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『学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』第7章教室におけるシステム思考[291]


長期的なシステム研究

 私たちが所属する組織のシステムというのは、ある側面では分かっているかもしれませんが、システムそのものを完全に理解できていないということを共通認識としてもつことが必要です。また、システム全体が分かっているつもりになっている状態で決定を下したり、システム全体が理解できていないために短絡的な決定を下すことで、根本的な問題がより複雑化してしまいます。

 世界は複雑であるという前提に立ち、私たちが身近に体験してきた思い込みなどから脱却することが重要な一歩目になります。こうすれば解決するという短絡的な解決策を思いついたとしても、それがマイナスの結果をもたらすこともあります。
 そして、明瞭な表現をするための「書く能力」と「話す能力」を鍛えておく必要があります。こういった自分の考えをはっきりと表現する力をつけておくことで、他者の考えも受け入れることができ、建設的な対話ができるようになります。このプロセスの中で、最初に思いつく「直観的に明白な答え」よりも、「幅広く多様な代替案」が他にないかどうかを探ろうとすると述べられていました。

 また、私たちの前提となっている「政府の法や規則、企業方針、その他の社会システム」にまで疑いをもつ能力が必要だということも書かれています。

失敗から進歩が生まれる

 私たちは課題に直面した時、失敗したと感じる瞬間がたくさんあります。しかし、人類は失敗を教訓に変えて進歩し続けてきました。そのため、何かがうまくいかない段階で、それを失敗だと決めつけて誰かの責任にするのではなく、その理由を探求し改善するための行動が起こせることが必要なのです。
 つまり、失敗を恥ととらえるか前進する糧ととらえるかでは、その結果は大きく異なるということです。

教室でシステム思考を実践するために

 本書で一貫して重要性を指摘する「システム思考」とは、「複雑でダイナミックなシステムの中にある相互作用や関係を理解するための能力」とされています。

 そういった能力は「時系列変化パターングラフ、ストック・フロー図、ループ図、コンピュータ・モデル、シミュレーション、システム原型」といったアプローチによって身につけることができます。より具体的な例については、本書に分かりやすく書かれております。
 それらを小中高の発達段階に合わせて取り組むことができれば、子どもたちは社会に出る前に複雑な社会システムを冷静に分析する力を付けられると考えられます。

 小学校段階では、身近な事象やアクティビティの中でシステム思考法を身につけつつ、中学生以降では社会という大きなシステムに身につけた思考法を適用していきます。
 本書では、マンモスの増減、豆ゲーム、感染症拡大のシミュレーションなど、楽しみながらシステム思考を身につけるためのアクティビティが紹介されています。

<参考文献>
・ピーター・M・センゲ他著、リヒテルズ直子訳『学習する学校 子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』(英治出版、2014)

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