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【ライターの読書レビュー】意外と人生に本当の敵はいないのかもしれない

バ美肉(ばびにく)おじいちゃん。

そのタイトルの音に惹かれた。
全く意味はわかっていない。

バカ美味い(うまい)肉を食べるおじいちゃんだと思っていた。つまり、おじいちゃんのグルメマンガ。『孤高のグルメ』のおじいちゃん版。表紙のおじいちゃんが、一緒にいるきつね耳の生えた孫と一緒にとってもおいしいお肉を食べまくるほっこりグルメ漫画。
その予想がみごとに覆された。

本書は最愛の伴侶に先立たれ、こころにぽっかり穴が空いた70代のおじいちゃんがふとしたきっかけから、ユーチューバーになる「わちゃわちゃ系ハートフルコメディー」。

主人公の行動力がすごい。
ただひたすらに隠し続けていた悩みと苦しみがユーチューブで開放されると目を輝かせるや否や「ぐぅぐる」で方法を調べる。
新しいことにどんどんチャレンジしていく。すると当然、数多くの障壁にぶつかるが、持ち前のやる気と周囲のサポートで次々とクリアしていく。高齢者ならではのネタも全体の雰囲気を盛り上げる。全6巻。

テンポの良いまんがなので、物語は序盤から動き出す。

しかし、最も動き出すのは2巻の中盤。
いつも元気な主人公の友人が、ある日を境に車椅子生活に。老人ホームに入居予定だという。お互い近所に住み、毎日のように将棋を指し雑談していたが、もうその日常はかなわなくなった。

実はこの頃、主人公はユーチューバーになったのはよかったが、今後どうすべきか悩んでいた。

最初は勢いで準備を整え、順調に登録者数も増え、売れっ子になっていたが、最終目標を用意していなかった。
企業からさまざまなお誘いがきていたが、どれも積極的に受けようと思っていなかった。どうしたらいいか分からなかった。

主人公はユーチューブの自由な世界に憧れていただけだった。

そんな中、不自由の身になった友人がぽろりともらす。

「3Dライブが見たい」

主人公は、友人の願いをかなえるために「3Dライブ」やろうじゃないか。と決意する。
3Dライブまでの道のりはまだまだ険しく、山あり谷ありの状態が続くが、他の登場人物のサポートが秀逸。
行動する人に世界は優しい。

現実世界では、気丈に振る舞っているひとが多いが、みんなそれぞれに穴を抱えて生きている。
生きづらいな。と思っていても、そんな様子は見せない。数多のコンプレックスや問題を抱えていても、何でもないようによそおっている。
弱さを見せないかわりに胃に穴が空いたりするのだが。

このまんがは、先にこころが満たされた主人公が、他の人のぽっかり穴をうめていくものがたり。知らず知らずのうちに主人公のファンが増えていく様子に思わず顔がほころぶ。優しい世界観にほっこりしたきもちになりました。

<評者/よしの>

ここまで読んでくださったみなさんにお知らせ。

じつはこの「バ美肉おじいちゃんKindle版」が全巻無料!(2024年3月6日現在)
読みたいなと思われた方、ぜひこの機会をお見逃しなく。
書誌情報のリンクから1巻が読めます。

【書誌情報】

1巻:バ美肉おじいちゃんの誕生 Kindle版
魔木 (著) 形式: Kindle版
https://x.gd/BbccD

Amazon

【用語解説】

バ美肉(ばびにく)…バーチャル美少女受肉(美少女の肉体をもったバーチャルユーチューバー)

Vチューバー…バーチャルユーチューバー(動画に人間が登場するのではなく、2D・3Dのアバターが動画を進行する)


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