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ローマンカモミール


蛇は迷っていた
この果実を食べさせれば人間は知恵を手に入れる
それが自分に何をもたらすのかはわからなかった
けれども蛇は好奇心に抗う術を持っていなかった
それが良い判断なのか恐ろしいなにかを招くのか
それは人間達が手にした力をどのように使うのか
手にした力を何に使いどうコントロールするのか
そうした予測不可能な状況を招くことは明らかで
おそらく皆はその責任を自分に押し付けるだろう
蛇はそれでも人間に知恵をもたらしたかったのだ
果たして蛇は人間達に知恵をもたらすことにした
そしてそのとき人間達の感覚に保険をかけていた
人間が知恵を恐ろしいことに用いようとしたとき
人間がその知恵を制御できなくなってきたときに
大地のリンゴの甘い香りが警鐘を鳴らせるように
人間の繊細な嗅覚に魔法をかけておくことにした
しかしそれからの長い年月を経て魔法は変化した
大地のリンゴの甘い香りは人間に安らぎを与えて
心を穏やかにすることにより知恵の制御に導いた
だから今も人はその香りをかぐときに知恵を知る
本当の知恵は穏やかで安らぎに満ちたものである
それに気づくことで人間は知恵の主導権を持てる
蛇の目論見は成功したのだろうか

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