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批評:NETFLIX 、『あるアスリートの告発』、2020年


本作は、『シモーネ・バイルズ』(NETFLIX、2024年)で触れられている米国体操連盟の医師による性的暴行事件を取り上げた犯罪ノンフィクションである。

以下、観ようと思われる方に注意しておきたい。本作では、「性的暴行行為」が露骨にインタビューで語られるので、「性的暴行」を受けられた経験がある方、また、そのような言葉に嫌悪感を抱く方は、本作を観ない方がいい。

また、私は男性であり、「性被害」にあったことがない。「性被害」については、「報道」で知る限りである。また、それを告発することの困難さは「ジャニーズ問題」で知った限りである。

以上の理由により、この批評では「性的暴行事件」には、触れないようにする。

本作では、主に三つのことが取り上げられている。
① ラリー・ナサール医師の性的暴行事件
② 体操女子選手の低年齢の問題
③ 米国体操連盟の腐敗

①はここでは、取り上げない。

② 体操女子選手の低年齢の問題
米国女子体操が、メダルを量産するきっかけとなったのは、かの有名な「ナディア・コマネチ」を育成した夫婦のルーマニア人コーチを雇ってからである。彼らが、この事件が発覚するまで、30年以上に渡って米国女子体操界に君臨してきた。

ナディア・コマネチが、五輪で金メダルを取ったのが14歳のときである。この成功が、ルーマニア人コーチをアメリカに導くきっかけとなった。彼らの理想は「コマネチ」であり、コーチング・スタイルは、低年齢の少女を集めて、「しごく」という形になった。

これが成功を収めたので、この指導法は米国の体操界を長年に渡って支配することになる。なぜなら、自らの体操教室からオリンピアンを輩出しようと思うなら、ナショナル・チームのコーチの目にかなう選手を育成しなければならないからだ。

③ 米国体操連盟の腐敗
②の低年齢下により、女子体操はイメージ・アップした。次々とビッグスポンサーが付くようになった。例えば、コカ・コーラやポテト・チップスのメーカー等。

この過程で、女子体操連盟の中で力を伸ばしてきたのが、マーケティングの専門家である。彼は、1998年から、会長職に就いた。彼が、どれほど体操競技の育成、強化等に関わっていたかは、本作では描かれていないが、コーチに丸投げだったことは窺える。

ここに、すべての体制が完成するのである。

そもそも、IOC憲章によって、各国のオリンピック連盟はIOCが認める1つだけとされている。また、オリンピックに参加する世界競技連盟1つと決められている。

そして、選手はオリンピックに出るためには、自国のオリンピック連盟から推薦され、IOCに承認されなければならない。

このことから分かるように、選手は、オリンピックに出るためには一つの道しかない。そう、上で述べたルーマニア人コーチに認められるしかないのである。

そのような視点から本作を観ると、構造が分かりやすくなると思う。

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