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[68] 彼方の優等生

ちいさな手が受け取る通知表
ちいさな瞳が満足する好成績
いつのまにか失った
先生の褒め言葉と
友人の賛称や羨望
いつのまにか固定された
優秀な善人という
ヒーローショーのコスチュームのような
偽り

秀でたいあまり
悟られまいと背伸び
見破られ
遅れを取り
破砕される矜持
できそこないと気づかされたとき
どれほど
頭の良し悪しを恨んだことだろう
教材を開けば
惑星たちの自転公転は
まるで模範の優等生
特進クラスのデキる者たちだ
彼らの継続に比べれば
まったくもって砂塵の
ちっぽけすぎる ひそかな努力

紛いの優秀と装いの善人
とっくにまるめて 投げ捨てたのに
名残惜しそうに 踏んづけたりして
幻影に捉われてしまう
そんなさびしい宵がある
できることなら打ち明けたい
魅惑的な
ピカソのアルルカンに

幸運は あなたに出会えたことだ
深い宵闇で
あなたが染みこんでこなかったら
荒涼な心の寂寥に
打ち克つすべは
ついぞ
得られなかったであろう


※幻想宇宙でうたう星々
(耳をすませば星の声 前編)

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牙皎耀介
お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。