3DCGでカラー漫画を描いてみたので、その便利さと楽しさを伝えたい
ここ1ヶ月ほど、3DCGと漫画制作を行き来して、CGベースでカラー漫画を描くチャレンジをしてみました。
ページ数は1話4ページ程と少なくてちょっと恥ずかしいですが、試しに数話作ってみたところです。(作り方に慣れたら、真面目な大人向け漫画を作りたい。。)
きっと今後は、3DCGを駆使して漫画を描く人が増えていくと思うので、自分が試してみて得た知見や感想をここに残しておきます。
漫画はカラーが主流になる?
本題の前に、漫画は本来、「白黒」より「カラー」が求められるはず、という話を。
※なお、自分は白黒漫画も心から大好きであり、決して白黒を否定しているわけではありません。
今は、日本の漫画といえば白黒のイメージがあります。特に色がなくても、読むのに不自由していません。
むしろ、カラーより白黒の方が、読み手に想像の余地があって面白い気さえします。
でも冷静に考えると、白黒って不自然です。そもそも現実世界には色があるので、カラーの方が感覚的には自然。
極端な話、漫画を知らない人が初めて読むなら、間違いなくカラーの方が読みやすいでしょう。白黒で見慣れた漫画も、意外とカラーの方が見やすいこともあります。
「白黒の方が、想像の余地がある」というのも、「漫画より小説の方が、想像の余地がある」というのと同じようなもので、最終的に多くの人は「自分で考えること」より「わかりやすいこと」を求めがち。
それでも今、日本に白黒漫画が多い大きな要因は、白黒の方が早く安く提供できること。
つまり、色を付けたところで、そこにかけた時間的&金銭的なコストが、それ以上の価値を生まない。だから白黒の漫画が増え、読者もそれに慣れてしまっている。
逆に言うと、カラーで提供するコストが下がれば、カラーが主流になるだろうと。今は雑誌ではなくスマホで読めるので、印刷代より大きな壁は制作時に色を付けるコスト。
そして今回、漫画制作を試してみて、3DCGを使うことが、その制作コストの突破口になるかも?と感じました。
3DCGでカラー漫画を描いてみる
では、3DCGでカラー漫画をどう描いたのかを簡単に書いてみます。具体的な手順を書くと長くなるので、概要レベルですが。。
輪郭線だけでなく、色や影も出力できる
以前に3DCGで漫画の輪郭線を描くことにチャレンジしたときは、色も影も付けていませんでした。
でも実際は、3Dのオブジェクトには色を付けることができ、さらに影をつけた状態で画像として出力できます。
試しに色付きお姉さん3Dモデルに、Blender(3DCGソフト)でポーズをつけて配置してみます。適当に背景も付けて、光は右上から当てます。
画像出力すると、下のようなイラストができました。しっかり色ついてる!めちゃ便利!(ちなみに背景が不要な場合、透過でも出力できます)
あとはCLIP STUDIO PAINTなどの漫画作成ソフトで吹き出しを追加すれば、それなりに漫画らしくなります。必要に応じて色を足したり、線の修正(後述)なども行います。
これでカラー漫画の1コマができました。
手書き感をガッツリ出したいときは、ここから手動で修正することになりますが、それでも最初から手で描くよりは相当な効率アップになると思います。
「3Dっぽさ」は消す必要あり
よくある問題として、単純に3Dモデルを画像出力すると、こんな風に影がリアルになってしまいがちです。
これは、漫画としてなんか気持ち悪いので、多少の色(Blenderではマテリアル)の設定が必要になります。
「セルルック」とか「トゥーンシェーダー」といった単語で調べれば、方法はたくさん出てきます。(アニメ調の表現なので、漫画として見ると微妙なところはありますが)
頑張れば、アニメーションやエフェクトも実現できるみたいです。凄い。。
色と線は干渉せずに編集できる
色と線は、別々で出力すれば、別々のレイヤーで管理できます。先程の線画も、このような個別のベクター線になっています。
色の話からは逸れますが、ベクター線は、線幅の補正、変形、描き直しなどが簡単で便利なので、これから漫画を描く人は覚えたほうが良さげ。
作り方については以上です。
漫画を描くの、本当に楽しい
3DCGをよく知ってる人から見れば、拙い内容だったと思います。漫画としては味気ない絵に見える部分もあります。でも組み合わせて使えば便利になることを伝えたく、こうして書いてみました。
そして何より、自分のように、3DCGも漫画も趣味程度の人間でも、こうして漫画というエンタメコンテンツを楽しく作れるって、凄い幸せなことだと思うんです。
今回のチャレンジで3つほど面白かった点を書くと…
素人の漫画でも、読んでもらえる
今回、「ジャンプルーキー」という漫画投稿サービスに投稿してみたんですが、こんな素人の短い漫画であっても、読んでもらえるんです。
ほんの数ページの短い漫画で、フォロワーもいないのに、1話目からそこそこ読んでもらえたり、コメントが付いたり。うまく調整されているんだと思います。
漫画の作り手側の思考を味わえる
ストーリーはもちろん、コマ割りや構成を考える面白さがあります。これは以前のnoteでも書きました。
さらにカラー漫画では、白黒漫画では考える必要のなかった「色」の使い方がポイントになってくることに気づいて、面白かったです。色の使い方一つで、印象が全然変わってくるので。
最近読んだ『ゼロから生み出すキャラクターデザインと表現のコツ』では色の演出について書かれていて、色の使い方の面白さを感じました。もしカラー漫画が主流になれば、色に関わるスキルや才能を持つ人が活躍することもありそう。
徹底的な効率化への挑戦
効率化できそうな部分を潰していくのも面白かったです。3Dモデルで言えば、VRoidで作ったり、無料モデルを使用させていただいたり、モデルのポーズを他モデルで流用したり、カメラやボーンの設定をプログラムで書いたり。この方のツイートを思い出しました。
誰かが効率化できる部分は、そのうち一般化して誰でもできるようになり、そして誰もが素早く漫画を描けるようになると思います。それが、日本のカラー漫画時代の幕開けに繋がるのかもしれません。しらんけど。
手書き・手塗りにしかない味を忘れずに
3DCGを使って漫画を描くのはまだ少し敷居が高いのを感じますが、たまに使われている方のツイートもたまに見かけますし、どんどん増えていくと思います。
また、漫画に限らず、テクノロジーを用いたイラスト自動作成技術などは、驚くほどに進歩しており、よく話題になっています。
こうしてテクノロジーが進歩した結果、多くのクリエイターが、より素敵な作品をよりたくさん生み出していくと思います。
ただ、プログラムでは表現できない、手書き・手塗りでしか出せない味は必ずあるでしょう。
最終的には、それがその人の一番の武器になると思います。システムだけを使いこなす人には到達できない壁がきっとある。
「AI」とか「自動化」とか聞くと、つい全自動を目指したくなりますが、それは逆に遠回りだったりします。
自動化できるところを自動化し、そこで生まれた時間で、それ以外の「自分が魅せたい部分」に注力するのが、意味のある効率化。これは漫画に限らずそうだと思います。
テクノロジーに溺れずに、自分のできることを増やしつつ、楽しみながらこれからも創作していきたいです。
補足
サンプルCGのお姉さんは、VRoidで作成しました。人型モデルを早く作る上で欠かせない神ソフトです。
顔も体型も自由自在ですし、パラメータ設定を変えるだけで、多彩な表情まで実現できます。ほんと凄い。。
Blenderへのインポートはこの辺を参考に。
背景の草原は、こちらを参考にしています。
ベンチはちびさんのこちらを使わせていただきました。
Blenderで輪郭線を出す方法はいくつかあるのですが、今はFreeStyleという手法でやっています。
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