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高校入試対策 - 日本の公立高校とIBDPの入試問題演習【Aflevering.53】
日本語教室の中学生クラスでは、生徒それぞれが希望する進路に合わせた授業をしています。
具体的には、帰国に向けた普通科高校の入試対策や、IBDPの入試対策などをしており、主に読解問題や文法、小論文など多岐にわたります。
問題傾向の違いについて
日本の一般的な高校入試の場合、私がこれまでに演習でみてきた限りでは、読解問題となると問題作成者の意図に沿って答えを出さなければならないことが多く、正しく読めたかどうかに焦点が当てられています。
問いから少しでも逸れた解答を書くと、点数がもらえなかったり、減点されてしまいます。また作文系の問題についてもほとんどが誘導に従って文章を書いていくので、独自の視点というのはあまり求められていないように感じます。
それに対して、IB入試対策の方で私が演習として使った問題の傾向は、単純な問いから自分で論点を設定しなければならないものや、複数の資料を分析して自分でどの部分を中心に述べていくのかを考えなければなりません。
私がこれまでの授業の中で取り組んできた問題を見る限りでは、IBの入試問題の方は慣れるまでは大変ですが、正確に読むことだけに留まる傾向の問題を解くことよりも、大きな学びとしてのメリットがあるように感じました。
学習者へのフィードバックも異なる
正解の決まっている読解問題については、本人がどこまで理解できているのかを測れない時があります。
記号問題はたまたま正解しただけかもしれないし、抜き出し問題などについても合っているか間違っているかだけで点数をつけないといけません。
ある程度理解ができていたとしても、全く理解できなかった人と同じ扱いになってしまいます。
そして解説をする時には、「あなたは間違えてしまったから、内容を理解できていない」という減点法的な見方の雰囲気にどうしてもなってしまいます。
どれだけ気を配っても、こちらからは「そうじゃない、違う」のような言葉を使わないといけないところが心苦しいです。
一方でIBの入試対策に関しては、自分で設定した論点に対してその根拠やどういった論理の展開をしていくかによって点数を段階的につけることができます。つまり、生徒の理解力や論理の展開に対して加点法のイメージで採点することができるのです。
この減点法的な見方と、加点法的な見られ方は、それを積み重ねていくと生徒にとって大きく勉強への意識が変わってくるように思えます。
学びを「応用」できるかどうか
自分で論点を設定して文章を構成していく場合、過去に取り組んだテーマやこれまでに使ったデータなどを使うことができるので、学びを蓄積させることができます。
生徒がやがて社会に出る時、答えが決まっている問いに遭遇することはほとんどありません。そこで、自分で問題を見つけてどんな方法で取り組むのか、取り組んだ結果どのように次につなげるのかという学びを、高校入試の段階から取り入れることは非常に重要だと感じています。
先日IB入試(小論文)対策をしている生徒から、こんな嬉しい報告がありました。学校で理科のレポートを英語で作成する時に、これまでのどのように結論や考察についてまとめて良いかわからなかったのが、小論文で習った文の構成が役に立ったと教えてくれました。
つまり、異なる言語でも学んだことを他に活かす(転移)ことができたということです。
カミンズの「2言語共有説」を実感する
カミンズが提唱した「2つのそれぞれ異なる言語は、表面的には全く違う2つのことばに見えるが、その深層面では共有面がある」とする「2言語共有説」というものがあります。
2言語はそれぞれ異なるけれども、根本的なものは底でつながっているということが、今回の生徒からの報告で実感することができました。
そういった学習を通して、人間的に成長し社会で生きていく上で必要な力を、学校教育の中で養うことができれば、子どもたちの幸せそして社会全体の幸せにもつながっていくと信じています。
<参考文献>
中島和子『完全改訂版バイリンガル教育の方法-12歳までに親と教師ができること』(アルク選書、2016)