?
5.他の力、エネルギーに代替できるか?
6.他に取り替えることができるか?
7.最も明白に代替できることは何か?
8.他の色、テクスチャ=質感とか感触、詳細、ブラッシュアップの代替ができるか?
Combine 結合
9.どの要素が結合できるか?
10.他に2つ以上のアイデアと結びつけられるか?
11.他に付け加える、マージする、ブレンドすることはあるか?
12.他のステップ、機能、プロセスで結合できるものはあるか?
13.他の特徴で結合できるものは?
14.他の機能で結合できるものは?
15.他に結合できるものは?
16.他にリソース、努力で成功のために結合できるものは?
Adapt 適応
17.他に似ているものは?
18.他にコピー、マネできるものは?
19.Xが他の目的に適応、変えることができるか?
20.以前はどのようにやっていた?
21.他に成功していてまねるべきロールモデルは?
22.価値ある模倣するための他の製品、サービス、プロセスは?
23.達成すべく他に5つの使い用及び目的は何か?
24.Xはどのように価値を追加できるか?
Modify Magnify Minimize 修正、拡大、縮小
25.何か拡大できる方法はあるか?
26.もっとコンパクトにできる方法はあるか?
27.もっと着飾る、誇張する方法はないか?
28.もっと時間を短くするにはどうするか?
29.もっと簡単にするにはどうするか?
30.もっと色、デザイン、機能、フォームで改善できるとこはないか?
31.もっと追加できる、ないし新しい特徴はないか?
32.もっとすごい価値を加えられないか?
Put to other uses 他の用途に置き換えられるか
33.元の考えよりXは使い用途がないか?
34.どのような人がXに興味をもつか?
35.他の市場/ニッチにXは使えないか?
36.Xは元々考えてた目的以外に使えないか?
37.他に5個以上の使い道がないか?
38.認知してない人でXで満足させることができる人いるか?
39.マーケットインor売るために他の新しい方法はないか?
40.5歳児集団がXを使うとどうなるか?
Eliminate 排除
41.何が取り除けるか?
42.どの要素が本当は必要ないか?
43.どのステップが本当は必要ないか?
44.何を省略できるか?
45.もし除いてもmissしないか?とりま外してみる
46.何が不要か?
47.価値の小さいことは何か?
48.何をコンパクトにできるか?
Rearrange 再創造
49.どの要素を再創造できるか?
50.どの要素を交換できるか?
51.xは他にどんなパターンに変えられるか?
52.反対に考えるとどうなるか?
53.どのように識別、転置できるか?
54.どのようにリデザインできるか?
55.どのように再定義できるか?
56.予測できないこと、挑戦的なことはなにか?
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「反証」と重なる部分もあるが、再確認の意味も込めて行う。
これにより、漏れている視点がないかを確認する。
ファンベース
既存顧客、ないしこれから獲得する顧客に向けた施策を用意する。
その上で、下記を事前に抑えておく。
━ ファンベース ━
【ファンの支持を強くするための3ヶ条】
1.その価値自体を、アップさせること→「共感」を強くする
・ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
・ファンであることに自信をもってもらうため、ファンが謙虚に自慢できるコミュニティ作り
・新規顧客より優先してファンを喜ばせる
2.その価値を、他に変え難いものにすること→「愛着」を強くする
・商品にストーリーやドラマを纏わせる
・ファンとの接点を大切にし、改善する
・ファンが参加できる場を増やし、活気づける
3.その価値の提供元の評価・評判を、アップさせること→「信頼」を強くする
・施策は誠実なやり方か、自分に問いかける
・本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
・社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする
【ファンの支持をより強くする3つのアップグレード】
1.熱狂される存在になる・大切にしている価値をより前面に出す
・「身内」として扱い、共に価値を上げていく
2.無二の存在になる
・忘れられない体験や感動を作る
・コアファンと共創する
3.応援される存在になる
・人間をもっと見せる、等身大の発信を増やす
・ソーシャルグッドを追求する。ファンの役にたつ
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共感、愛着、信頼、熱狂、無二、応援。
これら6つの要素を満たす施策ができている、ないしはこれからやろうとしているのかを確認する。
Life Force 8
広告コンサルタント、作家であるDrew Eric Whitmanが提唱したのが「Life Force 8」である。
人が本能的に持つ欲求を示したものだ。
Survival, enjoyment of life, life extension:生存、人生の楽しみ、人生の拡張
Enjoyment of food and beverages:食事の喜び
Freedom from fear, pain, and danger:恐怖、痛み、危険からの解放
Sexual companionship:性欲
Comfortable living conditions:暮らしへの快適性
To be superior, winning, keeping up with the Joneses:平等性 ※ジョーンズ効果
Care and protection of loved ones:愛してる人たちの世話と保護
Social approval:共感
引用元:How to Apply the “Life Force 8” for Better Selling
人間の行動は上記のいずれかに当てはまる。
つまり、各施策においてどの欲求を解消しようとしているのかを事前に把握しておく。
まとめ
本パートで最重要視しているのは「相手の感情に即したHowができているか」である。
How、と聞くと、2021年現在では「EC」「SNSマーケティング」「サブスクリプション」「オンラインサロン」などを想起する方が多いだろう。
ただ、言わずもがなこれらの「具体的な施策であるHow」は時代によって変わる。
未来は二次元上にたくさんのお店があり、VRゴーグルを通して買い物をしているかもしれない。
冒頭にて、本稿におけるHowを「相手の感情に即した施策」と定義した理由はここにある。
本パートではあくまで「具体的な施策であるHow」へ繋げるための下準備として、各フレームワークを使って頂けると幸いだ。
参考文献