22歳のわさび丼

想像してほしい。丼のご飯が見えないほどに
しきつめられたワサビを。

若手のころ連れて行っていただいた
割烹の名物が、その”わさび丼”だった。

文字通り泣きながらそのわさび丼を食べた。
(たしかオカワリしたと思う)

そして、その夜をさかいに、
猛烈にわさび好きなカラダになった。
(特に起伏のないエピソード…)

今では、お寿司でもそばでもステーキでも、
一口ずつ継ぎ足して食べるほど、すきだ。

ある閾値を超えると、人の好みは
急激に変わるのだろうか。

苦手なものや嫌いなものでも
思い切って踏み込んで見れば、
好きになることもある。

…みたいな教訓めいたことを
言いたいわけではなく。
(むしろ個人的には食わず嫌いが多すぎてダメだ)

これもだいぶ前の話だが、
ある商品のボディコピーに、こんなことを書いた。

好きなものを、もっと好きになること。
大切なものを、もっと大切にすること。

なにかを新しく、深いところまで
好きになるということは
それだけむずかしい、と思う。

大昔のわさび丼を、
いまだに覚えているのだから。


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