「遊び」の中に「学び」を作る【Aflevering.56】
「早く漢字の勉強始めたい!」という生徒たち
私の日本語教室に通う小学生の生徒たちは、「漢字」に興味がある子が多いです。
「漢字なんて難しそうだから嫌だー」と思っているのではないかという私の予想に反して、「早く漢字の勉強始めたい!」という生徒が多いことに驚きました。
そのため小学生クラスに加えて、生徒の要望に合わせて「プレクラス(小学生の学習に入る前のひらがな・カタカナの習得を目指すクラス)」の方でも一部遊びを中心とした漢字の学習をスタートさせています。
漢字学習を「嫌う」生徒も
私の日本語教室に通う前に、他のところで日本語学習をしていて、漢字テストのために無理矢理勉強させられてきた経験を持つ生徒は、全員ではありませんが漢字学習を嫌う傾向があります。
その理由は、本人が漢字学習自体をあまり好きでないからか、たくさん覚えるのが大変で嫌になってしまったのかははっきりとは分かりません。
この場合は、漢字学習に対する生徒の考えを聞き、本人がどのようにしたいかの意見を述べてもらいます。そして、本人が漢字学習への気持ちが前向きになるまではそこそこにして、気持ちが強くなってきたら学習内容も増やしていくことにしています。
漢字学習のスタート
海外で子どもが日本語を継承語として継続して学ぶことは、授業をする立場としてもとても厳しいものだと感じています。
しかし、子どもたちが「楽しい!好きだ!」と思える気持ちを大切にして、学び続けていく中で日本語のスキルを高めていくことが理想だと考えています。
そのため、漢字学習に対しても慎重に取り組みます。嫌いにはさせたくないけれど、しっかり読み書きの力も付けられるようサポートしたいのです。
初めは、いろんな人の名前を漢字で書いたり、身の回りのものを漢字で書いてみたりすると、生徒たちは大興奮です。
私が指示を出さなくても、少し難しい漢字でも一生懸命にノートに写し始めました。
その後は、漢字を定着させるためのゲームをします。
ある授業では、古代で使われていた元の意味に近い形と、現在使われている漢字を合わせながら漢字の意味や読み方を確認するゲームをしました。また、漢字が書かれたカードをいくつか渡して、生徒同士で遊び方を考えてもらい(下の写真)、クイズを出し合って遊んでもらいました。
テストで覚えさせるのではなく、生徒たちの興味・関心をなるべく学びに活かしたいと思っています。
「よく遊び、よく学べ」
脳科学的な見方から、この言葉の解釈として、遊ぶことによってストレスから気持ちが逸れて、リラックスした状態のところに学びが入ってくることで、学習とその時の気持ちが結びつく(漢字 = 面白い・わくわくする、など)と考えられています。なるべく遊びの要素を上手く活用して学習を深めていけるようにしたいです。
漢字学習に合わせて「語彙力」の強化を
学年が上がるにつれて、漢字の意味自体が難しくなってきます。
漢字自体を見たことがあるか、もしくはその読み方の意味のどちらかを知っているかどうかは、漢字学習へのモチベーションに大きく影響してきます。特に年齢が上がってくると、そのどちらかを知っているかどうかはかなり重要だと考えています。どちらも知らないと、自分には全く関係ないものと思ってしまい、あまり頭には入らないようです。
そのため低学年の生徒たちは、語彙数も授業の中で増やしておかなければなりません。
生徒の語彙に関しては、週に1度では限界があるので、家庭での会話、絵本の読み聞かせなどが重要になってきます。
私自身ももっと勉強して、継承語としての日本語を継続して学習できる環境を設定する力を高めていきたいと思います。
<参考文献>
青砥瑞人『BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは』(ディスカヴァー・トゥウェンティワン、2020)
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