「使えない案ばかり」と言われないアイディア展開
面白そうなモノを「思いつく」だけなら、すぐに出来ちゃいます。ということで、別投稿で常識外れの発想法をお伝えしましたが、今回は、もっと常識的でで大切な発想法のお話。
「もっと違うアイディアないの?」と言われた事ありませんか?
クライアントや上司からアイディア展開を頼まれたとき、みなさん自分なりに多くのアイディアを考え、そのうち有望なものを複数提示されていると思います。
全く同じかどうかは分かりませんが、ここで紹介するテクニックを使っていないとこんなことになってしまいがちなのではないでしょうか。
4つ異なるアイディアを出したつもりが、「半分は論外。残りの2つも大差ないな。。。」という厳しいコメントをいただく羽目に。
本当によく見かけるシーンかと思います。こうなってしまう理由は。。。
理由① アイディアの範囲が異なる
必要なアイディアの幅の認識が異なっているから。ということが一つの理由かと思います。
いくつかのアイディアは使える可能性はあれども、比較検討できるアイディアがなかったり、もともと論外のアイディアが入っていたり。本当にあるある話ですよね。
理由② アイディアの切り口が異なる
もう一つの理由は、クライアントや上司のアイディアの選択基準を理解できていないということです。
どんなことで悩んでいて、どんな制約条件を満たしていなくては論外で、どんな視点で複数案を比較検討したいのか?
この理解なしに、適切な幅のアイディアを出すのは偶然のヒットを信じるようなものです。
クライアントがどういった価格帯の商品を出すかで悩んでいる場合、提案者が同じような価格帯ばかりのユーザーが異なるアイディア展開をしたとしても、「ユーザーは変わってもいいんだが、もっとコストが低い商品アイディアはないのか?」」「もっと高くなってもいいから他のアイディアはないのか?」という質問をされてしまうでしょう。
また、製造方法で異なるデザイン案を提案したとしても、その企業にはその生産設備が無かったりもするかもしれません。
この状況を恐れて提案数を増やしすぎるのも良くありません。多すぎるアイディアは良いアイディアを見つけにくくなりますし、アイディア創出にも無駄に時間がかかってしまいます。
「デザインは情報の再構築活動」なのですが、こういった状況は、重要な情報(切り口や要素)を見極めて、それを基準にアイディア展開していないと起こってしまうんです。
「フレーム発想法」のススメ
では、どのように適切なアイディアの幅を毎回出せるようになるのか?
その手法をお伝えしたいと思います。
この手法を知る事で、出すべきアイディアの幅が明確になり、その中でも多くのアイディアを出すことができ、さらにアイディア選択のディスカッションの質を上げるはずです。
ステップ① 「切り口」と「要素」の探索
ステップ①−1 切り口探し
その案件に対してどのような違いをもったアイディアを出す必要があるのかを「切り口」と「要素」で考えをめぐらせます。
例えば、どの素材を使うかが重要な判断であることもあるでしょう。どのトレンドに乗っていくのかが重要な判断であることもあるかと思います。これを「切り口」と読んでいます。重要な切り口を2つほど選んでください。
ステップ①−2 要素探し
重要な切り口を2つほど選べたら、その切り口の中で重要と思われる「要素」を書き出してください。これはいくつあっても構いません。その切り口で検討しておきたい条件を洗い出すイメージです。
例えば、素材を切り口に選んだ場合でも「木材」「金属」は使用可能。「樹脂フィルム」「紙」は使用不可能な場合、後者はもちろん除外してしまって「木材」「金属」だけを残せばOKです。
後で選択されるためにアイディア展開があることを忘れないようにすれば無駄なアイディアを出さなくてもよくなります。
ステップ② アイディア発想フレームの構築
重要と考えた切り口と要素をマトリクスの縦軸、横軸に配置してみると複数の方向性が現れてきます。
切り口と要素の設定にはそれなりの経験が必要ではありますが、上達すれば確実に適切な方向性を発見できるようになりますので、頑張ってください!
実際のアイディア展開の前に、クライアントや上司と整合できておくと良いですね。
ステップ③ 各方向性でのアイディア創出
適正な幅の異なる方向性が見えればアイディア出しの段階です。それぞれのマスごとに複数案を出して、有望なものをピックアップして提案することができれば質も上がってくること間違いなしです。
このマトリクスのマスが便利!
この事例では6つのマスができていますが、これができてしまえば、創出するアイディア数のコントロールもできるようになります。
例えば、
・6マスで各5案を出せば30案
・6マスで各10アンを出せば60案
このワークを複数チームで行えば
・6マスで各10案を2チームで出せば
120案
・6マスで各10案を4チームで出せば
240案
こんな風に必要なアイディア数を想定してブレインストーミングを設計できます。
また、時間のコントロールにも使えます。
3時間でアイディア展開する場合
・3時間を6マス検討するには、
各マスを30分でアイディア出し
というように割り出せばいいんです。
フレーム作り事例:災害時に役立つ光を発するアイテム
もう少し理解を深めていただければと思い、少し事例を作ってみました。
検討テーマは「災害時に役立つ光を発するアイテム」です。
ステップ①「切り口」と「要素」の探索 からですね。
思いつくままに書き出しました。きっともっと切り口や要素は考えられるでしょう。
本当のメーカーでの開発であれば、販売ルートや電池の種類、既存の商品ラインナップでの位置付けなどもあると思います。
ステップ②〜③ アイディア発想フレームの構築〜アイディア創出
今回は災害時ということなので「置き型ー持ち型ー装着型」という「固定方法」の切り口と「あかりとりー情報伝達」という「目的」の切り口を使ってフレームを作ってみました。
光は照明器具のように何かを明るく照らす使い方と、自動車のウインカーのような情報を伝達する使い方がありますし、様々なシチュエーションに対して想像を膨らませられる固定方法は重要かなと感じたからです。
フレーム構築に使わなかった切り口や要素は、それぞれの方向性でのアイディア出しに使うことでたくさんのアイディアを出すことができますので、もしトライアルしてみたければ、このフレームでアイディア出しを楽しんでみていただければと思います。
今回のまとめ
いかがでしたでしょうか?常識からズラすことで「思いつかないモノ」を思いつくテクニックとは、結構対極にあるアイディア展開方法の紹介となりました。
私自身がデザイン会社(株式会社Y)を経営しており、日常的なスタッフとのアイディア展開はもちろん、クライアント様とのアイディア出しや選択のディスカッションにはこのテクニックを念頭におきながら行っています。
ご興味を持っていただければ、ぜひ弊社サイトや、弊社オリジナル商品ブランド(SOGU)サイトもご高覧いただければと思います!
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