適正報酬は可能か?
思い出したように書き出したけれど、ある東欧の展覧会のためにオーストリア連邦政府文化省(本当はドイツ語でもっと長い名前なのだけど、面倒なので意訳で済ませている)から助成金をもらえることが決まった。用途は特に限定されてないので、どんなものでも計上できることになってるので、渡航費用、滞在費用、作品制作費用、諸々報酬・謝礼、そして自分のアーティストフィーに充てることにした。自分のアーティストフィーを計上するなんて可笑しいと思われるかもしれないが、寧ろオーストリアではこの自分のアーティストフィーを計上していないと逆におかしなことになる。といのは、最近芸術団体による文化労働者への適正報酬の支払いを求めるFairPayが活発で、業種ごとに細かい推奨時給が提示されて、すべての助成金申請ではこの推奨時給に基づいた計算による収支報告を出さないといけないことになった(法的に義務はないはずだが、推奨されているという意味で)。それゆえに、自分自身の企画だとしても自分のやる仕事内容をはっきりさせたうえで、所要時間と時給を計算して計算していないと、全体のFairPayに貢献していないということなる。助成金を受ける場合にも、一定の割合以上をこの報酬として支出しFairPayに貢献し、業界全体の賃金上昇に貢献するように求められる。
まだ墺では、公的助成金にこのFairPayを適応させるのはパイロット版(試作段階という意味だろうか)だということで、すでに過去に申請した助成金でまだ結果が出ていない申請も遡って、申請書の収支報告書をFairPayに準じた金額に修正することができるという特例で、場合によっては増額できることになった。僕もちょうどこの時期に助成金申請をしていたので、1度出した申請書を後からFairPayの金額に修正し、15万くらい増額した。
素晴らしいと思うのは、「業界全体の賃金上昇への貢献」のあり方だと思う。経済的な勝ち組だけが生き残ることができる資本主義の負の側面をどうにか和らげるためにも、低所得となって生活苦に陥ってしまう層をどうにか軽減することが社会全体の利益となると思う。経済的な成功による人生の成功などという悪夢は終わらせるだろうか?