人生ドラマはシーズン制。私の物語と出演者はシーズンごとに自分で決める
こんにちは、聴く・書く・話す コラムニストの芳麗です。
昨日から私が出演する日本最大の音声フェス『VoicyFes`24』が開幕しました。各界で活躍している方々が意外な組み合わせで対談、今の時代を生きる術をあらゆる角度から語り合う、日本最大にして唯一無二の音声対談の祭典です。
人と人が向き合った時に生まれる対話のケミストリーは、シンプルに新鮮で面白く気づきの多いイベントなので、ぜひ、チケットをご購入の上、ご参加いただけたら嬉しいです。
ちなみに私の出演は明日。
・11月29日(金)18:50 START
・産婦人科医・性科学者の宋美玄先生と「自分史上最高の自分になるには?」というテーマで語り合っております。(約1ヶ月間のアーカイブ視聴あり)
今年のVoicy Fesの全体のテーマは「千変万化」。
万物が変わりゆくのは、この世の真理ですが、時代と社会の止まることのない変化のスピードと大きさを体感している昨今にぴったりなテーマだなと。
そこで、本日は「千変万化」という言葉を聞いた時に、私がまっさきに浮かぶ人間関係の変化について思考を記録しておきます。
人間関係は「千変万化」だから美しい
人生全般において変化は避けられないものだけれど、人間関係はその中でも特に顕著なものだなと感じます。家族、友人、恋人、仕事仲間——変化を望もうと望むまいと、全ての関係性は少しずつ形を変えていくし、出会いを別れを繰り返す。
人間関係の移ろいとその悲喜交々を初めて強く実感したのは、30代に入ってからです。学校という閉鎖的な空間にいる頃、社会に飛び込んでまもなかった20代も、一緒に笑い、泣き、分かち合った人たちがいました。でも、ふと気づくと、その関係が変化する瞬間が訪れました。
角田光代さんの小説「対岸の彼女」の世界です。
「結婚する、しない。子供がいる、いない。それだけで女どうし、なぜわかりあえなくなるんだろう」(帯文より)
結婚、出産のみならず、独立や転職や引っ越しなど、個としての人生が「枝分かれ」が明確になり始めると、話が合わなくなったり、価値観の違いが見えてきたり。一緒にいたい気持ちはあるのに、違和感が積み重なっていく。
それまで積み重ねた親しみや愛着をよりも、居心地の悪さが勝った時、その友と親しくあることは加算ではなく喪失になってしまう。
「人生は一人旅」という視点
30代前半は、この「変化」に戸惑い、抵抗しました。学生時代の友達とも、仕事で親しくなった人とも、変わらず繋がっていたいと思っていました。でも、無理に関係を繋ぎとめようとするほど、ぎこちなくなる。お互いにどこかで違和感を抱えてしまう。
ある時から、「人生は一人旅」だと思うようになりました。公私の経験を重ねたからもありますが、意識したきっかけは、かつて、私がオーストラリアで出会ったヒッピーの女性の言葉です。
「今一緒にいるパートナーは、全てをゆだねられる大好きな人。お互いが心地いいから一緒にいる。でも、お互いが変わっていけば、進む道が分かれることもある。それが自然なことだと思う」
その言葉は当時の私にとって寂しさを伴うものであったと同時に「これは真理だろう」とも感じました。どれだけ親しい関係でも、それぞれに個の人生を生きている限り、関係性も距離感も変わっていく。
それは避けられないものだけど、長い人生において決して悪いこととは言えず、切なさを伴うものの、健やかな変化なのだと。
人生はシーズン制のドラマだから
つい先日、20年来の友人・料理家の中井伸子さんと人間関係について、こんなことを語り合いました。
「人生は、自分が主役で演出家でもある人生劇場だよね。その移り変わるさまは、シーズン制ドラマみたいなものじゃない?」
ドラマは主役以外のキャストは、シーズンごとに入れわかる。数名の主要キャストは続投することもあるけど、フェードアウトするキャラもいる。同じように私たちの人生もシーズンごとに関わる人々が変わっていく。
どのシーズンにも必ず登場する「レギュラーメンバー」は、家族や親友、長年のパートナーなど片手に足りる。一方、特定のシーズンだけに登場する「ゲスト出演者」のような人々もいて。今の環境だからこそ出会った恋人や友人、職場の同僚や趣味の仲間など、その時期に出会えて交流を深めた人々がそれ。その時期、その瞬間を豊かに彩ってくれる大切な存在ではないかと。
「セックス・アンド・ザ・シティ」にみる人間関係の移ろい
たとえば、思い出したのが海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』です。
主人公のキャリーと、その親友たちサマンサ、シャーロット、ミランダ——彼女たちの友情は固い絆で結ばれていますが、ドラマが進むほどに、それぞれの人生に変化が訪れます。サマンサがグループから距離を置くようになったり、シャーロットが結婚や家庭を優先することでキャリーたちとの時間が減ったりもする。
それでもキャリーは、全シーズンを通して自分の人生を生き抜こうとする。今そばにいるベストフレンドも大切にしながら、その時々、出会えた人に興味と敬意と愛情を持って、絶え間ない変化の中で人生を再構築しながら成長していきます。
SATCだけじゃない。やはり大好きな『エミリー・イン・パリ』のエミリーだって、パリで素晴らしい出会いと経験に恵まれたものの、今度はイタリアに行くんだから!
私たちの現実も同じ、シーズンが変われば、自分も周囲も万物は変わるし、何が起こるかわからないのが人生劇場だなと。
そして、人生ドラマは「シーズン制」であると意識してみると、移ろいゆくすべてのものが、すべての人間関係が愛おしく思える。自分の人生にレギュラー出演してくれる身近な人々はもちろん、シーズンごとのゲスト出演者との出会いや別れもかけがえのないものだと感じられる。
「登場させない自由」
もう一つ大切なのは、「誰を自分の人生劇場に登場させるかは、自分で選ぶ」ということ。
言うまでもなく、自分の人生劇場の主役はもちろん、演出も支配人も自分だから。
出会いたい人、関わりたい人、深めたい人はもちろん主体的に選んでいいし、「意地悪な人やマウントを取ってくるような人はもちろん、苦手な人や興味のない人だって、自分の人生劇場にわざわざ登場させなくていいよね」と前述のマイフレンド・中井伸子さん。
積極的にこちらに意地悪してくる人は、もしかして、勝手にこちらを自分の人生劇場にゲスト出演させているのかもしれない。
でも、自分の舞台には引き込まなくていい。それだけでもっと人生劇場はシンプルに豊かになるし、名場面が増えていくのだろうと思います。
人間関係を喪失しても、楽しかった「思い出」は色褪せない
こうも思います。
人間関係は千変万化。でも、たとえ、かつての美しい関係が変化してしまっても、その時、その人と一緒に過ごした思い出までも消えるわけではないなと。あの瞬間の価値が色褪せることはないし、むしろ、変化するからこそ、思い出は新鮮なまま鮮やかに心に保存されるのではないかと。
そんな風に変化を重ねながら、人生は続き、厚みを増していく。
新しいシーズンが始まるたびに、新たな出会いも別れもあるけど、予想外のタイミングで昔の登場人物がまた戻ってくることもある(キャリーが10年以上ぶりにエイダンに再会したようにね)。
その時には、お互いに新しく進化した自分で出会い直して、さらに豊かな関係を築けるのかもしれない。
今シーズンを味わい尽くしながら、次のシーズンへと繋ぐ
だからこそ、今を生きたいなと改めて。
このシーズンをともに生きる人を大切に、人間関係の変化も柔軟に受け入れて楽しめたら、きっと、次のシーズンも、その先のシーズンもますます面白くなっていくんじゃないかななんて思います。
本日のお話は、Voicyでも語っています。
Voicyフェスにおける気づきや醍醐味などはあらためてリポートしますね。
私の人生のレギュラー出演者・中井伸子さんもこのお話をnoteに書いていましたので、ぜひ、合わせてお読みください。