漫画キングダムから学ぶ会社経営 #17:後継者の責務
本記事は、「漫画キングダムから学ぶ会社経営」と題し、毎回、様々な視点から漫画キングダムとビジネス(特に経営)での共通点及びそこから得られる学びについてまとめていきます。今回は17回目の記事になります、過去の投稿はこちらからご覧ください。
前回「#16:後継者問題」では、後継者の重要性と難しさについてまとめました。また、この後継者問題は、実はCEOだけではなく、チームを率いる全てのマネージャー、リーダーに当てはまり、王騎の後継者謄についても少し触れました。詳しくはこちら前回記事をごらんください。
今回は、後継者として成功を収めるにはどうしたら良いのか、謄を例に後継した側の視点で考察したいと思います。
まず、一般的に社長(もしくは、何かのチーム、部署のトップ)の後継者として求められる事は、シンプルに以下2つあります。
1) 既存の良い所を継承する。
2) 自分の強みを活かし、新たな取り組みを行う。
これらは当たり前の事ですので、誰もが理解でき、同じ目線で評価されます。ビジネスマンの方ならお分かりの通り、当たり前の事を当たり前に行うのが一番難しいのです。特にこの場合は、上記2つのバランスが大切になります。野心が強く、エネルギッシュな方というのは、自分色を出そうと前のめりになり、全てを変えたがります。また、保守的な人は、過去の事や既存のやり方、周りの顔色を伺いすぎる為、2)の取り組みが遅くなりがちです。その会社、部署、チームに合った最適なやり方をトライアンドエラーを繰り返しながら、バランスよく進める必要があります。
それでは、キングダム内での謄はどうでしょうか。
まずは、王騎が健在で謄がNo.2だった頃を見てみましょう。基本的に、謄は王騎に忠実で口答えする事が全くありませんでした。昔はあったかもしれませんが、キングダム内ではそのような描写は一切ありません。理由はいくつかあるかと思いますが、これは王騎にとっては非常に使い勝手の良いNo.2だった事が伺えます。(No.2の重要性についてはまた別の機会に掲載します。)その結果、謄は軍長含め、他の王騎軍のメンバーからは、慕われてはいても、カリスマ的な視点では捉えられていなかったと思います。これは、後を継ぐものとしては、一つ障壁になってきます。また、自分の意見を言わないのでリーダーシップ能力にも疑問符がありました。そして、最大のチャレンジは、王騎という圧倒的なカリスマを失った軍の士気の低下をどう抑えるかでした。これは、存命のまま後を引き継ぐのとは大きな違いで組織が総崩れしてしまう大きな懸念事項になります。
最初の難所、軍の士気低下ですが、具体的な記載はありませんので推測になりますが、謄は以下のように組織を保ちます。まずは、5人いた軍長と密にコミュニケーションを図り、指示するのではなく、同じ経営陣としてどうするのかを模索した事が予測されます。これは、後の謄と軍長の会話から明らかで、軍長達は謄に対しては、意見をしっかり言い、議論ができる関係になっています。組織の立て直しには、一人のカリスマもいいですが、数人のチームで立て直す事により、優位に働く事があります。謄は、王騎死後直後は自分一人だけでは立て直すのは困難だと理解し、側近達と手を取り合いました。
次に、王騎軍から継承した事が2つあります。1つは、組織構造です。今までの5人の軍長を中心とした組織を継承する事により、軍の混乱を防ぎ、スムースに自分の組織へと移行します。そしてもう1つは、録嗚未も驚いていましたが、大将軍の心です。これは、自分がこうなりたいというよりも、王騎への尊敬及び約束のようなものかもしれません。しかしながら、この心の継承は、やはり、未だに王騎の事を崇拝する軍の事を考えても軍をより良い方向へと導きます。
次に、謄軍として、王騎軍とは違う取り組み及び運営です。まずは、先ほども記載しましたが、トップダウンではなく、より話しやすい関係を構築した事が言えます。どちらが良いというわけではありませんが、謄の性格、軍の特徴から考えると、このやり方が一番良かったのでしょう。また、物腰の柔らかさは軍内だけでなく、外部に対しても発揮します。例えば、軍総司令のやり方には大きく口を出さずに、昌平君の戦略に従い、行動します。これは、自分の気に入った王や国としか歩んで来なかった王騎とは大きく違います。その物腰の柔らかさにより、六大将軍以降孤立していたように見えた王騎軍とは違い、より周りとの連携をしっかりし、秦国の一員として戦う事になります。あとは、ユニークで親しみやすいキャラクターもこれらの行動と一致しており、プラスに働いています。
このように、謄は周りをしっかり見ながらバランスを取り、王騎軍の良い所を引き継ぎ、かつ自分色を出す事に成功しました。今や(59巻現在)、謄軍は、蒙武軍や王翦軍と並び、中華統一に向けて欠かすことができない軍になっています。
今回は、大きなチーム・組織を引き継ぐものの重要性及び成功例として、謄を例に考察しました。正直後継者は、周りの目も気にしつつ、さらなる成長が求められ、また前任者と必ず比較されるため、心の苦労が絶えません。しかしながら、引き継ぐ物にはその難しさ故、創業者とは違ったやりがいがあるのも確かです。自身が大きな組織を引き継ぐ時には、謄のように柔軟性を持ってその変化を楽しむ心の余裕を持って臨んでみたはいかがでしょうか。
では、また次回。
注)写真はすべて漫画キングダムより引用
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