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【詩】 あきのいろ

いつもと変わらない
線香の いやなにおいが
立ちこめています
かなしみ実った秋の記憶が舞いもどり
私をゆさぶります
とめどなくあふれた涙は
ながれ 消えても
きざまれているのでしょう

冷静に
考えを巡らせていると
私のこころは
色づく紅葉のごとく
あかあかと 火照りはじめ
ふしぎと
意欲が満ちてくるのです

あなたが愛するものと
もっと真剣に向きあいなさい
あなた自身のよわよわしい命と
もっと真剣に向きあいなさい

それは落ちぶれようと
再生過程をつづける者に与えられる
季節限定のギフトであるかのように

聞こえてくるのです
秋の色彩の
真摯な声が
奥深くまっすぐに

No.110

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牙皎耀介
お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。