建築と環境アレルギー
ここ数年、木材から揮発する成分(とても低濃度!)が、どう人に影響しているかを大学と研究しています。影響具合は脳波で調べています。2022年春、その分析結果の一つが出たのですが、とても興味深いものでした。人が香りとして認識できる濃度まで高めたものには無反応なのに、認識できない低濃度まで薄めたものには脳波に変化があるのです。(この時は、鎮静時に出るθ波が増)
大学研究者としては逆の結果だったようですが、私としては想像通りの結果でした。森林浴、フィトンチッドなど森林の効能が言われて久しいですが、森に入って匂いを感じることは少ないと思います。私たちがなんとなくいいなあと感じていた森林の効能は、おそらくこのような低濃度の揮発成分に反応しているからだとわかりました。
ここ数年、香害という言葉も聞くようになりました。香りを認識するのは嗅覚ですが、これが曲者です。専門用語で馴化(じゅんか)というようですが、同じ香りに馴れてしまい認識能力が落ちます。そのため、どんどん強い香りにしか反応しなくなります。また、人の嗅覚にはかなりのばらつきがあります。そのため、自分にとっては心地よくても、他人には不快になることが起きやすいのです。
香りといえばアロマですが、鼻で認識できる香りを私たちは意識しますが、その効果をもたらしているのは実は違っている可能性があるのです。(そこで現在、”香らないアロマ™”を開発中です。)
このようなことから、私たちは想像以上に認識できない低濃度のものに影響を受けていることが見えてきました。子供たちのアレルギー罹患率が問題になりますが、どうもその原因は食べ物や住宅環境などの本当に微量なものの蓄積がもたらしているような気がしています。
今、このような揮発成分を研究するための施設を建設中ですが、できる限り揮発する成分が自然なものになるように、素材を厳選して進めています。例えば、(突板)合板や集成材を使わない(接着剤多用されています)。塗装もしない(オイル塗装も)。燻蒸消毒されている輸入材は使用しないなど。まあ進めてみると、これが今の建築業界ではとても大変だということもわかりました。何年も前から自分で原木購入してきていたので実現できそうですが、時間に余裕がないとできません。家具からの揮発成分も気にしているので、木材の仕上げは鉋仕上げ。自分で作れるからいいですが、一般の人にはとてもハードルが高いことがわかります。
まずは見学してもらえるような場所を作り、将来的には私のようにこだわる人がいれば、住宅建築のお手伝いをしてみたいと思っています。ただし、とにかく時間がかかるので、時間に余裕がある方でないと難しいことを考えるとほぼいないかもしれませんが、、、。