Vol.519「トランプのマッチョイズムに気をつけろ」
(2024.11.19)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…アメリカ大統領選挙は「接戦」という予想を覆し、トランプが圧勝した。日本人のわしにはアメリカの大統領選など他人事で、トランプが勝とうがハリスが勝とうが、それで一喜一憂するつもりなど元からなかったのだが、とはいえこの結果はわしにとって、気がかりな問題を含んでいるのも事実である。結局、今回も「ガラスの天井」が破られることはなく、アメリカ初の女性大統領誕生はまたも幻に終わった。この結果は、アメリカでは「マッチョ」でなければ権力を取れないという現状を表している。トランプ圧勝が日本にもたらす影響とは?これからの日米関係をどう考えるべきか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…立憲民主党の津村啓介は、比例復活で当選した後も、やっぱりとことん男尊女卑を護持したくて、「愛子天皇実現」をわざわざ暗雲で覆うような姿勢ばかりとるつもりのようだ。 衆院選では、Xで「女系天皇は議論自体が時期尚早」と明言し、「女性はいいけど、女系はね」「愛子様が天皇になるのはいいけど、そのお子様に皇位継承権を認めるのはダメ!」の態度をはっきりと見せていた。「私の考えも(双系派と)遠い所にはない」「(女系天皇は)時期尚早」「任期4年で結論を出すべきでない」「2段階論」「匍匐前進」……これらの言葉の裏にある彼の本心とは?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…「女性の供託金を半額にしろ」という意見をどう思う?未だに眞子さまと小室圭氏をバッシングしている奴らの心理とは?映画『ジョーカー』のような「悪者」の描かれ方をどう思う?漫画家・楳図かずお氏についての思い出は?松本人志氏が訴訟を取り下げた件をどう捉えている?『夫婦の絆』の漫画としてのジャンルって何?「手取りを増やす」という言葉はショックだった?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. ゴーマニズム宣言・第548回「トランプのマッチョイズムに気をつけろ」
アメリカ大統領選挙は「接戦」という予想を覆し、トランプが圧勝した。
日本人のわしにはアメリカの大統領選など他人事で、トランプが勝とうがハリスが勝とうが、それで一喜一憂するつもりなど元からなかったのだが、とはいえこの結果はわしにとって、気がかりな問題を含んでいるのも事実である。
結局、今回も「ガラスの天井」が破られることはなく、アメリカ初の女性大統領誕生はまたも幻に終わった。
この結果は、アメリカでは「マッチョ」でなければ権力を取れないという現状を表している。
ハリスにはマッチョさがゼロだった。トランプと比べれば、常にひ弱に見えた。これが勝敗を大きく左右したのは間違いないだろう。
アメリカ人には、世界最強を誇る軍隊の最高指揮官を女性に任せるわけにはいかないという、マッチョイズムが無意識のうちに働くのだ。
そしてこの無意識は、もちろん男尊女卑に直結する。
トランプの圧勝は、確実に男尊女卑の感覚を強化する効果をもたらす。そして、これが日本にまで波及してくるのではないかというのが、わしの危惧するところである。
日本で天皇が「男系男子」に限定されたのは明治以降のことで、これは伝統でも何でもない。
ではなぜ明治にそうなったのかというと、当時は弱肉強食の帝国主義・軍国主義の時代であったということが大きい。
大日本帝国憲法において、天皇は「陸海軍ヲ統帥ス」と定められた。天皇は軍の最高司令官「大元帥陛下」であり、「御真影」と呼ばれた写真など、一般国民の目に触れる天皇は常に軍服姿だった。
この時代の世界には、軍のトップが女性では他国にナメられてしまうというマッチョな意識が強固にあり、だからこそ日本でも、女性天皇などもってのほかということになってしまった。何しろ男性の昭和天皇でさえ、史上初の眼鏡姿の天皇で、学者の性格がその風貌にもにじんでいたために、武人としての力強さに欠けると言われていたほどなのだ。
アメリカ大統領には、そんな帝国主義時代のマッチョイズムが、今なお求められているというわけである。
だが日本の長い歴史のなかでは、天皇は常にマッチョさを求められていたわけではない。むしろそんなケースは例外的と言っていい。
これはあくまでも「伝承」だが、初代・神武天皇が東征の軍を率いたように、古代において天皇は武将でもあった。
しかし、それは男性天皇に限った話ではない。古代の女性首長は半分近くが武将だった。明治以前には第15代天皇とする史書もあった神功皇后は、妊娠中の身で筑紫から玄界灘を渡って朝鮮半島の新羅を攻め、三韓征伐を成し遂げた猛烈な武将だった。
神功皇后は、「皇后」なのに日本書紀で一巻が使われている。何人もまとめて一巻に書かれている天皇もいる中でこれは異例中の異例で、それが神功皇后は実は天皇だったという有力な根拠となっている。なお、神功皇后が正式に皇統譜の歴代天皇から外されたのは、大正15年(1926)のことである。
また、第37代の女帝・斉明天皇は、唐と新羅によって百済が滅亡した後、百済復興軍を支援するため自ら遠征軍を率いるが、朝鮮半島に渡る前に、筑紫にて崩御した。
古代における二つの大きな対外戦争を率いた武将は、いずれも女性だったのだ。
そもそも、天皇の祖先である女神・天照大神からして、弟のスサノヲノミコトが高天原を乗っ取りに来たと誤解して、男装して武具を携えて迎えたと神話にあるほどだ。
日本には本来、マッチョな男じゃなきゃ武人ではないなんて感覚はなかったのである。
古代の天皇は男女を問わず、権力と権威、文と武の全てを担っていた。
しかし、やがて権力が分離されて権威のみ、武が分離されて文のみの存在となる。
そしてそれと並行して、シナの儒教文明の影響を受けて天皇は男帝のみとなり、称徳天皇から明正天皇までの間860年、女帝は登場しなくなった。
ところが、天皇は男性限定になってから、どんどん「女性化」していったのである。
イスラエルの歴史学者で、日本研究の功績から勲二等瑞宝章も受章しているベン=アミー・シロニーは『母なる天皇』(大谷堅志郎訳・講談社刊)で、こう書いている。