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「また足が痛い」で終わらせない!思春期の貴重な時間を無駄にしないために
note記事5回目を執筆いたします。
横浜市神奈川区の整形外科【吉野整形外科】院長の吉野匠です。
私は整形外科医であり、特に「足の外科」を専門としています。
足の専門医は、全国でも約1,000人と言われており、とても特化した領域です。
今回は『思春期の貴重な時間を無駄にしないために』というテーマで執筆したいと思います。
「また足が痛い」と思ったことありませんか?
部活動やスポーツに一生懸命取り組む学生さんの中には、「また足が痛い」と何度も感じた経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
練習や試合の後に足の内側が痛み、湿布を貼ったり安静にしたりしても、運動を再開すると再び痛みがぶり返す――そんなことが繰り返されるのは本当に辛いものです。
特に、痛みを我慢してでも部活動を続けたいという思いがある一方で、その痛みの背後にある原因を知らないまま対処を続けると、青春の大切な時間を無駄にしてしまう可能性があります。
こうしたケースの中でよく見られる疾患が「有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)」です。
有痛性外脛骨とは?
有痛性外脛骨は、足の舟状骨(しゅうじょうこつ)という骨の内側にある外脛骨(がいけいこつ)という過剰骨が原因で発生する疾患です。
この外脛骨は、全人口の15~20%に存在すると言われていますが、必ずしも全ての人に痛みを引き起こすわけではありません。
外脛骨がある人の中には、捻挫や過剰な負荷がきっかけで外脛骨と舟状骨の間にある軟骨が損傷し、外脛骨が動くようになって炎症や痛みが発生する場合があります。
特に思春期の学生に多く見られるこの疾患は、スポーツをしている人にとって大きな障害となることがあります。
外脛骨がある人の多くは、足のアーチ構造が低い、いわゆる扁平足の傾向が見られます。アーチが低いと、本来なら舟状骨に付いている後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)が外脛骨を強く引っ張り、さらに痛みを悪化させることがあります。
このように、捻挫や扁平足などの影響が重なり、痛みが繰り返されることがあります。
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痛みを繰り返す原因
有痛性外脛骨の痛みが繰り返される主な原因は、「足のアーチ構造の問題」です。
足のアーチは、地面からの衝撃を吸収し、足全体にかかる負担を軽減する重要な役割を果たしています。しかし、扁平足のようにアーチが十分に形成されていない場合、衝撃によって後脛骨筋腱が外脛骨を強く引っ張ります。
その結果、舟状骨と外脛骨をつなぐ線維軟骨に亀裂が生じ、外脛骨が不安定に動くようになります。
そして、運動を再開するたびに外脛骨が後脛骨筋に引っ張られ、痛みが再発する悪循環に陥ってしまうのです。
患者さんの中には、「お医者さんに安静にするよう言われ、しばらく練習を休んでいるうちに痛みが治まったため、再び練習を始めたところ、すぐにもとの痛みに戻ってしまう」という悩みを抱える方が少なくありません。
安静にするだけでは「時間を浪費」する可能性も
痛みを訴えて医療機関を訪れた際、「しばらく安静にしてスポーツを控えてください」と指導されることがよくあります。
一時的に炎症が治まり、痛みが和らぐことは確かですが、安静にするだけでは根本的な原因を解決することはできません。運動を再開すれば、再び同じ部分に負担がかかり、結局痛みが再発してしまいます。
この繰り返しが続くことで、思春期の学生さんたちは大切な時間を失うリスクを抱えています。
例えば、チーム内でのレギュラー争いに出遅れたり、甲子園やインターハイといった人生で数回しかない大舞台への挑戦の機会を逃してしまうこともあります。
「痛みが引くのを待つだけ」の時間が積み重なることで、目標に向けた努力の成果を発揮できないまま、青春の大切な瞬間が過ぎていくのは、とてももったいないことです。
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手術という選択肢
有痛性外脛骨による痛みが保存療法(インソールや運動制限、湿布、消炎鎮痛剤の内服など)で改善しない場合、「手術」を選択することがあります。
手術の目的
有痛性外脛骨の手術では、痛みの原因となる外脛骨を除去するか、舟状骨との癒合を促進することで症状の改善を図ります。手術には主に以下の方法があります。
・骨接合術
外脛骨と舟状骨の間の不安定な接合部を固定する方法です。
線維軟骨部にドリルで傷をつけ骨癒合を促すドリリング法や、線維軟骨を完全に搔爬した後、外脛骨と舟状骨を特殊なネジで固定する方法がありますが、いずれも治療効果が不確実であることが多く、今日ではあまり行なわれていません。
・骨切除術
外脛骨を完全に取り除くとともに、特に舟状骨が大きく突出している場合には、舟状骨の一部も切除します。これにより、痛みを引き起こす要因を完全に除去できます。この方法が最も確実な方法といえます。
どちらの手術も、再発を防ぐことを目的としていますが、私は主に骨切除術を行なっており、これまで多くの患者さんにおいて100%の治療成績を収めています。
手術の適応となるケースは?
・アーチサポートなどによる保存療法を続けても症状が改善しない場合
・痛みが日常生活やスポーツに大きな支障をきたしている場合
・繰り返しの痛みにより、精神的な負担が大きくなっている場合
手術後のリハビリについて
手術後は約2週間ギプスシーネ固定を行い、2週目から足の内返し運動を開始します。
さらに4週目からは負荷を加えながらの内返し運動を開始します。
6週目から少しずつ荷重を開始し、8週目で全荷重とします。
9~10週でスポーツ復帰となります。
※個人差があります
痛みのない未来のために
手術は思い切った選択肢に感じられるかもしれませんが、思春期の大切な時間を取り戻し、快適な生活を送るためには有効な手段です。保存療法で効果が見られず、痛みが長引いている場合は、ぜひ「足の外科」に相談し、最適な治療法を検討してみてください。
多くの学生さんが「貴重な思春期の時間」を痛みで諦めることなく、思いきりスポーツや部活動に打ち込める未来を手に入れてほしいと願っています。
今回の記事は以上です。
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吉野整形外科
院長 吉野 匠
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