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☑️ 欲本 #1 『半島へ』稲葉真弓 講談社文芸文庫|欲本日記

1冊目の欲本は、『半島へ』という小説である。

この本がほしい理由は、表紙が美しい、である。空とも海ともとれそうな青の背景に、金色っぽく箔押し印刷されたタイトル。このコンビネーションによって、人生で初めて本を"ジャケ買い"しそうである。

また、この本が講談社文芸文庫であるという点もほしいポイントのひとつである。この文庫シリーズはとても高い。文庫なのに3千円オーバーは珍しくない。

値段でいうと、新潮文庫はリーズナブルな印象である。新書も含めて千円を超える本は増えてきているなか、新潮文庫は薄めの本であれば千円を下回ることがある。

講談社文芸文庫が高い理由には、絶版になった純文学を扱っているという点があるそうである。絶版だったものを文庫として復刊して、またそれが絶版(品切れ)になるという事態もあるようである。『お供え』がその一例かもしれない。

このお高い文庫を初めて知ったときは、世界が広がった気がした。ちくま、ちくま学芸、角川ソフィア、河出、新潮、早川など、さまざまな文庫シリーズがあるが、講談社文芸は「まじか。たけえ」の一言であった。

以前神保町を散策したときに買った『月の宴』『懐中時計』が最初に買ったものである。あれから数ヶ月たち、『静かな生活』『人類が永遠に続くのではないとしたら』が加わっている。

『半島へ』は240ページの本で、定価は1980円である。1cmもない厚さだった気がするから、これが新潮文庫であれば値段は千円ちょっとかもしれない。しかし講談社文芸だ、2千円近いのである。

その春、「私」は半島に来た。森と海のそば、美しい「休暇」を過ごすつもりで――。たったひとりで、もう一度、人生を始めるために――。川端賞受賞の名作「海松(みる)」を超えた、究極の「半島小説」

顔を上げると、樹間で朝を待つものたちの気配がした。たぶんメジロやウグイス。どこに巣があるのかわからないが、葉擦れや枝のこすれとは違う音がする。寝覚めの脳に届いたのは身じろぎする鳥たちの気配だったのかもしれない。やがて、森のあちこちに青みを帯びた筋が差しこむ。樹間に広がる光の筋は、やがて明るい金色を帯びていった。途端に森の奥から、鳥の声がにぎやかに聞えてきた。なかに「リッカ、リッカ、ピイィ」と鳴く鳥がいる。そういえば、今日は立夏。東京から半島にきて、もう一ヵ月がたっていた。――<本文より>

講談社BOOK倶楽部の「内容紹介」より引用

そもそも「表紙が美しいから」ほしいのであるが、内容も興味をそそる。もともと小説はあまり読まない方であったのだけど、ここ最近読みたい欲が増してきている。

最近は、Youtubeチャンネル「アサヒ 音楽と文学は色ガラス」を寝る前によく観ている。このチャンネルを通じて、数々の読んでみたい海外文学に出会っている。『重力の虹』『青い脂』『ベル・ジャー』は読んでみたい。このチャンネルをきっかけに『ハイファに戻って/太陽の男たち』を買った。

そして、講談社文芸文庫についていえば、約6年かけてすべてを集めたという猛者「かるめら」さんである。

かるめらさんの影響もあり、講談社文芸文庫をちょっとずつ増やしていきたい欲が増している。『半島へ』のほかに『妻の温泉』もほしい。『お供え』もほしいが中古でなかなか高くなっている。

いままで本をジャケ買いしたことがない。その理由について考えてみると、いままでは人文やビジネス書などを読むことが多く、買うときは中身重視になっていたのではないかと思う。表紙デザインも買うかどうかに影響はするが、それは副次的要素で、メインは「内容がどうか」である。新書だったら表紙はみんな一緒だし。

ただ、小説の場合、どんな内容がそこに書いてあるのか、どんな世界が広がっているのかは、読んでからでないとわからなそうである。あらすじだったり、パラパラとめくったときの印象だったり、事前に吸収できることはあるにはあるが、小説はどちらかというと「開けてからのお楽しみ」感が強そうな印象である。だから、ジャケ買いが成立しやすいのかもしれない。

『半島へ』がほしい。表紙がうつくしい。

追記:2024年11月3日に確保

欲本日記とは
ほしい本についての記録である。主テーマは「ほしい本」だが、関係のない話題にとぶこともある。「欲本」と書いて「ほっぽん」と読む。どうやら造語らしい。

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江里 祥和
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