超ショートショート あの時、きみの気持ち
夢を見た。
一番印象的だったところだけ、覚えている。
すごく、綺麗な女の子が出てきた。
中学に入学した当初、当時クラスで一番きれいだった子に似たような雰囲気・容姿だったような気がする。
「ちゃんと、君のことを考えてくれて、君のためを思ってキツいことを言ってくれる人を好きにならないと駄目だよ」
彼女が、僕にじっと視線を向けながら言ってる。そんな様子を視界の端で感じた。その言葉に胸が震え、僕は彼女を直視できなかった。
「ねえ、私と付き合おっか」
続いたその言葉に、心が大きくどよめいた。思わず、僕の口は勝手に動いた。
「いや、まさか。それはない」
言い終わるのと、しまった、と心の中で嘆くのが同時だった。
その子の表情に、さっと悲しみがさして歪んだ。直視しなくても、空気の揺らぎでそれが伝わった。
相手のことを思うと、胸が痛かった。
どうして、僕はこんなことをしてしまうのか。
『僕のためを思って、ちゃんとキツいことも言ってくれる。そのうえで、きちんと想いを伝えてくれる人』 これ以上の人なんて、いるわけないだろ? 最大最高のチャンスを目の前にしたとき、ともすれば人は、その現実が信じられなくなるのかもしれない。
そんなことを考えていると、いつのまにか目が覚めていた。
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