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流行したサービスを真似してはいけない理由

 新しいアイデアを考えるときに、流行り物をなんとなく取り入れようとしていることはないでしょうか?

 LINEが流行っているから利益モデルをフリーミアムにしようだったり、Spotifyが流行っているからサブスクリプションも採用しようだったり。

 ちなみに、以前の私はフリーミアムモデルを採用したら世界中に広まるのではないかと思ったり、サブスクリプションモデルだったら継続的に利益が得られるストックモデルだから会社が潰れにくいのではないかと流行りだした利益モデルを救世主かのように安易に崇拝していた気がします。

 今回は、新規事業開発に携わりサービスを開発している私が学んできたことで、過去の自分が勘違いをしていた「流行しているサービスを真似してはいけない理由」について紹介していきたいと思います。

※フリーミアムモデルとは
基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデル。

※サブスクリプションモデルとは
モノを買い取るのではなく、モノやサービスの“使用権”を一定期間借りる(契約する)というビジネスモデルで、最近では、“定額制サービス”を指すことが多い。

利益モデルを真似してはいけない理由

 流行り物の利益モデルをそのまま採用してはいけない理由はそれぞれのモデルのメリット・デメリットが自社商品にハマるかどうかがわからないということです。

 たとえば、フリーミアムモデルが良いとされる点は無料で基本的なサービスや製品を提供することで、顧客にサービスや製品のよさを気軽に体験してもらえる点にあります。これは、触れてみないと本当の価値がわからないサービスにとっては大きなメリットになります。

 データを自分のパソコンに保存せずクラウド上に保存することができるクラウドストレージサービスのdropboxは、メリットはあるものの出始めは魅力がイメージしづらいため、無料で基本的なサービスを受けて価値を感じてもらえるようにフリーミアムモデルを採用しています。LINEは、ユーザーが増えないとやりとりをする人がいなくて使用する価値が無いため、フリーミアムモデルにすることでユーザー数を増やし、価値を届けています。

 デメリットは、ユーザーが一定数集まらないと利益が得られないことや課金を前提として無料で受けられるサービスの制限をすると不満に繋がり、サービスが広がらないことや無料サービスで満足するユーザーばかりで課金をしてくれる人が出てこない可能性があるということです。
 一概にフリーミアムモデルと言っても、各サービスにてどこまでを無料にし、どこまでを有料にするかのバランスを調整しなければ成り立たないモデルなのではないでしょうか。

 フリーミアムモデルが採用されるようになったのは、顧客にサービスを届けるにあたって複製するコストを新たに必要としないネットサービスが中心になってきたからだと思います。物的な商品を届けるためには1個あたりに原価が発生しますし、サービス業も人的なコストが掛かるものが中心でした。しかし、価値を届ける商品そのものを複製するコストがかからなければ、無料で価値に触れてもらったほうが普及速度は早まるのではないでしょうか。

 フリーミアムモデルの影響で顧客は無料でサービスを受けられることが当たり前になってきているからフリーミアムモデルを採用すると安易に決めると、想像していてなかったデメリットがついてまわりますので、注意したいところです。

顧客との関係性を真似してはいけない理由

 顧客との関係性も安易に真似しては顧客にウザがられて二度と使用されることが無くなってしまうかもしれません。

 顧客に手書きの手紙を添えることは丁寧なサービスだなと思われて継続的に購買する意欲が増すと一般的に思われているように思います。実際、ケーキ屋のエミリーは誕生月のみに手紙を送るのではなく、定期的にお客さんへ手紙を送っています。ケーキを買ってほしいとせがむようなコミュニケーションではなく、顧客のことを気遣っているという意を込めて送っているのだと思います。このような試みにより、エミリーは予約待ちでいっぱいだそうです。

 ただ、これをそのまま自社サービスに反映してしまったら、顧客が離れてしまう恐れがあります。たとえば、母が購入している化粧品会社は商品を購入したときではないときも手書きのはがきが送ってくるそうなのですが、母は「最初は良かったけれど、ちょっとウザったく感じている」と話していました。

 同じようなことをしているのに一方は好感度が高くなり、一方はウザがられているのはなぜでしょうか。

 エミリーと化粧品会社の大きな違いは顔の見える関係性であるかどうかということです。エミリーはケーキを買ってもらう際にちょっとしたコミュニケーションをとって販売していますが、化粧品会社はネット通販であるため顔が見えない関係性です。また、エミリーは毎日ケーキなどをつくるワークショップを3時間しており、顧客との密なコミュニケーションをとった後に送っているという背景があります。

 顔の見える関係性になっているからこそ私のことを気遣ってくれているんだなだったり、あの人も元気にやっているんだなとお手紙のように受け取ることができ、化粧品会社と同じ手紙といえども「どうせ営業のためでしょ」と思われない仕組みが成り立っているのではないでしょうか。

 顧客との関係性は人と人とのコミュニケーションに近いと思います。相手がしつこいと思っているのにそれを想像できずに手紙を送り続けていたら、半ばストーカーかと思われかねないです。あくまでも自社の顧客が心地よいと思えるコミュニケーションスタイルをとれることが、顧客にとって継続的にお付き合いしたいサービスとなるポイントなのではないでしょうか。

 この機会に、あなたのサービスが顧客にとってどのコミュニケーションスタイルと思われているのかを考えてみるのも良いかもしれません。
 
<顧客とのコミュニケーションスタイルを4つに分類してみました>
①ストーカータイプ
あまりにも頻繁に連絡をしてくるため、ウザがられている。顧客からメルマガ配信停止をされている。

②おせっかいタイプ
億劫なときに連れ出してくれる。面倒だけどやってみたら楽しかった、行ってみたら凄く良かったを提供してくれる。
例:カーブス
通う前日にトレーナーが電話を掛けてくれる。仲が良いからこそできるし、行きたいけど面倒な自分もいるという方にピッタリ。

③親友タイプ
顧客が嬉しがるような適度なコミュニケーションを取ってくれる。顧客によっては②や④も③として感じてもらえる。

④猫タイプ
そっとしておいてくれる、または無関心なコミュニケーションスタイル。
例:エニタイムフィットネス
24時間365日年中無休なジム。入りたいときに入って、出たいときに出れるので、設備とセキュリティ重視でトレーナーなどとのコミュニケーションは少なめだと思われる。無関心が心地よいという顧客によっては③にも当てはまる。

 同じサービスでも顧客にとってどのタイプであるかは感じ方が違うかと思いますので、自社がお付き合いしていきたいコアターゲットに合わせたコミュニケーション頻度に調整していくのが良いのではないでしょうか。
(高単価サービスや地域サービスなどでは、顧客一人一人に合わせてコミュニケーションスタイルを変えたほうがよい場合もあると思いますが。)

まとめ

 安易に流行りのサービスの一部を自社に取り入れても返って顧客に利用してもらえなくなってしまうということをお話しました。

 先駆者はトライアンドエラーをしてビジネスモデル全体像のバランスを調整し、上手くいく方法を見つけられたのではないでしょうか。それを知らずに一部を真似してもバランスが取れていないので、上手くいかないのも無理はないかと思います。

 他社の強みを参考にして活かすときには、なぜそれが強みとして機能しているのかの背景を知らなければいけないということだと思います。そして、真似するなら自社の顧客に合う形にカスタマイズし、導入することがアイデアをアップデートするのに効くのではないでしょうか。

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