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会社の強みで「一点突破」しよう。という話

デザインという行為は「情報の再構築活動」

無限のピース数のパズルを組み立てるイメージ。そのピースの素材は「情報」であることは間違いなく、「情報」をうまく組み合わせないと適切なデザインは生まれません。
このデザインに必要な「情報」ってどんなものか?を説明する投稿シリーズ。今回は「会社の強み」について。

「何でも聴くよ」の勘違い

私は高校・大学・社会人と長い間エレキベースでロックを弾いていました。バンド関係で初めてお会いする方との会話で「どんなジャンルを聴いてるの?」というやりとりがあるのですが、一番困るのが「何でも聴くよ」という返答。

こういった答えをする方は実際には「一定のジャンルの音楽しか聴いていない」傾向があるんですが、一定のジャンルしか知らないから「何でも聴いている気持ち」になってしまうんだろうと推測しています。

「90年代のオルタナティブロックあたりを結構聴きました。特にペイブメント、ニルバーナ、スマパンあたりにハマリましたね。」の方がよっぽど深く、楽しい会話ができると思いませんか?

もちろんブルーブラス、ジャズ、クラシック、管弦楽、昭和歌謡、演歌、ボザボヴァ、EDM、雅楽、ガムラン、、、などなど何でも聴いている達人もおられるのですが、きっとその方は「何でも聴く」という答え方はしないと思います。


「何でも作れる」の勘違い

さて、デザインの話に戻しましょう。
先ほどの音楽の話と近い話がプロダクトデザインが絡む商品開発の中でもよくあります。

単一メーカーであっても、地域の団体であっても「何でも作れますよ」「どんなモノを作ればいいですか?」という投げかけられ方をされた時に少し残念に感じます。

何でもありそう、何でも揃えることに強みがあるAmazonでさえ、販売していない商品があるように、どんな企業にも限界があります。「何でも作れる」と発してしまう言葉の裏には、自分の会社を「選ぶ人」、「競合との差」が明確になっておらず、他社よりも自社を選んでもらうことが相手にとって幸せである理由「強み」を見つけられていないように思います。

実際に「何でも作れる」のかもしれませんが、他社よりもクオリティーが低いかもしれない。他社よりも高いかもしれない。他社よりも遅いかもしれない。そういった状況で「何でもできる」ということを説明できたとしても、その依頼主に迷惑をかけることになる可能性を大いに含んでいるのではないかと思うのです。


持続的競争力は、アイディアではなくメーカーに存在する

商品アイディアや商品デザインがあれば事業的にいい結果が得られると考えられていることが多いですが、それだけでは足りません。その会社がそれを作ることが良いのか?という視点で見ることが重要だと考えています。

例えば、樹脂成形のノウハウが充実している会社が不得意な木工家具を販売開始し、一時的に想定数程度の販売に繋がったとしましょう。しかし、その商品の類似商品を木工加工が得意な会社に真似られてしまうと、とたんに市場での競争力が落ちてしまいます。


真似られても負けないものを作ることが出来るか?

良いアイディアは真似られる危険性をはらんでいます。「真似よう」と思われないほど超ニッチな商品を狙ったり、特徴のあるブランドイメージを作り上げたりといった手段で回避する手段もあるのですが、基本は「自社の強み」を生かした「競争力を持続できる」商品を作ることをオススメしたいと思います。


デザイン会社Yが作る雑貨の在り方

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3名の小さなプロダクトデザイン会社である私の会社は、SOGUという自社のオリジナルブランドを2018年から展開しています。

調査費もなく、機械設計の専門的知識もなく、生産設備もなく、営業に回っていける時間もないという、メーカーとしては弱みだらけなのですが、私たちには「発想力」という一番の強みがあります。

その「発想力」を使って、他社に負けないモノづくりをしたいという純粋な気持ち。モノ作りの経験と実績を通じてよりクライアントに貢献したいという気持ちで突っ走っているこの商品群ですが、「使う人・選ぶ人」というデザインパズルのピースは「自分たちデザイナー」としたことから、求められるニーズが明確。好まれる「差別優位性」の肝もよく分かるので、その企画に「会社の強み=発想力」を使って一点突破しているつもりです。


デザインされていないデザイン CORNER BAR

この投稿のトップ画像にしているCORNER BARという商品を事例に、デザインというパズルのピースの説明してみると下記のような感じになります。

「使う人・選ぶ人」
  デザイン会社(事務所)勤務のデザイナー
  クライアントにセンスが悪い備品を見せられない
  クリエイティブな空気感を見せたい
  整理された空間で作業したい
  新しい発想に触れていたい

「競合との差」
  デザインしていないデザイン
  自分のデザイン会社のテイストを邪魔しない
  晴れが続くときは簡単に収納できる
  自分たちで発想力を楽しめる余白

「会社の強み」
  モノが成り立つ本質を見極める力
  物理的に必要なポイントを発見するスキル
  理想顧客の好みに対する理解
  自分たちが好きなモノを作っているという事実

この他にも様々なプロダクトを発表していますので、もしお時間があればSOGUコンセプトサイトもチェックいただけますと幸いです。


今回のまとめ

前回までの「使う人・選ぶ人」「(商品の)競合との差」の情報に加えて、持続的に競争力をもつことができる「会社の強み」が、デザインを進める上での重要な「情報」であることが、少しでも伝われば幸いです。



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