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【詩】 なつのいろ

嘘か本当か 定かでない
大事な用事があるからと
手を振り駆け去る友とわかれ
立派な家屋が建つ以前の
夏草生い茂る
空き地の入り口へといざなわれ
踏み入る運動靴の
よごれた靴ひもはちぎれ

風にそよぐ のっぽの雑草
汗ばむ体の不快感も忘れ
ショウリョウバッタの脚を毟り取っていた
きみどりの記憶

成長した少年の気難しさに
近しい人が遠ざかる
耐え難い人間の嫌らしさに
近しい人を突き放す
予期せぬ軋轢に 翻弄された年月
ひとりぼっちを埋めるもの
どんどん吸収できても
克服までには 至らぬまま

風にそよぐ のっぽの雑草
汗ばむ体の不快感も忘れ
カマキリの威嚇を嘲笑っていた
きみどりの記憶

さびしさの原風景
ある夕刻の回想

No.100

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。