![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/154255295/rectangle_large_type_2_599ffe8f1a2dc7d16af3d08f20a94832.png?width=1200)
マン・シティー「降格」の危機①訂正版ーリーグが訴えている内容は?そして、その波紋は?プレミアリーグ対マンチェスター・シティー序章
(様々な記事、文献を読んでいるとこれはかなり根が深い問題であると感じた。最も古い案件は2009年である。EPL側の主張が正しければ、シティーの近年の成功は違法行為の上に築かれていったことになる。この間に、シティーは数々のタイトルを取っているので、その不正行為の被害にあったと思うクラブはかなりの数になるだろう。)訂正版では、今、分かる範囲の間違いを簡単に訂正する。この問題は、かなり大きな話なので連載として、記事を書こうと思っている。
いよいよ、来週の月曜日より重要なプレミアリーグ対マン・シティーの審理が始まるようだ。これは裁判所への訴えではなく、公聴会での審理である。そのため、審理は迅速に進められ、予定では9月中に10週間ほど審判が下る。
(私は、プレミアリーグの財務規則、イングランドの法律に通じていないため、報道のみでこの記事を書いている。間違いがあることを念頭においてほしい)
審理は115件に及ぶ。プレミアリーグ(以下、PLと略す)の主張が通れば、審判は、かなり大きなポイントの剥奪か、重ければ「降格」も予想されている。この公聴会は「処分」に関して、独自の裁量権を持ち、罰金から勝点剥奪、降格まで組み合わせることができる。
また、この件とは、別にシティーがプレミアリーグ訴えている裁判がある。これについては、別のクラブ(エヴァートン等)に対しての公聴会が開かれ、クラブに有利な審判が下された。これは、"APT(Asociated Party Transaction)"という新しいルールについて訴えている。詳細は、次の記事に書く。
PLには"Profitability and Sustainability Rules (PSR)"というルールがあり、シティー関連で言うと、スポンサー料の適正性が問題となる(例えばエティハド航空。)ざっくり言うと、スポンサー料はマーケット価値に見合ったものでなければならない。つまり、オーナーによる実質的な損失補填を認めないというものである。これを厳格化したものがAPTである。
これに対して、先日あったエヴァートンの公聴会では、このPSR は法律用語であるが「曖昧なゆえ無効」(いわゆる罪刑法定主義)とされた。このルールは、再びPLのクラブサミットで書き直されることになった。115件の内、多くのものがこのPSR 関連のものだと、報道されている。実質的に争われる件数は、少ないと思われる。
また、シティーは裁判では、「契約の自由」を主張しているようだ。当然ながら、契約当事者間は公序良俗に反しない限り、どのような契約を結ぼうと自由であろう。ここで、争われるのは、この「公序良俗」であろう。PSR は、文字通りProfitability and Sustainabilityを目指す、ルールである。このPSRの「Sustainability(持続可能性)」ということの解釈が問題となる。また、「多数者の先制」を主張している。他のクラブが手を組み、シティを「差別」しているとの主張である。つまり、「シティー以外のクラブがカルテルを組み、自由競争を阻害している」という主張である。
さて、115件の一部であるが、我々にも分かるものを取り上げると、
① ヤヤ・トゥーレの肖像権料
②ロベルト・マンチーニの契約
③UAE企業とのスポンサー契約
である。
まず、大前提として、クラブは毎年適正な財務諸表の提出、選手・監督の報酬に関する詳細を書いた書類の提出が義務付けられている。選手・監督の報酬は、現金・現物を問わずあらゆる利益を記載しなければならない。
①ヤヤ・トゥーレの肖像権料
スポーツ選手は自らの肖像権をクラブに売っている。そして、これをクラブが「ゲーム会社」等に売り収益を上げている。また、選手は自らの「個人スポンサー(ナイキ、アディダス等)」には、直接契約し肖像権を売っている(CM等で所属チームのユニフォームを着ていないことからも分かる。)
トゥーレの問題は、肖像権料をシティではなく、シティを保有する持株会社アブダビ・ユナイテッド・グループが払っていたことである。PLの規則では、「選手の肖像権料は、契約書に書かなければならない」とあり、「選手の報酬」は上記のように、書類を提出しなければならないとされている。
これを提出していなかったのである。シティの抗弁としては、トゥーレと「個人スポンサーの契約」との契約であり、自らの預かり知らない契約である、と主張するであろう。問題は、その額であろう。複数年で800万ユーロ(当時、約10億円)である。持株会社アブダビ・ユナイテッド・グループに広告宣伝費が必要か、というのがPL側の主張となるであろう。
②マンチーニの契約
マンチーニはUAEのクラブ、アル・ジャジーラとコンサルタント契約を結んでいたようだ。その内容は、年4日間、同クラブでコーチングすること。報酬として年間約200万ユーロ(当時、約2.5億円)得ていた。もちろん、シティからも報酬をもらっていた。
お金の流れがここでは問題となっている。シティがアブダビ・ユナイテッド・グループ(ADUG)に同額を支払い、ADUGがアル・ジャジーラに支払い、アル・ジャジーラがマンチーニの資産管理会社に年間約200万ユーロを支払っていた。
ここでも、そのお金の実質性が争われると思われる。
③スポンサー契約
ここでは、1つはUAEの通信会社エティサラートとの取引、もう1つは航空会社エティハドとの取引が問題となっている(エティサラートの方は複雑すぎて分からなかったので、詳細は分かったら書こうと思う。)
ここでは、上記の"Profitability and Sustainability Rules (PSR)"が問題となる。
PSRの合法性は別として、シティとエティハド航空は2012-13年に3,500万ポンド、2013-14年に6,500万ポンド、2015-16シーズンに年6,750万ポンド相当のスポンサー契約を結んだとされている。
しかし、この内、エティハド航空が支払ったのは800万ポンドで、残り約95%は、オーナーであるアブダビ・ユナイテッド・グループ(ADUG)が支払ったものであるとされている。
これは、明らかにPSRが規制したいことである。
以上が、目に付く争点である。ただし、上述したように、PSRの合法性が問われる中での公聴会である。最もプレミアリーグが問いたかった、シティのPSR 違反を審判に持っていけないとなると、シティの受ける罰は、意外と軽くなるかもしれない。
もっとも、プレミアリーグの規則には時効がない。すなわち、PSR がプレミアリーグのサミットで書き直されたら、再度、APTが発効するとシティは訴えられる可能性がある。(「一事不再理」という法原則に反するが。)
新しい規則に書き直すには、クラブの2/3の賛成が必要なようだ。別の規制強化の投票で、どのクラブが票を入れたかは定かではないが、6クラブが反対、2クラブが棄権、、12クラブが賛成したため、12/18となり、APTが可決される可能性が出てきた。
時効の問題が、UEFA対シティの「ファイナンシャル・フェア・プレー」係争で大きな問題となった。
公聴会は、来週の月曜日より始まるので、この件は都度アップデートして行きたい。