ウィーンは心地よいソファー

「ウィーンは心地よいソファー」だと言う人がいる。この街に一度住んだら、物価は比較的安いし、街並みも綺麗、どこに住んでも家賃は安い、それなのに文化プログラムも多いし、芸術家への支援も厚く、低所得者にも優しい、それでもってドナウ川もあるし小さな森もあるので自然もある、中欧なのでヨーロッパの西や東どこでもアクセスは良い、しかも治安が良くて夜中に酔っ払って犯罪に巻き込まれることはまずない。つまり生活水準が極めてよい生活が簡単に手に入るということだ。こう書いていくと良いことばかりじゃないかと思ってしまうけれども、ここが落とし穴なのか心地の良い街に暮らしていると、どこかこんな恵まれたままでいいのかしらとふと考えてしまうことがある。貧乏芸術家をやっていても、のらりくらりなんとかなってしまうし、助成金だって調べれば調べるだけあって、頑張れば獲得することも、もちろん努力次第だけども、そう難しいことでもないと思う。こういうのを天邪鬼というのかもしれれないけれど、恵まれ過ぎていると不安になってしまうのは、どうしたことだろう。

3月中旬から入居した制作スタジオだって、1区だ。強引に東京に当てはめたりすれば丸の内だろうか。それでもシェアしていることもあって、家賃は1万円ちょっとで済む、ビックリするくらいに格安で手に入る、これでも他のアーティストたちは文句を言ったりもするし、どんな環境にいたとしても人間は間違いなく文句をいうものなのか。心地よいソファーから脱出するには、それなりに体力が入りそうだけれども、ここはここち良いソファーでしかできないことをやるべきだなとも思った。

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