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ボードゲームを作った話

ゲームマーケット2021秋にてピーナツデザインという名義で友人と二人でVICKEというボードゲームのルールの検討、デザイン、広報、量産、販売まで一貫して行いました。

本業の規模感と比べると1/10,000程度の取り組みでしたが、個人的に思うところがあったのでテキストで残そうと思います。

VICKEについて

2人用のボードゲームです。
友達とガヤガヤやるパーティゲームではなく、二人でゆっくりと遊ぶゲームになっています。

駒はジェスモナイトという樹脂で型取りし、ボードも帆布を縫って、シルクスクリーンとボードゲームといいつつも、ゲームの内容からは逸脱したところに力を込めたものとなってます。

遊び方などの詳細はゲームマーケットのページにたくさん書いたので割愛。

なぜボードゲームを作ったか

私は家電メーカーのデザイナーとして生計をたてています。
家電製品のスペックや価格を考える企画の業務から始まり、いわゆる外観のデザインまで担当しています。

自分の携わった製品が市場に出るのですが、担当した製品が発売されたときには、どこか人ごとになっていると感じてました。

ものづくりの上流だけ関わっていてその先をあまり体験していない。

そのモヤモヤについて考えてみたくなり、作るところから届けるところまで手の届く範囲のものづくりに取り組んでみたいと思いました。

儲からなくても困らない自主制作なので、なるべく生活の役に立たない、今仕事でやってる家電製品からかけ離れたものにしたいと思い、ボードゲームが好きと言ってた大学の友人を誘ってゲーム作りを開始しました。

ルールの検討

2019年から開始して、当時新潟に住んでいたこともありリモートメインで、なんとなくルールを決めていきました。

この段階から、我々がイラストなどで他の製作者に勝ることはできないだろう、という考えがあり、プロダクトの作り込みを大事にしていく方針は決めていました。

デザイン

ルールがあらかた決まった段階でデザインを始めました。
普段の仕事ではこの段階でなんとなくの販売数や売価が決まっている=作り方の制約条件が固まっている、という状況になるためその制約を起点にデザインを考えるのですが、今回は何も決まっていませんでした。

どのくらいの値段でどのくらいの人に届けるかでなんとなくできることが決まる。

現状、何も反響も後ろ盾もない我々は、かなり少量、数十個だけの少量生産を前提にデザインを検討しました。

広報活動

物の出来不出来とどれだけ売れるか(特に初動)に相関関係がないことは本業でとても身に染みていたので、コツコツTwitterをやっておりました。

コンポーネントの作り込みや写真素材もあいまって、初出展にしてはなかなか目に留まることに成功できたと思います。

売価決定、量産

一番苦慮したのが値付けです。我々は自分の欲しい形を追っていった結果、原価は想定を大きく上回り初出展にかかわらず相場の倍近い価格で売らざるを得なくなっていました。

原価の時点で相場の売価を大きく上回ってしまった図。

しかし幸いなことに、予約分は数時間で規定数に達し、大急ぎで広報ように取っておいたリソースを生産に回すことにしました。

このあたりの我々の反省は、原価における人件費の重さゲームマーケットの市場規模を見誤っていたことです。

ボードゲームマーケット当日

ゲームマーケットの開場が11時だったのですが開始10分強で当日販売分が完売。この時間帯に来られた方は事前の広報の結果来ていただけた方がほとんどだったと思います。

予約分を含め、ものを見て買っているのではなくtwitterの情報を見て購入を決めている人がほとんどなことになかなか驚きました。

まとめ、考えたこと

私は常々大量生産にできないことをやろうとしてきましたが、少量生産に品質やデザインを伴わせようとすると価格が跳ね上がるということを身をもって体感しました。

大量生産は品質の担保やデザインなどのコストを分散できる。
少量生産は1つ1つにかかるコストが重い

今回の売価で売り続けることができれば作業にかかる人件費なども含め、マイナスに転ぶことはないですが、発売に至るまでにかけたイニシャルのルールの検討やデザイン、量産までの段取り、撮影や広報などの人件費を回収するのは遠い未来になってしまいます。利益率を上げ、且つ販売数を増やさないと、生業としては成立しないのです。

また。少量生産にしかできないこと、大量生産にはできないことはあると思うのですが、
良いものを多くの人に届けるのが工業デザインの本懐だと改めて思いました。
今回のボードゲーム、VICKEは少量だから良いものではないので、欲しいと言ってくれる人がいるならば、どうにか行き渡る構造にしたいなと思う所存です。

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