○○点取るみたいな目標は、実際その点数を取るために必要な過程を何一つ教えてくれない(TOEIC600点台から一気に800点超えたときの話)
大学を出て最初に受けたTOEICの点数は、確か、650点くらいだったと思います。それから何度受けても点数は変わらず、逆に下がるときもあるくらいで、面白くなくなって、試験勉強からはすぐに遠ざかっていました。
転機は、たまたま図書館で読んだ英字新聞Japan Timesの日本のニュース記事が、すごく丁寧で分かりやすいことに気付いたことです。
Japan Timesは、日本の事情をあまり知らない日本在住の英語話者を想定して書かれているため、どんな小さな記事でも、日本の新聞やテレビ報道では当たり前過ぎて触れもしないようなニュースの背景や関連する統計数字が、記事の終わりに簡潔にまとめられています。就活に失敗して世の中のこともろくに知らず、疎外感いっぱいだった自分にこんなに寄り添ってくれるメディアがあるんだと、泣きそうになるくらい感動して(いや、実際泣いた気がする・・)、
「Japan Timesを辞書なしで、日本語と同じくらい楽に読めるようになる!」
というのが、一気に当時の僕の最優先課題になりました。
そのときの僕は、中学、高校の文法事項はだいたい理解できていました。知っている単語も、高校受験を終えた平均的な大学生よりは多い方だったと思います。大学でも、こまめに英英辞書を引くなど、自分なりに英語の学習は続けているつもりでした。
それでも、英字新聞の単語の難しさは、大学受験英語に比べれば異次元でした。そして、もう一つ困ったのは、単語を全部調べた後でも、文章を読むと全部分かった気になれないことです。7, 8割しか分からず、残り2, 3割がいつも不明瞭ですっきりしないように思える、という問題でした。
aとかtheといった冠詞が付いたときのニュアンスの違いとか、時制とか、数とか、英文法を学んだからには絶対理解できているはずの超基礎的文法事項が、実際英文を読むとなるとすぐに抜ける。
また、3行くらい読んだときに、それより前に読んだことが、頭に残っていないということも重大な問題だと気付きました。
アホみたいな話ですが、Japan Timesに「愛」を感じるようになっていた僕は、「彼女」を100%、丸ごと、全部理解したいと、本気で思っていました。記事の言葉が自分の血肉となって入ってくる読書体験を得るために必要なことは何でもしようと思いました。
1つ目に取り組んだのは、3行前の単語や文章を忘れる問題です。初めて見た意味の分からない単語を、意味が分からないままでも確実に記憶に残すにはどうすれば良いか。これまで学んだ受験英語を思い出したり、日本語の漢字ならどうかと(=部首などの構成要素に分けて考える)、自分の経験から洗い出したりすると、すぐに何をすべきか答えが見つかりました。
まず、辞書の見出しを参考に、単語は音節で分け、アクセントの位置を確認し、音節ごとに発音を確認する。例えば、[]内が強く発音する箇所とすると、
contain => con-[tain]
historic => his-[tor]-ic
garbage => [gar]-bage
のように分け、発音は、
カン-[テイン]
ヒス-[トーァ]-イク
[ガー]-ビジ
であることを確認する。こうして目にした単語を片っ端からconとかtorとかbageといった音節に分けて、アクセントの位置と発音を確認する作業を何百個もしているとすぐに、知らない単語でも綴りとアクセントを見れば発音が分かるようになりました。
そして、字面を追うだけで、勝手に頭の中に音が響いて、3行より前に見た単語も確実に記憶に残るようになりました。
2つ目は、時制や数のような、日本語にない文法事項が、英文を読むときにいつでも、必ず頭に浮かぶようにしたことです。
数なら単数形の単語の下に「・」、複数形の単語の下に「∵」のように、時制なら、
過去完了
過去
現在完了
現在
未来
仮定の内容で時制が
過去
現在
未来
それぞれに自分で考えたアラビア文字っぽい記号を書き込んで、英文中の動作の表現を見ると必ず上のどれかの時間が一つ決まるということを、頭と体に叩き込んで行きました。
時制というのは本当に侮れないです。英文で動詞が用いられている場合、そのほぼすべてで、上記7くらい(※進行形も入れたらもう少しあるかも・・)の時間のうちどれか一つの意味が含まれています。このこと、つまりどんな小さな英文にも必ず、いつも時間が踏まえられているという事実を忘れると、しばしば文章の意味がふわーっと曖昧になって伝達力を失います。
数や時制の概念をおろそかにして、何十ページもある英文を読むというのはほぼ不可能だと思います。
このようにして、辞書さえ見れば、文の意味も分かり、1度調べた単語は、2度目、3度目になると確実に記憶に残るようになりました。半年くらいこういった作業をしつつ分かる単語を増やしていくうちに、すぐに、英字新聞を日本語と同じくらい楽に読めるようになるという目標は達成できました。
TOEICの点数も、800点を超え、リーディングは9割5分とれるようになりました。
つまり、TOEICの点数を上げることを目標にしないようになってすぐに、TOEICの点数が爆上がりしたことになります。
○○点取るみたいな目標は、実際その点数を取るために必要な過程を何一つ教えてくれない、ということだと僕は思っています。今、僕は、司法試験の勉強をしていますが、仮に、
「合格者の平均点は□□点だからそれ以上取れるようになる!」
という目標を立てたところで、その目標は今、僕が何をするべきかについて何も教えてくれないだろうと思っています。
僕が自分の欲しかった英語力を身に付けるに至れたような有効な「目標」が、法律学習においても見いだせるはずだと思ってはいるのですが、その答えはまだ見つかっていません。でも、案外すぐに見つかるんじゃないかなという気はしています。