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[61] モノローグ

いつのまにか 好いていた
川沿いの
花上ひらひら蝶々の日
水上すいすいアメンボの日
あんなに汗水垂らして働いたのに
かなしいかな
未練を感じることができないんだ

いつのまにか 好いていた
川沿いの
木々から声降りしきる蝉の日
追いかけっこしている鳩の日
どんなにこき使われても恨まなかったのに
かなしいかな
未練を感じることができないんだ

いつのまにか 好いていた
川沿いの
まっかに鮮やかな彼岸花の日
ももいろ可憐な河原撫子の日
もくもくまじめに励めていたのに
かなしいかな
未練を感じることができないんだ

冬枯れの
さびしい風景に
お辞儀する枯れ草 愛おしく
ご挨拶してやっと
こみあげてくる
別れの悔しさ無念さ
この土地に根づかせていた愛着と
きみたちのなぐさめ失うことが
なによりも
心苦しく 切ないんだ


※幻想宇宙でうたう星々
(耳をすませば星の声 前編)

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牙皎耀介
お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。