「ストップ!!ひばりくん!」を読んだのです。
ついにずーーーーっと気になってた江口寿史さんの漫画を読みました。
チョイスしたのは「ストップ!!ひばりくん!」です。
この作品は1981年から1983年まで、週刊少年ジャンプで連載されていたものです。
ずーーーーっと気になってたのにどうして今まで読まなかったのか。
どうしてそこまで気になってもいない他の本を先に読んでいたのか。
私にもわかりません。
人間とは不思議なものです。
「ずーーーーっと気になってた」のきっかけは、銀杏BOYZのCDジャケットのイラストでした。
元々ゴイステが好きだったので、聴いてみようと手にとったこのアルバム。
「なんかこのイラストいいな。」
漫画チックなのに、どこかリアリティが感じられます。
でも、写真のようなデッサンとは違うし、劇画タッチのものとも違うんですよね。
ポップアート(特にロイ・リキテンスタイン)っぽさもありながら、日本的な柔らかさもあります。
単純にものまねだと片づけられない絵です。
片づけてはいけません。
ぽさがあるのに個性的なんです。
不思議な感覚ですねー。
そんな絶妙なあんばいに自然と心惹かれたのです。
でも、そのときは誰が描いたのか調べもしませんでした。
そういうことをしない奴だったんです。
惜しいことをしました。
今はその点において多少改善したつもりです。
それから何度か彼の作品をどこかで目にしながらも、誰が描いたのか調べない私……
むむむ……
そうして時を経て、4年前吉祥寺のサンロードに彼の絵が飾られたとき、やっと調べました。
そん時はこういうの調べるようになってたんですねー(笑)。
江口寿史さんという名前なのか!
漫画家なんだ!
やっぱり素敵なイラスト描く人だな!
ここで普通なら作品を手にとると思いますよね。
それで作品に触れてああだったこうだったとその時の感想を書く流れになるだろうと予想できますね。
普通ならそうするはずです。
でも違うんです。
普通じゃなかったんです(笑)
これだけ条件がそろっているのに、なぜかさらに謎の4年のタイムラグを経て、ようやく「ストップ!!ひばりくん!」を読んだのであります!!!
一体何をしていたんだ!!!
読んですぐにハマりました。
もうなんでもっと早く読まなかったんだと後悔しましたが、そんな後悔をぶっ飛ばすくらい夢中になりました。
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---ここからほんの少しネタバレです---
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表紙を飾る髪の長い子は、実は男の子だったんです。
題名にあったひばりとはこの子の名前なのです。
身体的には男性として生まれたのですが、女の子として生きることを望み、学校には男であることを隠して通っています。
男子高校生の坂本耕作が母の死をきっかけにヤクザの家に預けられることになるところから物語が始まるのですが、そのヤクザの家の長男がひばりだったんです。
この設定からすると、シリアスな物語にもできそうですが、本作は気楽に読めるドタバタコメディなのでございます。
ツボにはまって大笑いする強烈な作品というよりは、随所でクスリと笑える感じ。
そういう意味でもリラックスして読める漫画です。
中身の絵は先に挙げたCDジャケットや吉祥寺のサンロードのイラストとは少し感じが違います。
正直想像していた画風と異なり、80年代という時代を感じさせるものでしたが、かえってこの漫画の作風に合った絵だと思います。
読んでいくうちに、むしろこれが正解じゃんという結論に至りました(なんか偉そう?)。
好みもあるでしょうが、私はこれはこれで魅力のある絵だと感じました!
そもそも80年代の漫画の絵が好きですからね。
この他にも当時のもので好きな画風の作品がいっぱいあります。
そうした80年代の少年漫画という枠組みの範疇にありながらも、やはり著者の個性が光っています。
ギャグ漫画らしく崩した絵でありながら、お洒落な絵がところどころに出てきます。
扉絵も素敵なものが多いです。
だから、前者(銀杏とサンロード)と後者(ひばりくん)を見比べたとき、感じは違うんだけど同じ人が描いたものだという感覚はあるんです。
また、現代とLGBTQ+に関する意識が違うので、作品の中でのひばりの描かれ方も時代を感じさせるものとなっております。
「現代の感覚だとこれはちょっといただけないのでは?」と感じたシーンもあります。
ジェンダー論を学ぶ人にとっては時代を知る資料になり得るかもしれません。
現代でも昔でも、作品の中でLGBTQ+の人たちがひどい扱いを受けるシーンは出てくるでしょう。
でも、描かれ方が違うと思うんです。
現代ならそれはシリアスな物語で描かれ、そういった逆境にさらされながらも、理解者と出会い、支え合って乗り越えていくストーリーになるでしょう。
他方、「ストップ!!ひばりくん!」はギャグ漫画で、もっとトランスジェンダーであることを軽く扱ってます。
妹のすずめは例外ですが、ひばりが男であることを知ってる人たちは、その生き方を支持したり励ましたりしません。
特にそれに関して意見を言わない登場人物もいますが、意見を言う人は、基本的にひばりが女として生きようとすることに否定的です(他にも例外の見落としがあったらごめんなさい)。
随所でひばりは、なかなかきついことを言われています。
でも、だからといって、そこだけを切り取ってこの作品を差別的でダメだと切り捨てないで欲しいんです。
たしかにいただけないところはあるし、今後作品をつくっていく人はもう少しこの点において敏感にならなければいけないのだろうけど、称賛すべきところもあります。
ひばりはその中でも飄々と、自分を曲げずに生きているのです。
すがすがしいほどに堂々と。
読んでいるうちに、私はひばりがトランスジェンダーであることを自然と受け入れていたんです。
これって結構すごいことですよね?
また、耕作は表向きは否定しながらも、心の底では別の感情が見え隠れしています。
ところどころで優しくしたり、守ったりするシーンがあるんです。
だから、この作品は完全に前時代的なものではなく、「ある部分では前時代的で、またある部分では時代を先取りしていた作品だ」といえると思います。
当時読者だったマイノリティの方々の中には、作品内の表現に怒った人もいれば、この作品に励まされたよって人もいたのではないでしょうか。
それから、出てくる女の子のファッションも見どころの一つですね。
80年代のファッション=ダサいと思っている人は、その先入観が覆されるかもしれません。
あと読んでて、ヤクザもののギャグ漫画ということで、静かなるドンを思い出しました。
こちらも面白い作品です。
ちなみに私はこの「ストップ!!ひばりくん!」をKindle Unlimitedで読みました。
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この記事を読んで興味を持たれた方、それから私と同様に江口寿史さんのことが気になっていたけど読まずにいた方、是非読んでみてください!
それではまた!
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