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私が高校卒業後にイギリス学部留学してエジプト学の学位を取得してきた話 #5

エジプト学コースの1年目の前期は、記憶が確かなら、「エジプト考古学入門」「古代エジプト入門」「古代エジプトの物質文化」「中エジプト語入門」を受講していました。1年目の前期はエジプト考古学コースの学生と全く同じ授業を取っていたのは確かです。

前回の最後に出したエジプト語の授業が「中エジプト語入門」です。英語での授業名はIntroduction to Middle Egyptianで、中エジプト語(Middle Egyptian)というのは古代エジプト語の中でも文学的な黄金期に使われていた言語のことを指しています。

理想的には全ての時代の言語を習得すべきなんですが、中エジプト語で書かれた物語やヒエログリフの碑文が多いため、一般的にエジプト学者が最も接する可能性が高いんです。また、資料が多く教科書や文法書が豊富で学びやすく、前後の言語段階を比較するのに丁度よいという理由もあって、最初に学ぶのだと思います。

その他の授業についてですが、「エジプト考古学入門」「古代エジプトの物質文化」はあまり成績が良くありませんでした。この2つは考古学メインだと非常に大事な授業で、「考古学入門」(Introduction to Archaeology)では考古学の全般的な知識を学び、「古代エジプトの物質文化」(Ancient Egyptian Material Culture)では古代エジプトにフォーカスして土器や石器をはじめとする遺物から遺跡について学びました。面白さは伝わってくるものの、どうしても地学や化学の世界なので、なかなか取っ付きにくかったんです。

「古代エジプト入門」はまだ南北統一が成立する前の時代から、初期王朝時代、古王国時代、第一中間期、中王国時代、第二中間期、新王国時代、第三中間期、末期王朝時代、プトレマイオス朝時代と順番に進みながら、どのような変遷があったのかを学びました。歴史学をメインに、社会学や宗教学や美術がからんだ内容です。高校までの「歴史」のイメージからは良い意味でかけ離れていて、自ら学ぶ楽しさがありました。まぁ、これは古代エジプトの歴史だからというのが一番の理由だったかもしれません。

連載の#2(下記参照)で進学準備コースはテキストや指定された書籍やテキストは読み終わって把握していることを前提に授業が進んだと書きましたが、これは学部の授業でももちろん変わらず、むしろ量が3倍くらいに増えました。

テキストはコピーを配布されることも多かったんですが、書籍を購入するか図書館で借りないといけない場合も多かったです。配布されたのは必要最低限で、それ以上は推奨という感じです。予備知識は多いほうが理解も深まります。いま自宅の本棚を見渡したら、何冊か当時の指定図書や参考にした書籍が出てきました。関心ある方向けにAmazonへのリンクも貼っておきます。

この2冊は神殿などの遺跡や遺物について詳しく説明されています。学部1年目の時にBarry J. Kemp教授が講演でリヴァプール大学に来たので聴講したのを覚えています。Temples of Ancient Egyptは、実はエジプト旅行で本屋に寄った時に買ったものです。

あまり遺跡や遺物に関心が強くなかったので、思い入れはそれほどないのですが、海外の本らしい厚みのあるツルツルとした紙の本と、エジプトで印刷されたちょっと印刷の質が悪い本という意味では、当時を思い出す装置として手放すのが惜しいです。

The Complete Pyramidsは書名そのまま、様々なピラミッドの詳解です。ピラミッドというとギザの大ピラミッドというイメージかもしれませんが、実は色々な場所に建てられていて、初期の試みと思われるものには崩れてしまっているものや、途中から角度が変わっている「屈折ピラミッド」なんかもあります。それからピラミッドには神殿がセットになっていて、その間をつなぐ通路跡なども見つかっているのですが、この本ではそういった図面も基本2色刷りでカラー写真たくさん使って詳解しています。英語さえ読めれば読み物としても面白いです。

The Oxford History of Ancient Egyptの著者は当時リヴァプール大学の上級講師だったIan Shaw博士です。この本は小さめで軽いこともあって、常に持ち歩くくらい使い込んでました。古代エジプトの歴史をサッとおさらいするのに最適で、「あれ、第一中間期ってどんな特徴があったっけ」とか思った時にすぐ調べてました。小さな本なので詳しく知りたい場合は他の本が必要ですが、その手掛かりとなるので重宝しましたね。

Description de l'Egypteはナポレオンがエジプト遠征した際に描かせた図をまとめたものです。エジプト遠征後に失われてしまった遺跡などもあるそうで貴重な資料なのですが、私は絵を見ること自体が目的で買いました。授業での利用は、確か1回だけ宿題のエッセイで図を引用しました。日本語訳があったのでそちらもAmazonのリンク貼りました。

The Literature of Ancient Egyptはどちらかというと1年目の後期以降に活躍した本で、文学作品の簡単な紹介と英語訳がまとまったものです。中エジプト語の授業は翻訳することが目的ではないのですが、一般的な翻訳例として、自分の翻訳がどのくらい妥当か考える資料となりました。ただ、英語として自然な表現にしている(意訳している)場合もあったので、一筋縄ではいかなかったですね。

次回は、在学中に行ったエジプト旅行について書きたいと思います。


【告知】イギリス留学するまでに、それから留学中にも取り組んでいた、英語学習法を有料ノートで公開しています。一部は見れるようにしていますので是非ご覧ください。


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吉野宏志
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