BtoBマーケティングやる時、まずはこれの穴埋めからやる。
私がBtoBマーケティング戦略の設計をする際、まずは13個の数値項目を埋めていきます。
本稿は、下記の方におすすめです。
BtoBマーケター
インサイドセールス
マーケとセールスの不仲に困ってるマネージャー層
記事のゴールは「"New Logo = 新規受注"に向けてどこに課題があるかを定量的に示す」こと。
私自身も苦しんだ、下記の課題解決について執筆しています。
BtoBマーケティングの成果が財務指標で評価されにくい
マーケティングチームと営業の関係性が悪い
リード獲得から受注においてどこが最重要課題かわからない
記事におけるポイントは下記3つだと考えています。
「マーケティング→SDR / インサイドセールス → 営業」までのKPIを一つの数式にする
3つの注意点
目標値達成に向けた戦略の言語化
それではまず、数式を作る目的から入ります。
数式の目的
目的は、改善すべき変数の特定
私はBtoB SaaSのマーケ → 新規営業 → CSとキャリアを積み、The Modelの上流から下流まで経験してきました。
業績が悪い時、どのチームに所属しても必ず「リードの質が悪い」「営業が弱い」など"定性的な理由"を元にした要因の他責が横行していました。
ただ、これらの他責は核心をついていることが多かったです。
このような状況の時、重要なのは「どこを、定量的にどれくらい改善すれば*売上達成の確率が上がるのか?」、改善すべき要因=変数を特定することではないでしょうか。
※注意:本稿では売上を新規受注売上と定義。既存顧客における契約更新やアップセル等は売上に含まない。
高度な数学をマーケティングに取り組み、USJをV字回復させたマーケター森岡毅氏は著書でこのように述べています。
つまり「どの数値を改善すればいいのか?」を把握することで、健全な議論ができ、結果的に売上増加の確率が上がると考えています。
例:リードの質が悪い
例えば「リードの質が悪い」と営業が言えば、マーケは「初回商談の質が低いのでは?」と言い返し、不仲が続く。
これでは収集がつかないので、数値ベースで話すと…
「リードの質が悪い」ではなく「MQL化率が昨年より10%下がってきている。そのため、SQLの減少、ひいては案件化数の減少に繋がっている。MQL化率向上の改善案は?」と議論が展開できる。
例:初回商談の質が低いのでは?
また「初回商談の質が低いのでは?」ではなく「MQL化率は昨対比で5%向上、これに応じてSQLも増えている。しかし案件化率は減少。初回商談方法を改善した方がいいのでは?」と、展開されるかもしれない。
どちらの議論も数字があるからこそできる。
数字がないと「それはあなたの仮説でしょ?」といつまでたっても定性理由の押し合いが終わらない。
後述しますが、決して悪者探しをすることが目的ではありません。
目的は「どこを、定量的にどれくらい改善すれば売上達成の確率が上がるのか?」、改善すべき要因=変数を特定することです。
数式の作り方
作り方は簡単。
下記の要素を、上記の画像みたくスプレッドシートやBIに記載していくだけです。
目標売上または目標粗利額 = ゴール
契約数(受注数)
平均商品単価
案件化数
受注率
有効アポイント数
有効アポイントからの案件化率
SQL数
有効アポイント化率
MQL数
SQL化率
リード数
MQL化率
後述しますが、各要素の定義はビジネスモデルや商材によって変わります。まずは各要素の数値を、今、パッと入れてみてほしいです。
おそらく、あなただけでは埋まりきらないでしょう。(もし埋まったらこの先読む必要ないです!素晴らしい管理体制です。)
私は3社のBtoB企業で数値入力を実施しましたが、パッと記入できた企業はありませんでした。
理由は、下記のようなケースです。
マーケと営業で数値を共有できていないため、他者に聞かないといけない
MQLの定義がない or 曖昧
CRMが活用できていない
特に1点目はあるあるです。
BtoBマーケターのみなさんは、今、パッと各営業の目標金額を言えますか?
一方、営業のみなさんは、マーケの目標MQLリード数を、今、パッと言えますか?
実際、私も営業を経験した時に「マーケだった際、各営業の目標金額まで把握できていなかった…」と反省しました。
この数式を誰でも1クリックでいつでも見れる状態を作ることで、売上達成確率向上に向けてどこに課題があるのかパッとわかります。
数式の注意点3つ
数式はどのBtoB企業でも活用できると考えています。
ただ、下記3つの注意点があります。
1.ビジネスモデルや商材によって数式の調整が必要
例えば、リードタイムが1年以上の商材を扱っていた時、下記のように数式を「マーケが見る1年間用」と「営業が見る定期接点用」でわけました。
リードタイムが長いとインサイドセールスではなく、新規営業が定期接点アポイントを取り続けるパターンがあります。
この時、一度訪問した顧客は営業で管理するため、営業の再訪問を始点とした別数式を用意。
他にも単価数億円、リードタイム2年以上のBtoB商材ならば、SQLの部分で数値項目を切り分けて管理した方がいいかもしれません。
2.MQLの定義は各社で変わる
マルケトではMQLを下記のように定義しています。
「温度の高い見込み客」をどのように定義するかが、非常に難しい。
ホワイトペーパーをダウンロード
料金ページをクリック
定期的にセミナー参加
どれも、温度が高いと言えるかもしれません。
ここでポイントとなるのが地道な計測とインサイドセールス。
まず「温度が高いと思われるMQLリスト群」を用意。このリストにインサイドセールスがコール、ヒアリングすることによって顧客の温度を測ります。
例えば、下記のようなリストを用意。
資料請求
ホワイトペーパーダウンロード
リサイクルリードへのシナリオメール
サイトへの再訪
セミナー参加者
etc
そして、リスト毎に下記の項目を観測。
MQL数=コミュケーション対象者数
アプローチ数(架電 or メール)
架電不通数
架電通電数
メールレスポンス数
SQL数
有効アポイント数
案件化数
受注数
受注金額
MQLに対するアポイント率
架電に対する不通数
通電に対するアポイント率
有効アポイント率
アポイントに対する案件化率
有効アポイントに対する案件化率
アポイントに対する受注率
有効アポイントに対する受注率
案件化に対する受注率
例えば、3つのMQL A~Cを定義します。
A:資料請求
B:リサイクルリード
C:セミナー参加者
これらをインサイドセールスと運用した結果が下記。
この場合、例えば下記のような解釈ができます。
資料請求はアポになりやすいが、MQLが少ない
リサイクルリードはアポ率が低いものの、平均受注金額が高い
セミナー参加者はMQL数こそ多いものの、単価と受注率が低い
この時「セミナー参加者は、一度ナーチャリングしてから営業に渡した方がが単価も受注率も上がり、効率よくトップラインを伸ばせるのでは?」のような仮説が生まれます。
故にMQLの定義を「ナーチャリングし、一定の反応があったリサイクルリード」と、定義した方がいいかもしれません。
地道ですがこのような数値分析を繰り返すことで、どのMQLリストが有益かを分析できます。
ちなみに私の場合、特に効果の高かったMQLは1週間以内に複数のメールを送り「開封数 x ユニーククリック数 = X」のXが高いほど有効アポイント数や受注に繋がりやすかったです。
MQLの定義:Xが高い
例えば1週間以内に4通メールを送り、下記のような結果が出たとします。
A:4/4開封 x 4クリック = 16pt
B:4/4開封 x 1クリック = 4pt
C:2/4開封 x 2クリック = 4pt
Aにコールすると「実はお問い合わせしようと思っていました」など、ポジティブな反応が多かったです。
おもしろいのがBとC。
Bはコールすると「御社に興味ないです」ということが多く、同点ですがCは「少し気になってました」という反応がありました。
定量データを使った分析を繰り返すことで、MQL定義の精度を上げていくことができます。
MQLの定義は各社によって変わります。上記の例が正しいとも限りません。
基本的なことですが、仮説を立て、数字で検証し、再び仮説を立てる…これを根気強く続けることが、MQLを定義していく上で重要です。
3.悪者探しはしない(が、事実は伝える)
要は、コミュケーションが大事、という話です。
数字は便利ですが、伝え方を間違えると大事故になります。
例えば「MQL数は順調なのにSQL化率が低い。インサイドセールスが悪い!しっかりして!」と言って動くインサイドセールスはいないでしょう。
ただSQL化率が低いという事実は伝えなければいけません。
私は1社目入社当初、社内コミュケーションがうまいとは言えませんでした。
合理主義者なので、ロジックで物事を解決しようとする傾向が強い人間です。
参考ですが、私の場合コミュケーションを円滑にするために下記に取り組んできました。
美味しい食事を共にする
一つ目の診断は自身だけでなく、関与するメンバー全員のタイプを知っておくといいでしょう。
私はドライバーのためエクスプレッシブ、またエミアブルの方と話す時は理責めしないよう気をつけています。
また「EQ 2.0」も便利な書籍です。コミュケーションのHow toが多く記載されています。
そして、なんと言っても「美味しい食事」は人間関係構築で非常に役立つなと思います。
数字の事実としてどこに課題があるのか特定し、伝えることは必須です。
ただ伝え方を間違えると、関係値が悪化し、むしろ数字がさらに悪くなることもありえます。ご注意ください。
数式事例
本稿の数式は私とShogoのオリジナルです。
森岡毅氏の売上予測モデルを参考にしつつ、インサイドセールスのShogoと一緒に作りました。
他にも、BtoBマーケティングを専門とされている企業さんの素晴らしい数式事例があります。
才流
才流さんの数式構造はシンプルかつ「どの指標から改善すべきか?」と、対応策まで詳しく記載されています。
他にも、細かくKPIを管理する事例記事もおすすめです。
basic
ferret Oneさんでは、リード獲得部分のKPIを細かく管理できる表を公開しています。
私自身、集客時のKPI設計や管理は才流さんやbasicさんの情報をよく参考にしています。
数値向上に必要な戦略を作る
数値が整理できたら、次は数値向上していくための戦略を策定していかなければなりません。
ただ、このBtoBマーケティング戦略構築が非常に難しい。なぜなら、国内では情報や事例が少ないためです。
私はよく英語でアメリカの情報を探っていました。しかしローカライズする必要があるので、それがまた大変。
BtoCマーケティングの事例は色々あるので、これらを参考にするものの、やはりtoBとtoCでは特徴が異なります。
そんな中、国内においては才流 栗原さん、ユーザベース 酒居さんの情報を参考にしていました。
今なお、参考にしている情報は下記です。書籍は有料ですが、それ以外は無償で閲覧可。素敵な時代ですね。
手前味噌ですが、私は栗原さんや酒居さんの手法を応用しつつ、下記のやり方で戦略/戦術策定を行なっています。
目的、Who、What、反証、Howのステップで整理し、戦略資料を策定し、言語化しています。
まとめ
数式の目的は、改善すべき変数の特定
数式の項目を、今、パッと埋めてみる
埋まらなかった項目を、関係者と一緒に埋める
ビジネスモデルや商材で数式を調整する
MQLの定義は仮説→実証→分析→仮説を繰り返し、調整
数字を伝える時はコミュケーションに気をつける
色々な数式事例を応用する
数値向上に向けた戦略を作る
本稿がBtoBマーケター、インサイドセールス、そしてマーケと営業の不仲に困っている方々にとって参考になると幸いです。
私について
私は現在フリーのマーケターとしてBtoC老舗メーカー、BtoB再生可能エネルギー事業のお手伝いをしています。
これまでの経歴は下記です。
1社目:ITベンチャー(デジタルマーケティング支援 & 海外SaaS販売)
4度、社内異動しました。
エンプラBtoC デジタルマーケティング支援 & 海外SaaS自社メディア運用
SaaSを活用したデジタルマーケコンサルティング& 海外SaaS自社メディア運用
BtoB SaaSマーケティング
SaaS カスタマーサクセス
↓
1社目退職
↓
無職
↓
2社目:外資SaaS新規営業
&
個人事業主としてBtoC革メーカーの支援開始
↓
2社目退職
↓
個人事業主のみ
これからはマーケティングの支援をしつつ、ポッドキャストに注力したいと考えています。
世界中のIT情報を毎日サクッと5~6分で楽しく聞ける番組をやっています。ぜひ、聞いてみてください。
さらに、Oculus Quest2を活用したメタバースメディア…のようなことができないかと色々探っています。
Twitterもぜひ相互フォローできますと幸いです。記事をご覧頂き、ありがとうございました。