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いざという時焦らないための療養費の知識

【attention】この記事は医療事務を5年勤めた私が、自身の経験と知識をベースに高額療養費の利用方法をまとめたものです。正確な情報をお求めの方は然るべき公的機関の提供する資料をご確認ください!難しい資料読むの苦手!って人のとっかかりになりますように。

「高額療養費ってみんな知ってる?」と聞いてみた。

弱小アカウントのアンケートですが、ママ垢の子が手伝ってくれたりしてそれなりの数字になりました。

意外と使ったことある人いますね。ママさんは出産前にお世話になってる人とかもいるのかも…。わかってるから大丈夫!という人にも、全然なんのこっちゃという人にも、突然やってくる(かもしれない)大きな病・ケガに備えて高額療養費の知識をわかりやすくお伝えできればと思います。

ただちょっと張り切って書きすぎた…5000文字超えそうです。スマホで読んでくれる方すみません。ほんと、お時間あるときに読んでみてください!


そもそも高額療養費とは

読んで字のごとくではありますが「医療費(療養費)が高額になったときに、補助してくれる制度のことです。高額療養費制度といいます。日本は国民皆保険制度を取り入れているので医療費の自己負担は3割で済みますが、それでも高額になることはあります。いわゆる三大疾病(ガン、脳卒中、心疾患)になればおのずと医療費は高額になりますし、それ以外の病気でも入院したときや頻回通院で高いお薬を使ったりして医療費が高くなることはあります。ケガだってそうです。

病気・ケガになるのは突然です。「君、○月○日に病気になるから医療費の準備をしておきたまえよ」なんて教えて貰えません。そんなことができるのはデスノートくらいです(死んじゃうけど)。というわけで、突然病気になって高額の医療費請求がきた!やべえ!という時に助けてくれるのが高額療養費制度です。ありがたいですね。

高額療養費は世帯所得、年齢によって区分分けされていて、それぞれ上限が決められています。詳しいことは厚生労働省のホームページ見てください。抜粋すると、70歳未満の一般的な所得だと(区分「ウ」)一ヶ月の医療費が80,100円以上になると超えた分が1割になったり、70歳以上一般区分(年収370万円未満)だと上限44,400円になったりします。高いんだか安いんだかわかりませんけど、とりあえず医療費が高くなりそうな予感がしたらまずは自分の区分を確認して限度額認定証の申請をします。はい新しい単語出てきましたね。次は限度額認定証のお話をします。

限度額認定証という魔法のカードがある

高額療養費制度というやつは「一ヶ月の医療費が高額になったら、超えた額を療養費として支給しますよ」というものです。つまり本来の制度のまま利用するなら、まずは窓口で一度全額支払わなきゃいけないわけです。超えた分後から返すからさ!と言われたって、立て替えとくお金がないっつーの。そういう人の為に(そういう人じゃなくても)窓口での負担を療養費から差し引きした額にしてくれる魔法のカードが「限度額認定証」です。これがあれば窓口での負担が抜群に減ります。先日入院した父の医療費は概算26万円でしたが、限度額認定証適用後だと8万5000円になりました(わたし調べ)。療養費の支給は数ヶ月後になることが多いので、よほど貯金に余裕がある人以外は限度額認定証を申請しましょう。

さて肝心の申請ですが、至って簡単です。まずお手持ちの保険証をご確認ください。市町村発行の「国民健康保険」の場合は発行元の市町村役場へ、事業所名と保険者名(○○組合や○○協会)の記載された「社会保険」の場合は記載された保険者へ(ホームページに申し込み用紙pdfを載せてくれているところが多いです!)申請してください。国保なら最短その場で発行してくれますが、社保の場合一ヶ月くらいかかってしまうこともあります。そして基本的に申請した月の初日からしか適用してくれません。例えば6/6に入院したけどバタバタしてたら連絡するのが7月に…なんてことになったら、6月分はとりあえず3割で払ってね。という非情な宣告を受ける可能性があるのです。これ、特に社保は手厳しいのでお気を付けください。とはいえ、月末に緊急入院決まった!今から手術!意識戻ったら月が変わってた!なんてこともあると思います。緊急治療が落ち着いて一安心…と思っていたところにのしかかるお金の問題。よくある話です。そういう時は諦めずに役所ないし保険者に電話してください。相手も鬼ではないので、事情を話せば遡って発行してくれることが多いです。ごく稀に鬼がいることもありますが…そのときは頑張って戦ってください、ご愁傷様です。入院していて窓口に行けないよ!頼れる家族もいないよ!という場合もとりあえず電話です。ほったらかしが一番危険です。まずは動きましょう。

申請したら、必ず医事課に報告してね(お願い)

そしてこれも大切なのですが、限度額認定証が届く前に病院から請求書を受け取ってしまったら、診療費を払う前に必ず医事課に相談してください。請求書来たから払ったけど、限度額認定証発行してもらえたのよー!って持ってくる人、います。いや、発行されたのは本当に良かったと思います。でもできれば申請していること先に伝えておいてほしいのです。これは医事課サイドの都合ですが、毎月月末に診療明細を締めて、精査して、翌10日に保険者(保険証発行してるところ)へ明細書を提出しています。この人がおたくの保険証使ってうちでこれだけ治療を受けたから、保険者さん7割分払ってね!という請求です。このとき限度額認定証を使用しているか否かの情報も載せています。(それによって保険者が病院に支払う金額も違いますからね)もし申請しているけどまだ届いていない、などの事情がある場合、その患者さんの明細書は提出せずに保留しておくのです。

申請していると知らずに明細書を提出してしまった場合、どうなるか。病院の窓口で返金手続きをして、明細書を「取り下げ」しなくてはいけません。これがまあ、面倒くさい。なのでできれば、月末までに「申請してるんだけどまだ届かなくて…」と伝えてあげてください。これ、医事課が面倒くさいだけじゃなく「もう窓口で払っちゃってるし、こっちにも明細書届いちゃってるから今更限度額認定証使うとかやめてよね!」って保険者から言われた事例もあります。せっかく申請したのに…とならないためにも、盛大に申請アピールをしましょう。そして限度額認定証がお手元に届いたら速やかに窓口に提出して、請求書を作り直してもらいましょう。

魔法のカードにも、欠点がある

入院が決まって、限度額認定証を申請した!これで医療費安く抑えられる!

と、思うじゃないですか。そんなにね、優しくはないんですよね。上限額は「一ヶ月ごと」なので、月をまたいだ治療・入院になると8万~の医療費が毎月かかるわけです。例えば限度額「ウ」の人が3割で総額30万の医療費だったとすると、月をまたぐかまたがないかで自己負担額が倍くらい違ってきます。卑怯な。

とはいえ緊急入院だと致し方ありません。安く抑えたいから手術早く!とかできないです(怒られるからやめてね)。もし予定入院で医療費が高額になりそうな治療が予定されていたら、月をまたがないようにお医者さんと調整するのはアリだと思います。そういう患者さんもいました。入院が長くなりそうな治療なら、月初入院にしたりとかね。限度額認定証を申請して、入院期間を月またぎにしないようにコントロールできたら、もう高額療養費入門編クリアです。そう、まだ入門編です

長期にわたる治療を助けてくれる療養費制度がある

現在、私の父は白血病の治療で抗がん剤治療を受けています。1週間くらいかけて抗がん剤を投与、そこから回復を待ってまた抗がん剤を1週間…というのを一ヶ月繰り返したあと、一時退院。これを半年続けます。固形がんだと入院して摘出手術、その後通院で半年くらい放射線や抗がん剤…なんてパターンもあります。脳梗塞だと半年入院しっぱなしなんて人も。そうなってくると、いくら高額療養費制度を利用していても、金銭的に苦しいなんてことがあるかと思います。私も父の治療計画を聞いて、真っ先にお金の心配をしました。弟には「まずそこかよ」と突っ込まれましたが。お金がかかるから治療を受けられない…と気に病んでいたら、治るものも治りませんよね。

高額療養費の限度額を超えた月が続いた場合多数回該当制度(多数該当)が使えることがあります。ざっくり説明すると「医療費が高額になった月が3ヶ月続いたら、4ヶ月目以降は割引にしてあげるよー」という制度です。医療費の割引?なにそれすごいじゃん。具体的には、高額療養費の限度額を超える医療費を支払っている月が直近1年以内に3ヶ月あること。例えば区分「ウ」の人が2019年7月、10月、2020年3月に限度額(80,100円)を超えていて、2020年6月も限度額を超えた場合、6月の請求額は44,400円になります。半額以上です、太っ腹ですね。勿論連月でも可です。私の父の場合、4月から入院して半年は高額の治療を続ける予定なので、7月からは多数該当の対象になる予定です。ちなみに同一医療機関で限度額を超えた場合、窓口で多数該当後の金額にしてくれるので窓口負担が少なくなります

これにも落とし穴があって、途中で保険証の種類が変わると(社保→国保など)カウントがリセットされます。先ほどの例でいうと、療養の為2019年で退職して2020年1月から国保にしました!なんてことになると、国保でのカウントは2020年6月時点で2回となるので、多数該当になるにはまだまだ先ということになります。その後再就職して国保→社保になっても当然リセットです。これを避けるため父は「任意継続被保険者制度」というものを利用しました。詳しくは別でまとめますが、退職後も社保に加入できる制度です。保険料だけで見ると国保の方が安いですが、多数該当制度を利用できることを考えたら保険を切り替えないほうがトータルで安く済む場合もあります。なんだかややこしいかもしれませんが、テンプレに流されず自分の置かれた状態での最適を見つけてください。

社会保険って医療費を3割にしてくれるだけじゃない

ここで社保に加入している方に朗報です。ここまで紹介してきた制度は「国が決めた療養費制度」ですが、他にも「組合独自が決めた療養費制度」というものがあります。「付加給付」さんです。拍手!!

ただし内容はあくまで組合によります、全然そんなのないじゃん!みたいなところもあるかもしれませんがそれは組合とそこに就職した自分を恨んでください。もし転職する機会があれば加入している保険組合までチェックしてみてもいいかもしれません。そこまできたら高額療養費マスターといっても過言ではないです、あくまで私の所感ですけどね。

ちなみに父の加入している保険組合は「ジェフ健康保険組合」といいます。飲食業に携わる方なら知っているかもしれません。金券マニアなら「ジェフグルメカード」を発行しているところ、といえばわかるでしょうか。正直業界も業界なので付加給付なんてないでしょ、と思ってました(すみません)。ところがどっこい、ちゃんとありました。月の医療費が5万円を超えたら差額を給付してくれるそうです。多数該当になる前の3ヶ月は対象になりそうなので、これでかなり医療費が抑えられることがわかりました。

まあ医療費の付加給付というやつは基本的に申請しなくても後から振り込んでもらえるので(数ヶ月かかるけど)知らなくても損しないですが、気持ちはだいぶ楽ですよね。気になったら是非ご自分の加入している保険を確認してみてください。組合によっては医療費の付加給付額がもっと多かったり「配偶者が出産したとき」とかにも給付金出してくれるところもあります。多分そういうのは申請しないと貰えないと思うので、要確認ですね。

ここまで読んでくれたアナタに

素人のつたない文章にここまでお付き合いいただけるとはなんて辛抱強い方、尊敬します。そんなあなたなら、厚労省の難しい文章も読み解けるかもしれません。でも省庁の出してる資料ってとてもわかりづらいことが多いんですよね。自分や家族にもしものことがあったときに、難しい文章を冷静に読んでなんかいられないと思います。私のできる限りの知識と語彙力でわかりやすく説明したつもりですが、いざとなったら「で…なんだっけ…?」ってなることも、あると思います。私が今回父の病気という未曽有の災害に医療費の面で冷静に対応できているのは、5年間医療事務をしてきてそれなりの知識があったからです。

これだけは、覚えて帰ってください

医療費のことに不安を感じたら、とりあえずなる早で医事課を頼ってください。大きい病院なら医療相談室があったり、入院なら入院受付などでもいいと思います。こういう難しい問題はプロに頼るのが一番です。治療が進めば医療費の概算も出せますし、傷病の内容によっては国や自治体の助成が受けられることがあります。自分で調べるのも大切ですが、それだけでは見つけられない情報もあったりしますからね。私も過信せず、医療相談室を活用しました。ぶっちゃけ高額療養費制度フル活用しても支払いに不安が…なんて相談もできます。困ったときは、まず相談です。たくさん頼りましょう。


5500文字超えの初大作、お付き合いいただいてありがとうございました!あなたと、あなたの大切な人の「もしも」への備えになりますように。

次は傷病手当金と社会保険任意継続について会社とバトルした話をまとめる予定、です!


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